切り取られた青空

神山 備

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いと

彼流の祝福

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 翌日、香織は先に茨城の自宅へと帰った。私は仕事を終えた後、夜に出発して土曜日の朝、二人で彼女の実家に行くという段取りになっていた。

 昼休み……私は、俊樹と一緒に昼飯を摂った。
「亮平、お前昨日休んだ割には元気だな。それに妙に顔ゆるんでるぞ。何かいいことでもあったか」
確かに私の頭はその日仕事が終ってから後のことで一杯だったし、そのために顔も緩んでいたのかもしれない。
「まぁな。俊樹、実は俺、結婚することになったんだ。昨日はそのことでどうしても休まなきゃならなくてさ」
何かあるのだろうとは思ってはいたのだろうが、俊樹はいきなり私が結婚だなどと口走ったものだから、さすがに驚いて食堂の椅子から落ちそうになっていた。
「はぁ!? お前ちょっと前に振られたって落ち込んでたろ。もしかしてあれから上手く縒り戻せたのか」
それでもかりんのことで落ち込んでいたことを思い出してよりが戻ったのだと思い、いきなりにやつきながらそう聞いてきた。しかし、あの子とはまた別の子だと知れるとまた何を言われるかわかったもんじゃないと思った私は、
「ああ、おかげさまでな」
と、無難に相槌だけ打った。
「へぇ、そりゃめでたいな。で。相手は誰?」
俊樹は好奇心丸出しで身を乗り出して聞いてきた。
「ダイエットするんでブログ書いてるだろ。そこで知り合った。」
「ネット恋愛ねぇ。ホントにそんなんでまとまるってこともあるんだな。じゃぁさ、ますますお前痩せて良かったじゃん。それで?」
「それでって?」
私は俊樹が何を聞きたいのか分かってはいたが、わざとはぐらかした。
「相手がどこに住んでて、何歳でとかそういうことだよ」
やっぱりだ。でも、これを言うと絶対にこいつは……言いたくはないが仕方ないか。
「茨城に住んでる不動産会社に勤めてる娘だよ。歳は……28歳。それから、春には俺、父親にもなるから。その確認のために昨日休んだ」
「おま…亮平!?」
明らかに俊樹の瞳孔が開いた気がする。続いて彼の口から、私の予想した通りの答えが返ってきたのだった。
「お前! 一回りも離れた嫁って、それって犯罪じゃねぇか!!」
「別に犯罪じゃないよ。高校生とかじゃないし」
私はしれっと笑って答えた。
「当たり前だ、40男が高校生と結婚されてたまるか! くっそ~、うまくやりやがって。」
「俊樹、お前の方が20歳の嫁さんもらったんだろうが」
「あん時は俺も20歳だ!」
俊樹の奥さんは中学時代の同級生だと聞いている。
「長いこと良い思いしてんだからいいだろ。こっちは残り福って奴さ」
「良い思いってなぁ、こっちはそれなりに苦労してんだぞ。良くない! めでたいけど良くないぞ。めでたいけどな……」
俊樹はぷりぷりしながらそう言った。ま、これが俊樹流の祝福の仕方なのかなと私は思った。



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