20 / 65
切り取られた青空
反発
しおりを挟む
変わり映えのないいつもの日常。そこにさしてきた光に私はしがみつきたかったのかもしれない。
あれから1ヶ月が経とうとしていた。
-休日出勤したんで代休が取れた。月曜日の朝にそっちにいられる様にするから出てきて欲しい-
金曜の夜、そんなメールをもらって、私は浮き足立っていた。久しぶりに亮平に逢える! それだけでひとつひとつの事柄さえ、違って見えるような気がするほどに。
「ママ、最近お化粧してるね」
そんな土曜の朝、FCに送っていく車で、私は陸からそう言われた。修司同様そういうことには無頓着だと思っていたから、それにはかなり驚いた。
「痩せたらねいろんな服も着られるようになったし、おしゃれしたくなったのよ」
「でも……ママじゃないみたいだ」
当たり障りなくそう言った私に、陸はぼそっとそう返した。
「デブのままの方ママらしいって言うの?」
「別に……そうじゃないけど……」
いつもは陽気な陸の口はこの日重く、そしてちくちくと私の心に突き刺さった。
「明日、サッカーのお当番(FCのお茶当番が定期的に回ってくる)忘れないでよ!」
練習場の駐車場に車を止めるや否や、陸はそう言うと車を降りて駆け足でグラウンドに走っていった。
たぶん……陸は私の心の変化を理屈じゃなく感じ取っているのだろうと思った。表に出すまいとは思ってはいるけれど、きっとそれは何かの形でこどもたちには見えているのかもしれない。
怖かった。ものすごく恐怖感を感じているのに引き戻れない自分のことも怖かった。
亮平と再会する日の朝、私は苛立っていた。こどもたちの動きがいつもよりのろく感じた。特に瞳はいつも結んでやっているツインテールがきまらないと涙目で訴えてくる。
(この子もやっぱり何かを感じ取っているんだろうか)
こどもたちに後ろめたいという思いが苛立ちをさらに加速させたのかもしれない。私は瞳に向かって、つい大声で怒鳴ってしまった。
「いい加減にしなさい!そんなことばっか言ってると、ママどっかに行っちゃうからね!!」
「ヤダぁ~、ママどこにも行かないで~」
私の一言で瞳は火がついたように泣き出した。しまった! この子そういう事に敏感というか過剰反応しやすいんだったわ。赤ん坊の時には、冗談で『バイバイ』って手を振るだけで泣く子だった。
「ごめんごめん、行かないわよ…行かないし、もう一度結びなおすから、学校行ってらっしゃい」
「ホントに……?」
瞳は涙声で私に念押しした。
「当たり前じゃない。ママの家はここだよ」
それで、何とか機嫌を直して瞳は出かけたけれど、なんだか私の方が出鼻を挫かれたようで、疲れてしまった。やっぱり後ろめたい気持ちがつきまとう。
その一方で、何もかも忘れて亮平にのめり込んでしまいたいと思う部分もあって、私は自分の気持ちの裏腹に一番苛立っていたのかも知れない。
あれから1ヶ月が経とうとしていた。
-休日出勤したんで代休が取れた。月曜日の朝にそっちにいられる様にするから出てきて欲しい-
金曜の夜、そんなメールをもらって、私は浮き足立っていた。久しぶりに亮平に逢える! それだけでひとつひとつの事柄さえ、違って見えるような気がするほどに。
「ママ、最近お化粧してるね」
そんな土曜の朝、FCに送っていく車で、私は陸からそう言われた。修司同様そういうことには無頓着だと思っていたから、それにはかなり驚いた。
「痩せたらねいろんな服も着られるようになったし、おしゃれしたくなったのよ」
「でも……ママじゃないみたいだ」
当たり障りなくそう言った私に、陸はぼそっとそう返した。
「デブのままの方ママらしいって言うの?」
「別に……そうじゃないけど……」
いつもは陽気な陸の口はこの日重く、そしてちくちくと私の心に突き刺さった。
「明日、サッカーのお当番(FCのお茶当番が定期的に回ってくる)忘れないでよ!」
練習場の駐車場に車を止めるや否や、陸はそう言うと車を降りて駆け足でグラウンドに走っていった。
たぶん……陸は私の心の変化を理屈じゃなく感じ取っているのだろうと思った。表に出すまいとは思ってはいるけれど、きっとそれは何かの形でこどもたちには見えているのかもしれない。
怖かった。ものすごく恐怖感を感じているのに引き戻れない自分のことも怖かった。
亮平と再会する日の朝、私は苛立っていた。こどもたちの動きがいつもよりのろく感じた。特に瞳はいつも結んでやっているツインテールがきまらないと涙目で訴えてくる。
(この子もやっぱり何かを感じ取っているんだろうか)
こどもたちに後ろめたいという思いが苛立ちをさらに加速させたのかもしれない。私は瞳に向かって、つい大声で怒鳴ってしまった。
「いい加減にしなさい!そんなことばっか言ってると、ママどっかに行っちゃうからね!!」
「ヤダぁ~、ママどこにも行かないで~」
私の一言で瞳は火がついたように泣き出した。しまった! この子そういう事に敏感というか過剰反応しやすいんだったわ。赤ん坊の時には、冗談で『バイバイ』って手を振るだけで泣く子だった。
「ごめんごめん、行かないわよ…行かないし、もう一度結びなおすから、学校行ってらっしゃい」
「ホントに……?」
瞳は涙声で私に念押しした。
「当たり前じゃない。ママの家はここだよ」
それで、何とか機嫌を直して瞳は出かけたけれど、なんだか私の方が出鼻を挫かれたようで、疲れてしまった。やっぱり後ろめたい気持ちがつきまとう。
その一方で、何もかも忘れて亮平にのめり込んでしまいたいと思う部分もあって、私は自分の気持ちの裏腹に一番苛立っていたのかも知れない。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。
甘い束縛
はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。
※小説家なろうサイト様にも載せています。
ある夜の出来事
雪本 風香
恋愛
先輩と後輩の変わった性癖(旧タイトル『マッチングした人は会社の後輩?』)の後日談です。
前作をお読みになっていなくてもお楽しみいただけるようになっています。
サクッとお読みください。
ムーンライトノベルズ様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる