30 / 32
お土産
しおりを挟む
「うふふぅ~、みんなにお土産があるんだよね」
離宮の工房への引っ越しが完了した後、私はそう言って工房の壁を指さした。首を傾げている工房のメンバーを後目に、私の合図を聞いて、護衛騎士(速攻で王様につけられちゃったんだよね)のお兄さんたちがでっかい紙をそこに張り付けた。そこに書いてあるのは……
「何? コレ。数字がいっぱい……」
「今更、数字の勉強? 毎日算盤の勉強してるのに?」
私がどや顔で取り出したものに数字ばかり書かれているのを見て、みんなはさらに首を捻る。
「算盤のグレードアップのためにつくりましたぁ」
幽霊時代に算盤を提案したのは私なんだけど、私自身は算盤を小学校の算数の授業でしか習ったことがなかった。玉の動かし方は一応知っていたから足し算と引き算は教えられたけど、実はかけ算わり算の仕方は知らなかったんだよね。だから、弾く速度なんてユージーンはもちろん、工房メンバーのほとんどに勝てなかったと思う。教えた方が実は下手だったとか、ホントシャレにならないでしょ?。
だから、日本に戻ったとき、私は1から算盤を習ったんだよね。っていうか、今はインターネットの算盤教室もあって、体調がよほど悪くない限り練習できたので、工房とおんなじように、毎日15分はやるようにしていた。おかげで、こっちに来るちょっと前に3級取ってます(どや顔)
で、話を元に戻すと、壁に貼ったのは、九九の一覧表。でも、書いてあるのは1×1から12×12までなので、正確に言うと九九ではない?(じゃぁなんて言えばいいんだろ)
まぁね、たまたまングリーアスも10進法だったから別に9×9まででもまったく問題はないんだけど、日本で仕事してたとき、発注は結構グロス(12×12)で頼むことが多かったし。12っていろんな数で割れるから、結構使い勝手がいいというか。それに、私の記憶に間違いがなければ、フランスは12×12で習ってたはず。(ちなみにインドは19×19だったんじゃなかったかな)ま、こっちではだれも『そんなの九九じゃないじゃん』っていう人もいないので、12×12まで覚えてもらうことにしちゃった。
その横で私は文字の練習。実体はなかったけど、8年間暮らしてきて言葉はわかるけど、文字は書くことなんてなかったし……ってかその前にほこりも小麦粉もないきれいな工房じゃ書けないし、ミシンの時みたく、わざわざジル・サンダーに撒いてもらうのもなんだかでしょ。
ただ、ここの言葉は表音文字なので、文字数が28文字しかないのは救いだったりする。今から日本語ぐらいの文字数を覚え直すのは、正直ヤだもん。でも、表音文字とはいえ、聞こえたとおりの綴りじゃなかったりするのはあるあるなので、結局膨大な単語を覚えなきゃならないってことには変わらないんだけどね。
それでも、いままで模様にしか見えなかったングリーアスの文字が、ちゃんと言葉としてわかるのって宝探ししてるみたいですんごく楽しい。この間、マウリッツのお兄さんが(私を定期的に診察しに来るのだ)忘れていった医学書を読んでいたら、
『そんな小難しいものを読んでよく疲れないな』
とビーンにあきれられたけど。確かに専門用語が多くて?? ってなるところはいっぱいあるけど、周りの単語から推理して読むのって嫌いじゃないのよね。縦しんばそれが間違ってたとしても、私が治療する訳じゃないしね。
んで、その楽しさを他の子どもたちにも味わってほしいなと思った。ミラクロアの一般人の識字率はあまり高くない。ま、義務教育を9年も受けて識字率ほぼほぼ100%っていう日本の方が普通じゃないのかも知れないけど、文字が読めれば本でいろんなことを調べられるし、計算ができればお釣りの計算でだまされるなんてこともなくなるだろうし。
私は、工房の利益を使って、学校を建てることにした。学校といっても、教えるのは読み書き算盤ぐらいなので(歴史とか地理なんか私の方が知りたいぐらいだし)、寺子屋みたいなものなんだけど、識字率と計算力が上がれば、ミラクロアの人たちが新しい発想で何か生み出してくれるような気がするんだよね。
離宮の工房への引っ越しが完了した後、私はそう言って工房の壁を指さした。首を傾げている工房のメンバーを後目に、私の合図を聞いて、護衛騎士(速攻で王様につけられちゃったんだよね)のお兄さんたちがでっかい紙をそこに張り付けた。そこに書いてあるのは……
「何? コレ。数字がいっぱい……」
「今更、数字の勉強? 毎日算盤の勉強してるのに?」
私がどや顔で取り出したものに数字ばかり書かれているのを見て、みんなはさらに首を捻る。
「算盤のグレードアップのためにつくりましたぁ」
幽霊時代に算盤を提案したのは私なんだけど、私自身は算盤を小学校の算数の授業でしか習ったことがなかった。玉の動かし方は一応知っていたから足し算と引き算は教えられたけど、実はかけ算わり算の仕方は知らなかったんだよね。だから、弾く速度なんてユージーンはもちろん、工房メンバーのほとんどに勝てなかったと思う。教えた方が実は下手だったとか、ホントシャレにならないでしょ?。
だから、日本に戻ったとき、私は1から算盤を習ったんだよね。っていうか、今はインターネットの算盤教室もあって、体調がよほど悪くない限り練習できたので、工房とおんなじように、毎日15分はやるようにしていた。おかげで、こっちに来るちょっと前に3級取ってます(どや顔)
で、話を元に戻すと、壁に貼ったのは、九九の一覧表。でも、書いてあるのは1×1から12×12までなので、正確に言うと九九ではない?(じゃぁなんて言えばいいんだろ)
まぁね、たまたまングリーアスも10進法だったから別に9×9まででもまったく問題はないんだけど、日本で仕事してたとき、発注は結構グロス(12×12)で頼むことが多かったし。12っていろんな数で割れるから、結構使い勝手がいいというか。それに、私の記憶に間違いがなければ、フランスは12×12で習ってたはず。(ちなみにインドは19×19だったんじゃなかったかな)ま、こっちではだれも『そんなの九九じゃないじゃん』っていう人もいないので、12×12まで覚えてもらうことにしちゃった。
その横で私は文字の練習。実体はなかったけど、8年間暮らしてきて言葉はわかるけど、文字は書くことなんてなかったし……ってかその前にほこりも小麦粉もないきれいな工房じゃ書けないし、ミシンの時みたく、わざわざジル・サンダーに撒いてもらうのもなんだかでしょ。
ただ、ここの言葉は表音文字なので、文字数が28文字しかないのは救いだったりする。今から日本語ぐらいの文字数を覚え直すのは、正直ヤだもん。でも、表音文字とはいえ、聞こえたとおりの綴りじゃなかったりするのはあるあるなので、結局膨大な単語を覚えなきゃならないってことには変わらないんだけどね。
それでも、いままで模様にしか見えなかったングリーアスの文字が、ちゃんと言葉としてわかるのって宝探ししてるみたいですんごく楽しい。この間、マウリッツのお兄さんが(私を定期的に診察しに来るのだ)忘れていった医学書を読んでいたら、
『そんな小難しいものを読んでよく疲れないな』
とビーンにあきれられたけど。確かに専門用語が多くて?? ってなるところはいっぱいあるけど、周りの単語から推理して読むのって嫌いじゃないのよね。縦しんばそれが間違ってたとしても、私が治療する訳じゃないしね。
んで、その楽しさを他の子どもたちにも味わってほしいなと思った。ミラクロアの一般人の識字率はあまり高くない。ま、義務教育を9年も受けて識字率ほぼほぼ100%っていう日本の方が普通じゃないのかも知れないけど、文字が読めれば本でいろんなことを調べられるし、計算ができればお釣りの計算でだまされるなんてこともなくなるだろうし。
私は、工房の利益を使って、学校を建てることにした。学校といっても、教えるのは読み書き算盤ぐらいなので(歴史とか地理なんか私の方が知りたいぐらいだし)、寺子屋みたいなものなんだけど、識字率と計算力が上がれば、ミラクロアの人たちが新しい発想で何か生み出してくれるような気がするんだよね。
0
お気に入りに追加
65
あなたにおすすめの小説
公爵夫人アリアの華麗なるダブルワーク〜秘密の隠し部屋からお届けいたします〜
白猫
恋愛
主人公アリアとディカルト公爵家の当主であるルドルフは、政略結婚により結ばれた典型的な貴族の夫婦だった。 がしかし、5年ぶりに戦地から戻ったルドルフは敗戦国である隣国の平民イザベラを連れ帰る。城に戻ったルドルフからは目すら合わせてもらえないまま、本邸と別邸にわかれた別居生活が始まる。愛人なのかすら教えてもらえない女性の存在、そのイザベラから無駄に意識されるうちに、アリアは面倒臭さに頭を抱えるようになる。ある日、侍女から語られたイザベラに関する「推測」をきっかけに物語は大きく動き出す。 暗闇しかないトンネルのような現状から抜け出すには、ルドルフと離婚し公爵令嬢に戻るしかないと思っていたアリアだが、その「推測」にひと握りの可能性を見出したのだ。そして公爵邸にいながら自分を磨き、リスキリングに挑戦する。とにかく今あるものを使って、できるだけ抵抗しよう!そんなアリアを待っていたのは、思わぬ新しい人生と想像を上回る幸福であった。公爵夫人の反撃と挑戦の狼煙、いまここに高く打ち上げます!
➡️登場人物、国、背景など全て架空の100%フィクションです。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
異世界でも男装標準装備~性別迷子とか普通だけど~
結城 朱煉
ファンタジー
日常から男装している木原祐樹(25歳)は
気が付くと真っ白い空間にいた
自称神という男性によると
部下によるミスが原因だった
元の世界に戻れないので
異世界に行って生きる事を決めました!
異世界に行って、自由気ままに、生きていきます
~☆~☆~☆~☆~☆
誤字脱字など、気を付けていますが、ありましたら教えて頂けると助かります!
また、感想を頂けると大喜びします
気が向いたら書き込んでやって下さい
~☆~☆~☆~☆~☆
カクヨム・小説家になろうでも公開しています
もしもシリーズ作りました<異世界でも男装標準装備~もしもシリーズ~>
もし、よろしければ読んであげて下さい
異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです
ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。
転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。
前世の記憶を頼りに善悪等を判断。
貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。
2人の兄と、私と、弟と母。
母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。
ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。
前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる