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決意

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 だから、目が覚めたからといって、私はすぐに病院を退院させてもらえなかった。動かなくなった足をある程度手でカバーしないと、置かれたままなにもできなくなってしまうからだ。
 そんなに大柄でも太ってもいないつもりだけど、8ヶ月動かしていなかった腕に筋肉なんてついているわけもなく、がんばってリハビリして体力を付けて上半身なりとも持ち上げないと、ベッドから車いすに移動することもできない。 
 ただ、一人でそれをやろうとすると家族にものすごく叱られたりするのだけど。
 
 だいたい、いつ目覚めるか分からない状態が続いていた時点で私は仕事を失っていたし、仕事近くにあった一人暮らしのアパートはそのときに引き払われていた。仕事はデスクワークだったので、すぐに目覚めれば足が動かなくても戻れたかもしれないけど、いつ目が覚めるか解らない奴の椅子をいつまでも空にしておけないだろうし、これからは車いす必須なので、段差たっぷりのあのレトロな建物には暮らせない。それは解ってはいる。だから、退院後は私のためにバリアフリーにされた実家に戻ることに。

 そして、やっとのことで実家に戻った私がしたのは、図書館に通うことだった。
 とはいえ、傷んでしまった脊椎は私から体温管理の機能も取り上げていて、外気温がそのまま体温に反映されてしまうし、体調を崩してしまうので、毎日はとてもいけないんだけど……借りるだけ借りて読みまくる私に、家族は一様に渋い顔だけど、気にしない。

 とにかく私は今、電気の作り方を知りたいのだ。もちろん、それはその知識をングリーアスにもたらすため。
 メインは水力と風力、そして地熱発電だ。火力は石油の埋蔵量がどれくらいなのか解らないし、原子力は絶対に失敗できないから。将来の電力不足も考えて火力もおさえてはおくけどね。
 で、調べてみてびっくりしたのは電気を作る基礎はほとんど一人の発明なのだそうだ。そこに世界中の英知が集まって、あっという間に実用化されていったと。じゃぁ、私(ジル・サンダー)一人で開発しちゃってもいいんじゃないかと。
 ただ、知識といえどもオーパーツを持ち込むべきじゃないという意見はあるかもしれない。でも、ングリーアス(ミラクロア)でも研究はされていないわけじゃない。私はそれにきっかけを与えるだけだ、そう思っている。

 でも、私はこのことを家族の誰にも伝えてはいない。
 ングリーアスのことは話した。でも、家族にとっては夢物語でしかない。夢に戻りたいなんて心配されるだけだ。
私は夢だなんて、微塵も思ってないけどね。いつか絶対に行く。また幽霊ででもいい、絶対に。

 だから、私は毎日毎日電気や樹脂などの専門書を読み漁って過ごした。元々メカオタなので、そういう系の本を読んでいても怪しまれないのも手伝って、地元にないものは図書館のネットワークで取り寄せてもらってまで、電気づくりを勉強しまくった。
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