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二部 番外編:怖がりな蓑虫
怖がりな蓑虫 3
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「それでは周辺等を念のために見回って上がりますため、このままお部屋でお休みをされて下さい」
ギガイの戻りの連絡を受けたのだろう。3人が頭を下げて部屋から退出をしていった。
とたんに部屋の中に広がる静寂。そんな静けさは、いつもと同じはずなのに、今日はなんだか違っているようで、少しも落ち着けないままレフラはグルリと見回した。
変わらずに茂る植物と、青葉の匂いが満ちていた。大きな窓ガラスの外に広がる闇と違って、部屋の中はとても明るい。それなのに今日に限って、葉が重なりあう所に生まれた陰が、レフラは気になってしかたなかった。
(でも大丈夫…もうすぐでギガイ様が戻ってくるから)
そう思うのに、少しも気持ちは落ち着かないのだ。レフラは結局いつものソファーに腰掛けてはまた立ち上がって、何度も葉の陰の部分を確認してしまっていた。
そんな中で不意に聞こえた気がした物音に、レフラの心臓が跳ね上がる。
あの3人が帰ってしまった後なのだ。この宮にはレフラ以外に誰かがいるはずはない。それはいつも3人が上がる前に、しっかりと宮の中を全て確認しているのだから、間違いない。
だからこそ、レフラは聞こえた気がする音に、コクッと唾を飲み込んだ。
『警備隊の詰め所の1つなんですが、誰もいないはずのタイミングで子どもの笑い声が響くんです』
『それも聞いたヤツが1人とか2人ってレベルじゃなくて、でも慌てて確認すると誰も居ないんですよね。しかも深夜に子どもの声ってのも変ですしね』
『まぁ、不安になっていれば、関係ない音もそう聞いてしまうことはありますので、おそらくそういった類いのことだと思います。ただ、あまりに噂が上がるので、逆に不審な者の可能性も考慮して監視要員を配置しよう、って話が毎年上がるんです』
3人の話が思い出される。これもきっとリランが言っていた、怯えからくる聞き間違いだとは思っている。それでも湧き上がる不安感に、この痛いぐらいの静寂も、どこかから聞こえた気がする物音も、今はイヤで仕方がなかった。
レフラはチラッと隣の寝室に続く扉に目を向ける。あの先は今は明かりもなく真っ暗なままのはずだった。
少しだけ悩んだ後レフラは意を決して扉を開けて、寝台へタタッと走っていった。そのまま天蓋の内に入り込み、ますます真っ暗なその中で掛布を掴んで部屋へ戻る。
取ってきたばかりの掛布を頭からすっぽり被ってみれば、ギガイの香りが微かにするその布が、どこからか聞こえていたような音を防いでくれた。それなのに、目の前にある葉の陰に、何かが潜んでいる気がしてやっぱり怖いままだった。
チラチラとレフラは何度も扉の方を確認した。でも何かで固定でもされているのか、と疑いたくなるぐらい、扉も開く様子は全くない。
「そうだ!」
早く開いて欲しいのになかなか開かない扉を前に、泣きたくなっていたレフラだった。だけど次の瞬間、不意に湧き出たアイディアに思わず弾んだ声が零れ出る。
(もうすぐ帰っていらっしゃるんです。宮の扉の所で待っていれば、すぐに会えますよね)
そうすれば、宮の入口からこの部屋へ移動する間の時間さえ、待つ必要がなくなるのだ。思いついたその名案に、レフラは部屋を飛び出して、宮の入口まで駆けていった。
ギガイの戻りの連絡を受けたのだろう。3人が頭を下げて部屋から退出をしていった。
とたんに部屋の中に広がる静寂。そんな静けさは、いつもと同じはずなのに、今日はなんだか違っているようで、少しも落ち着けないままレフラはグルリと見回した。
変わらずに茂る植物と、青葉の匂いが満ちていた。大きな窓ガラスの外に広がる闇と違って、部屋の中はとても明るい。それなのに今日に限って、葉が重なりあう所に生まれた陰が、レフラは気になってしかたなかった。
(でも大丈夫…もうすぐでギガイ様が戻ってくるから)
そう思うのに、少しも気持ちは落ち着かないのだ。レフラは結局いつものソファーに腰掛けてはまた立ち上がって、何度も葉の陰の部分を確認してしまっていた。
そんな中で不意に聞こえた気がした物音に、レフラの心臓が跳ね上がる。
あの3人が帰ってしまった後なのだ。この宮にはレフラ以外に誰かがいるはずはない。それはいつも3人が上がる前に、しっかりと宮の中を全て確認しているのだから、間違いない。
だからこそ、レフラは聞こえた気がする音に、コクッと唾を飲み込んだ。
『警備隊の詰め所の1つなんですが、誰もいないはずのタイミングで子どもの笑い声が響くんです』
『それも聞いたヤツが1人とか2人ってレベルじゃなくて、でも慌てて確認すると誰も居ないんですよね。しかも深夜に子どもの声ってのも変ですしね』
『まぁ、不安になっていれば、関係ない音もそう聞いてしまうことはありますので、おそらくそういった類いのことだと思います。ただ、あまりに噂が上がるので、逆に不審な者の可能性も考慮して監視要員を配置しよう、って話が毎年上がるんです』
3人の話が思い出される。これもきっとリランが言っていた、怯えからくる聞き間違いだとは思っている。それでも湧き上がる不安感に、この痛いぐらいの静寂も、どこかから聞こえた気がする物音も、今はイヤで仕方がなかった。
レフラはチラッと隣の寝室に続く扉に目を向ける。あの先は今は明かりもなく真っ暗なままのはずだった。
少しだけ悩んだ後レフラは意を決して扉を開けて、寝台へタタッと走っていった。そのまま天蓋の内に入り込み、ますます真っ暗なその中で掛布を掴んで部屋へ戻る。
取ってきたばかりの掛布を頭からすっぽり被ってみれば、ギガイの香りが微かにするその布が、どこからか聞こえていたような音を防いでくれた。それなのに、目の前にある葉の陰に、何かが潜んでいる気がしてやっぱり怖いままだった。
チラチラとレフラは何度も扉の方を確認した。でも何かで固定でもされているのか、と疑いたくなるぐらい、扉も開く様子は全くない。
「そうだ!」
早く開いて欲しいのになかなか開かない扉を前に、泣きたくなっていたレフラだった。だけど次の瞬間、不意に湧き出たアイディアに思わず弾んだ声が零れ出る。
(もうすぐ帰っていらっしゃるんです。宮の扉の所で待っていれば、すぐに会えますよね)
そうすれば、宮の入口からこの部屋へ移動する間の時間さえ、待つ必要がなくなるのだ。思いついたその名案に、レフラは部屋を飛び出して、宮の入口まで駆けていった。
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