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幕間
直後の2人 2
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「無理はするな。あとこの宮の周りからも離れるな」
「わかっています」
トゲトゲしい声だった。
レフラにしてはめずらしいその態度に、3人はそっと視線を交わし合った。
さすがに昨日あんなことがあった後なのだから、多少のわだかまりがあるのかもしれない。そう思いながらもレフラにしてはひどくめずらしい態度なのだ。
ギガイにしてもそんなレフラの態度に何か思いあたることがあるのか、ただ苦笑を浮かべて見せただけだった。
緊張が否応がなしに3人の間で高まっていく。そんな3人の頭の中を、衝動的に逃げ出したレフラの姿がよぎっていた。
逃げ出してしまった数日後に、寝台のそばに招かれてレフラから謝罪を受けていた。いつもの柔らかな笑みがかき消え、向けられた眼からも光が消えて沈んでいた。自分の軽率な行動を心の底から悔いていることが伝わってくる姿に、見ている3人も辛かった。
レフラが同じような過ちを繰り返すとは思わない。それでも昨日の事態を見る限り、レフラの存在はそのまま黒族の存続から世界の在りようにまで影響するのだ。
そんなレフラへ万が一にでも何かが起きてしまったら…。
考えるだけでも怖い事態に、3人は互いに目線を合わして確認するように頷きあう。
「お前達も無理をしないようしっかり見ていろ」
3人へギガイがいつものように命じてくる。
今までさんざん馴染んできた冷たい声には、今しがたレフラへ話しかけていた時の名残はどこにも残っていなかった。
レフラへ仕えるようになってから、ギガイの寵愛を見てきた3人にとっては、それはもう驚くような事ではない。だが。
「今日は共に食事はムリだろう。先に休んでいろ」
改めてレフラへ声を掛けたギガイがレフラの髪へのみキスをして踵を返す姿には、思わず目を丸くした。
「…どうされたんですか?」
ギガイの姿が遠ざかり、見えなくなったことを確認してリランが恐る恐る質問する。
日頃からレフラの定位置はギガイの腕の中なのだ。近距離で視線を交わす2人の姿も、離れる瞬間に愛おしげにキスを落としていくギガイの姿も日常の光景そのものだった。
そんな2人に慣れた3人にとっては、いまのそっけない姿は異様に見えて仕方がない。
始めは言いにくそうにしていたレフラも誰かに吐き出したい気持ちはあったのか、躊躇いながらも口を開いていく。
「……ギガイ様は私が自分を傷付けるようなことをすればすごく怒るんです……」
どことなくむくれたような声だった。
だがその内容に3人はそれぞれ心の中で首を傾げた。
ギガイのレフラへの溺愛は相当なものなのだ。それは今に始まったことではなく、昨日の事を考えてもそれは何も不思議ではない状況だった。
今さらそれがどうしたのか。3人にとっては不満を訴えることに違和感があった。
「それなのに、ギガイ様自身はぜんぜん自分を大切にされないんです……」
だがその後に続いた言葉に、腑に落ちた3人が黙り込む。
強さの裏付けがあるせいだとは思いながらも、戦い方にも思い当たる節が多いのだ。そのうえ昨日の事を含めて考えれば、レフラへ何も言えなくなる。
「……なんで、まだおケガもぜんぜん癒えていらっしゃらないのに、無理をされようとするんですか…それがイヤなんです……!」
そのうえ話し始めたことで歯止めが緩んでいったのかもしれない。レフラの言葉が少しずつ苛立ったものに変わっていた。
「ですが、今は祭りも近く多忙な時期ではありますから、そのせいかと思われます」
どうにかなだめなければマズイ状況だった。恐る恐ると当たり障りのないフォローを今度はエルフィルが入れてみる。
「いえ、職務のことではありません! いつものように当たり前に抱き上げようとすることなどです!」
だけどそんなフォローをバッサリと切り捨てたレフラは、思い出してまた怒りがふつふつと湧いてきたのだろう。さっきよりも濃い怒りのオーラを纏い始めた姿に3人の表情が引き攣っていった。
「わかっています」
トゲトゲしい声だった。
レフラにしてはめずらしいその態度に、3人はそっと視線を交わし合った。
さすがに昨日あんなことがあった後なのだから、多少のわだかまりがあるのかもしれない。そう思いながらもレフラにしてはひどくめずらしい態度なのだ。
ギガイにしてもそんなレフラの態度に何か思いあたることがあるのか、ただ苦笑を浮かべて見せただけだった。
緊張が否応がなしに3人の間で高まっていく。そんな3人の頭の中を、衝動的に逃げ出したレフラの姿がよぎっていた。
逃げ出してしまった数日後に、寝台のそばに招かれてレフラから謝罪を受けていた。いつもの柔らかな笑みがかき消え、向けられた眼からも光が消えて沈んでいた。自分の軽率な行動を心の底から悔いていることが伝わってくる姿に、見ている3人も辛かった。
レフラが同じような過ちを繰り返すとは思わない。それでも昨日の事態を見る限り、レフラの存在はそのまま黒族の存続から世界の在りようにまで影響するのだ。
そんなレフラへ万が一にでも何かが起きてしまったら…。
考えるだけでも怖い事態に、3人は互いに目線を合わして確認するように頷きあう。
「お前達も無理をしないようしっかり見ていろ」
3人へギガイがいつものように命じてくる。
今までさんざん馴染んできた冷たい声には、今しがたレフラへ話しかけていた時の名残はどこにも残っていなかった。
レフラへ仕えるようになってから、ギガイの寵愛を見てきた3人にとっては、それはもう驚くような事ではない。だが。
「今日は共に食事はムリだろう。先に休んでいろ」
改めてレフラへ声を掛けたギガイがレフラの髪へのみキスをして踵を返す姿には、思わず目を丸くした。
「…どうされたんですか?」
ギガイの姿が遠ざかり、見えなくなったことを確認してリランが恐る恐る質問する。
日頃からレフラの定位置はギガイの腕の中なのだ。近距離で視線を交わす2人の姿も、離れる瞬間に愛おしげにキスを落としていくギガイの姿も日常の光景そのものだった。
そんな2人に慣れた3人にとっては、いまのそっけない姿は異様に見えて仕方がない。
始めは言いにくそうにしていたレフラも誰かに吐き出したい気持ちはあったのか、躊躇いながらも口を開いていく。
「……ギガイ様は私が自分を傷付けるようなことをすればすごく怒るんです……」
どことなくむくれたような声だった。
だがその内容に3人はそれぞれ心の中で首を傾げた。
ギガイのレフラへの溺愛は相当なものなのだ。それは今に始まったことではなく、昨日の事を考えてもそれは何も不思議ではない状況だった。
今さらそれがどうしたのか。3人にとっては不満を訴えることに違和感があった。
「それなのに、ギガイ様自身はぜんぜん自分を大切にされないんです……」
だがその後に続いた言葉に、腑に落ちた3人が黙り込む。
強さの裏付けがあるせいだとは思いながらも、戦い方にも思い当たる節が多いのだ。そのうえ昨日の事を含めて考えれば、レフラへ何も言えなくなる。
「……なんで、まだおケガもぜんぜん癒えていらっしゃらないのに、無理をされようとするんですか…それがイヤなんです……!」
そのうえ話し始めたことで歯止めが緩んでいったのかもしれない。レフラの言葉が少しずつ苛立ったものに変わっていた。
「ですが、今は祭りも近く多忙な時期ではありますから、そのせいかと思われます」
どうにかなだめなければマズイ状況だった。恐る恐ると当たり障りのないフォローを今度はエルフィルが入れてみる。
「いえ、職務のことではありません! いつものように当たり前に抱き上げようとすることなどです!」
だけどそんなフォローをバッサリと切り捨てたレフラは、思い出してまた怒りがふつふつと湧いてきたのだろう。さっきよりも濃い怒りのオーラを纏い始めた姿に3人の表情が引き攣っていった。
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