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第一部
誤りを正して 12 【第一部 完】
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目の当たりにしていた。その声も直接聞いていた。
だが実際にギガイを怒鳴りつけた瞬間をこの目で確認しながらも、リラン達の3人は信じられないと互いに目を合わした。
「…どうした?」
躊躇ったようなギガイの声が聞こえてくる。
「どうしたじゃないです!! 亡き後なんて言わないで下さい! こんなことになって私は怒ってるんですよ!!」
「いや、これは本気で言っているわけではなく……」
落ち着かせようとする言葉もすでにしどろもどろの状態だった。あの黒族長であるギガイがこんな風に勢いに押されることがあるなんて、と唖然とする。
「冗談でも言って良いことと悪いことがございます!!」
しかも涙を溜めた目で睨み付けてくるレフラ相手に絶句したギガイが、どうにかしろとリュクトワスへ視線を投げていた。
「ギガイ様が丸くなった……?」
本来なら不敬ものな態度である。
溺愛しているレフラをそんな態度で咎めることはなかったとしても、それに対して返されるギガイの反応には驚くしかない。
だがラクーシュのそんな小さな呟きに、リランとエルフィルが首を振った。
「まさか。先日の紫族の狼藉者たちを思い出してみろ」
リランが言うように、容赦ない冷酷さで「殺せ」と告げた姿は3人がよく知る黒族長のギガイの姿だった。
「まぁ、御饌様へ危害を加えて温情が与えられる訳がないからな…ということは、この状況も御饌様相手だからってことなんだろな……」
やっぱりそういうことか、とエルフィルの言葉に他の2人も納得する。その目の前でギガイに無茶ぶりをされたリュクトワスもまたしどろもどろの状態だった。
「あ、あのレフラ様…今のところは、ギガイ様もお亡くなりになる予定はない訳で……」
「あって良い訳がないでしょう! 絶対に殺してなんかやらないんですから! リュクトワス様もお話ししてないでさっさとギガイ様をどうにかして下さい!!」
涙をいっぱい溜めながらも「もう!!」と地面を蹴っている姿は全身で怒ってることを伝えてきていた。
「たしか兎って怒った時に、あぁやって怒ることあったよな……」
「あぁ、スタンピングだったと思う…」
「あれも種族の特性なのか?」
「どうだろうな、それは分からん」
現状に置いていかれている3人だった。だが付いていけないなりに冷静にこの状況を観察すれば。
自然と力関係が見えてくる。
「この黒族の中での最強って、どうみてもレフラ様ってことだよな」
「いや、黒族最強なら、世界の覇者だろ」
「そうか覇者か、すごいな……」
必死にレフラをなだめる2人の慌てふためく姿を見ながら、3人が平和をかみしめていた。
雨季が近付き水の匂いを含んだ風が、そんな6人の間を吹き抜けていった。
雨の時期がやってくる。
穏やかな陽光はしばらく潜まり、柔らかな雨が降り注ぐ。
清らかな水は、この地を洗い。
恵み、癒しの雨を得た、地の中に息衝く全てのモノは、ようやく外へと芽生えていく。
そんな雨期の訪れは、2人を癒していくだろう。
再び穏やかな陽が差す時。
この地に新たな躍動が溢れ出す。
ここから新しい2人の毎日が、ようやく始まろうとしていた。
〔第一部 完〕
※※※※※※※※※※※※
あとがきをちょこっと。
いつもお読み頂きありがとうございます!
ようやくすれ違い編が終わりました(長かった💦)
2月にスタートして6月の今日まで1日も欠かさず更新できたのは、日々読んで頂けている方々あってのものでした!
特に折れそうになるタイミングで頂けていたコメントには、何度も気力を回復させてもらいました!
本当にありがとうございました!
二部は2人の日常も描きたいと思っているので、ストーリー進行はゆっくりなると思いますが中だるみしないよう頑張ります。
二部がスタートしましたら、またよろしくお願いします!
だが実際にギガイを怒鳴りつけた瞬間をこの目で確認しながらも、リラン達の3人は信じられないと互いに目を合わした。
「…どうした?」
躊躇ったようなギガイの声が聞こえてくる。
「どうしたじゃないです!! 亡き後なんて言わないで下さい! こんなことになって私は怒ってるんですよ!!」
「いや、これは本気で言っているわけではなく……」
落ち着かせようとする言葉もすでにしどろもどろの状態だった。あの黒族長であるギガイがこんな風に勢いに押されることがあるなんて、と唖然とする。
「冗談でも言って良いことと悪いことがございます!!」
しかも涙を溜めた目で睨み付けてくるレフラ相手に絶句したギガイが、どうにかしろとリュクトワスへ視線を投げていた。
「ギガイ様が丸くなった……?」
本来なら不敬ものな態度である。
溺愛しているレフラをそんな態度で咎めることはなかったとしても、それに対して返されるギガイの反応には驚くしかない。
だがラクーシュのそんな小さな呟きに、リランとエルフィルが首を振った。
「まさか。先日の紫族の狼藉者たちを思い出してみろ」
リランが言うように、容赦ない冷酷さで「殺せ」と告げた姿は3人がよく知る黒族長のギガイの姿だった。
「まぁ、御饌様へ危害を加えて温情が与えられる訳がないからな…ということは、この状況も御饌様相手だからってことなんだろな……」
やっぱりそういうことか、とエルフィルの言葉に他の2人も納得する。その目の前でギガイに無茶ぶりをされたリュクトワスもまたしどろもどろの状態だった。
「あ、あのレフラ様…今のところは、ギガイ様もお亡くなりになる予定はない訳で……」
「あって良い訳がないでしょう! 絶対に殺してなんかやらないんですから! リュクトワス様もお話ししてないでさっさとギガイ様をどうにかして下さい!!」
涙をいっぱい溜めながらも「もう!!」と地面を蹴っている姿は全身で怒ってることを伝えてきていた。
「たしか兎って怒った時に、あぁやって怒ることあったよな……」
「あぁ、スタンピングだったと思う…」
「あれも種族の特性なのか?」
「どうだろうな、それは分からん」
現状に置いていかれている3人だった。だが付いていけないなりに冷静にこの状況を観察すれば。
自然と力関係が見えてくる。
「この黒族の中での最強って、どうみてもレフラ様ってことだよな」
「いや、黒族最強なら、世界の覇者だろ」
「そうか覇者か、すごいな……」
必死にレフラをなだめる2人の慌てふためく姿を見ながら、3人が平和をかみしめていた。
雨季が近付き水の匂いを含んだ風が、そんな6人の間を吹き抜けていった。
雨の時期がやってくる。
穏やかな陽光はしばらく潜まり、柔らかな雨が降り注ぐ。
清らかな水は、この地を洗い。
恵み、癒しの雨を得た、地の中に息衝く全てのモノは、ようやく外へと芽生えていく。
そんな雨期の訪れは、2人を癒していくだろう。
再び穏やかな陽が差す時。
この地に新たな躍動が溢れ出す。
ここから新しい2人の毎日が、ようやく始まろうとしていた。
〔第一部 完〕
※※※※※※※※※※※※
あとがきをちょこっと。
いつもお読み頂きありがとうございます!
ようやくすれ違い編が終わりました(長かった💦)
2月にスタートして6月の今日まで1日も欠かさず更新できたのは、日々読んで頂けている方々あってのものでした!
特に折れそうになるタイミングで頂けていたコメントには、何度も気力を回復させてもらいました!
本当にありがとうございました!
二部は2人の日常も描きたいと思っているので、ストーリー進行はゆっくりなると思いますが中だるみしないよう頑張ります。
二部がスタートしましたら、またよろしくお願いします!
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