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第一部
静寂の宮 6
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「お前が願った事なんだな?」
「はい。こんな事に成るとは思わず、ワガママを言って申し訳ございませんでした……」
確認するギガイへレフラがハッキリと頷いて見せた。それを見て、リュクトワスを締め上げていたギガイの掌が離れていく。
「ゴホッゴホッ」
「申し訳ございません。私のワガママのせいで!!」
喉をさすりながら何度か咳き込むリュクトワスへ手を伸ばそうとしたレフラの身体をギガイの腕が妨げる。腰に回された腕でスッと掬い上げられて、いつものようにギガイに抱え込まれてしまえば、もうレフラにはどうしようもなかった。
「ギガイ様、降ろして頂けませんか……?」
自分のワガママで誰かを辛い目に合わせた上に、側に寄って謝る事も出来ないのはレフラにとっては辛かった。だが離して欲しいと情けない表情で願うレフラに反して、ギガイは嫌そうにわずかに眉根を寄せて見せた。
「大丈夫でございます。御饌様のワガママのせいではございません」
喉に手をあててレフラへ笑いかけるリュクトワスをギガイが不快そうに一瞥する。だが咎める様子がないためか、リュクトワスもまた黙る気が無いようだった。
「ただ御饌様が侮られたのではないか、と心配されただけだと思いますよ」
そう言って笑うリュクトワスに、レフラがえっ?とギガイの方へ顔を向ける。
「まぁ、そう言う事だ。お前の振る舞いが咎められる事だった訳ではない」
「でも、始めは皆様頭を下げていたのを私が上げて頂くようお願いしたせいで、こんな事になってしまった事は事実でございます」
その言葉にギガイが複雑な表情をする。
「やはりワガママを言うべきではありませんでした。申し訳ございまーー」
リュクトワスを含めた4人に詫びようとしていたレフラの口をギガイの掌が塞き止める。日頃のギガイらしくない振る舞いに、レフラはビックリして目を大きく見開いた。
それは他の者達も同じだったのだろう。誰も言葉を発しない部屋の中におかしな空気だけが流れていく。チラッとリュクトワスへ目を向けたギガイがチッと舌打ちをする。
「ギガイ様……」
主の機嫌が良いとは言えない空気に不安がかき立てられ、レフラが小さな声でどうしたのかとギガイの名を呼んだ。
「不安だったのだろう?ワガママではない、堪えるな。押し殺して独りで耐えられるよりはまだマシだ……そうだな…私も次は先にお前の言葉を確認しよう」
ギガイがはぁ、と溜息を吐いて柔らかな声と共にレフラの頭をクシャリと撫でた。リュクトワスが言っていたように、自分に対するギガイとエルフィル達黒族の民が日頃目にするギガイではやはりだいぶ違っているのだろう。最後辺りはもうエルフィル達はアングリと開いた口が塞がらない様子だった。
「だがお前はこうなる事を分かっていて、あえて甘んじていたように見えたが、どういうつもりだ?何を考えている?」
相変わらずレフラ以外に話しかける瞬間にはガラリと変わる声音に、レフラは目を白黒させた。
「前も申しました通り、私が思うのはギガイ様の末永い心の安寧でございます」
「なるほどな。だがお前がそれ程、死に急ぐタイプだったとはな。どうやら私は勘違いをしていたようだ」
ふん、と鼻で笑いながらそう言い放つギガイに対して。
「とんでもございません。私は細く長く生き長らえて、ギガイ様にお仕えするつもりでございます」
そう言って笑ったリュクトワスにレフラはクスクスと笑い出した。
「はい。こんな事に成るとは思わず、ワガママを言って申し訳ございませんでした……」
確認するギガイへレフラがハッキリと頷いて見せた。それを見て、リュクトワスを締め上げていたギガイの掌が離れていく。
「ゴホッゴホッ」
「申し訳ございません。私のワガママのせいで!!」
喉をさすりながら何度か咳き込むリュクトワスへ手を伸ばそうとしたレフラの身体をギガイの腕が妨げる。腰に回された腕でスッと掬い上げられて、いつものようにギガイに抱え込まれてしまえば、もうレフラにはどうしようもなかった。
「ギガイ様、降ろして頂けませんか……?」
自分のワガママで誰かを辛い目に合わせた上に、側に寄って謝る事も出来ないのはレフラにとっては辛かった。だが離して欲しいと情けない表情で願うレフラに反して、ギガイは嫌そうにわずかに眉根を寄せて見せた。
「大丈夫でございます。御饌様のワガママのせいではございません」
喉に手をあててレフラへ笑いかけるリュクトワスをギガイが不快そうに一瞥する。だが咎める様子がないためか、リュクトワスもまた黙る気が無いようだった。
「ただ御饌様が侮られたのではないか、と心配されただけだと思いますよ」
そう言って笑うリュクトワスに、レフラがえっ?とギガイの方へ顔を向ける。
「まぁ、そう言う事だ。お前の振る舞いが咎められる事だった訳ではない」
「でも、始めは皆様頭を下げていたのを私が上げて頂くようお願いしたせいで、こんな事になってしまった事は事実でございます」
その言葉にギガイが複雑な表情をする。
「やはりワガママを言うべきではありませんでした。申し訳ございまーー」
リュクトワスを含めた4人に詫びようとしていたレフラの口をギガイの掌が塞き止める。日頃のギガイらしくない振る舞いに、レフラはビックリして目を大きく見開いた。
それは他の者達も同じだったのだろう。誰も言葉を発しない部屋の中におかしな空気だけが流れていく。チラッとリュクトワスへ目を向けたギガイがチッと舌打ちをする。
「ギガイ様……」
主の機嫌が良いとは言えない空気に不安がかき立てられ、レフラが小さな声でどうしたのかとギガイの名を呼んだ。
「不安だったのだろう?ワガママではない、堪えるな。押し殺して独りで耐えられるよりはまだマシだ……そうだな…私も次は先にお前の言葉を確認しよう」
ギガイがはぁ、と溜息を吐いて柔らかな声と共にレフラの頭をクシャリと撫でた。リュクトワスが言っていたように、自分に対するギガイとエルフィル達黒族の民が日頃目にするギガイではやはりだいぶ違っているのだろう。最後辺りはもうエルフィル達はアングリと開いた口が塞がらない様子だった。
「だがお前はこうなる事を分かっていて、あえて甘んじていたように見えたが、どういうつもりだ?何を考えている?」
相変わらずレフラ以外に話しかける瞬間にはガラリと変わる声音に、レフラは目を白黒させた。
「前も申しました通り、私が思うのはギガイ様の末永い心の安寧でございます」
「なるほどな。だがお前がそれ程、死に急ぐタイプだったとはな。どうやら私は勘違いをしていたようだ」
ふん、と鼻で笑いながらそう言い放つギガイに対して。
「とんでもございません。私は細く長く生き長らえて、ギガイ様にお仕えするつもりでございます」
そう言って笑ったリュクトワスにレフラはクスクスと笑い出した。
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