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第一部

籠の中の鳥 9 ※

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紐を解いた長ズボンブレーが膝に布溜まりを作っていた。寝台とは別な場所で、下半身だけを晒すのは心理的な抵抗が大きいのか、レフラのうなじが赤くなる。息を詰めるように伏せられた顔は、まったく表情は見えなかった。

「この状態では塗りにくいな。広げてやるから自分で塗るか」

だが、ただでさえ羞恥を耐えていたレフラには信じられない言葉だったのか、ガバッと向けられた表情は、途端に泣き出しそうに歪んでいった。

(順調にいっているという事か)

立て直す時間もない程に、淫虐に責められ続けた心はだいぶ疲弊しているのだろう。初めに向けられた睨むような眼差しは、すっかり成りを潜めている。そんなレフラの見せる脆さに、ギガイは口角をわずかに上げた。

「お前が広げるなら、私が塗っても良いが。どちらにするか、お前が選ぶと良い」

「……ギガイ様が塗ってください…」

「それならしっかりと広げていろ」

自分で触れる恥ずかしさよりはマシだと思ったのだろう。レフラが恐る恐ると尻臀を左右に開いていった。

「じゃあ、このまま動かすな」

固めの軟膏を瓶から掬ったギガイがクルクルと後孔の縁へと塗り込んでいく。はじめは固形を塗り込むようだった刺激が、軟膏が人肌でゆっくり溶けた事で変わったのか。痛みを堪えるようなレフラの口から、別な何かを堪えるような声へと変わっていった。

「も、もう十分です!」

ついに耐えきれなくなったのか、レフラが制止を求めて声をあげる。その言葉にギガイが指を離して。

「それでは、今度は奥を塗るからもう少ししっかり開いてろ」

二回目の軟膏を掬いながら、軟膏で滑りがよい窄みに指先をツプッと差し込んだ。

「やぁ!いや、入れないで下さい!だって、薬を塗るだけだって!!」

「あぁ、薬を塗っているだけだ」

ギガイは嘘は言っていない。ただ塗って欲しいと言われた時から、分かっていない事には気がついていた。それをあえて教えなかっただけだった。

「だからこうやって、私の指で奥の粘膜まで塗り広げるんだ」

口腔内に含ませた時でさえ、甚振られた行為を思い出して震えていたのだ。薬の為とはいえ、ギガイの指を再び奥まで受け入れるのは怖いのだと分かっている。それでも。

「お前が選んだ事だ」

繰り返されたその言葉は絶対の効果を持っていた。その瞬間、イヤがるような動きが止んで、レフラの瞳が抗いたい感情を押し殺すように揺れていた。

躾の効果を確認しながら、仕上げるように追い込んでいく。身体を絡め取っていくならば、これは大切な始まりなのだ。心の髄まで刷り込めるように、多く強烈な方が良いだろう。

「大人しくしてろ。素直であれば薬を塗るだけだ」

そうすれば酷い事からは逃れきれるのだと、また一つ教え込んでいく。

「大人しくしてます、だから、薬だけにしてください……」

縋るようなその声に、薬とは反対の手で背中を何度も撫でてやれば、レフラはギガイに擦り寄ってくる。この数日の動きからギガイが想像した通り、温もりには存外に弱いようだ。

素直さへの褒美として、ギガイは薬を塗り込む間中その身体を優しく宥めていく。躾には飴と鞭が有効だった。

それに元より大切な御饌だ。辛い思いだけさせたりはしない。この躾が終わればしっかりと、愛しんで癒しもしよう。

順調にギガイの籠に囲われていくレフラに、満足そうにキスをした。
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