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「明日、婚約破棄するから」
突然、目の前でお茶を飲みながらなんて事ない様にマリス王子様は私に告げた。
「それは……」
言葉に詰まる私を、チラリと見ると彼は静かにカップをソーサーに戻す。
「わかりました、いままで……ありがとうございました」
そう言うと、席を立ち彼にお辞儀をした。
今までの八年もの思い出が、一気に私の中を駆け巡り、寒気にもにた感覚が襲ってくる
まだだ……
まだ、泣いてはいけない……
ぐっと奥歯を噛み締めて泣きそうになるのを堪える
「明日だ、今じゃない」
何故か焦る様にマリス王子様が私に言った。
明日だろうと同じことだ。
婚約破棄は成されるのだろう……。
私は彼の顔を見ることなく、その場を後にした。
◇◇◇
マリス王子様はこの国の第二王子、彼が十歳になる祝いの席で私達は出会った。
たくさんの令息、令嬢が集まる中、人見知りの性格だった私は会場の隅に両親と立っていた。
マリス王子様は王妃様と共に一人一人に挨拶をされる。
ちょうど私の所に来られた時だ、王子様方の背後から何やら様子のおかしな男が手に黒い塊を持って近づいてくるのが見えた。
王妃様と両親は話しをしていて気付いていない、マリス王子様は私の方を向いていた。
その男が黒い塊をマリス王子様へと投げつけようとするのを見た私は、咄嗟に彼を庇ってそれを受けた。
「きゃあっ!」
ドンッと左肩にいままで知らなかった痛みが走る。
「あーあ、ひとつしか無かったのに…それは呪いだ」
黒い塊を投げた男が言ったその言葉に、周りはざわめき立った。
私が知るのはそこまでだ。
痛みに気を失った私の目が覚めたのは次の日だった。
「大丈夫かい?……リゾレット……痛みはないかい?」
お父様が痛々しい顔をして私の右手を握る。
その横でお母様が顔を覆って泣いていた。
私はどうかしたのかな?
あれれ? 左肩がすごく熱い。
ズキン、ズキンとそこに心臓があるみたい。
「痛いよ、肩が痛いの、お父様」
お父様は私の手を強く握り目を伏せた。
「リゾレット……お前は呪われてしまった……けれど立派だったよ。マリス王子様を守ったのだから」
ああ……そうだった……
よかった、マリス王子様は無事だったんだ……
そう思うと痛みを忘れて自然と笑みがこぼれた。
「どうして笑えるんだ……君は……女の子なのにっ」
そこには私を見ながら涙をこぼす、マリス王子が立っていた。
「責任を取らせて欲しい」
その言葉をもって、マリス王子様と私、リゾレット・ダラス伯爵令嬢との婚約となった。
マリス様は毎日見舞いに来てくれた。
肩の痛みは一週間ほど続いた。痛みが無くなるとそこの皮膚は黒く変色してしまった。
私は肌の色が白い方で余計に呪いのシミが目立ってしまっていた。私と両親は、この体では王子には相応しくない、やはり婚約は無かったことにしましょう、とマリス様に伝えたが彼は首を縦には振らなかった。
「僕はリゾレットを好きになってしまったんだ、それに呪いは必ず解くから信じて待っていて」
マリス様は私に優しい笑顔を見せた。
突然、目の前でお茶を飲みながらなんて事ない様にマリス王子様は私に告げた。
「それは……」
言葉に詰まる私を、チラリと見ると彼は静かにカップをソーサーに戻す。
「わかりました、いままで……ありがとうございました」
そう言うと、席を立ち彼にお辞儀をした。
今までの八年もの思い出が、一気に私の中を駆け巡り、寒気にもにた感覚が襲ってくる
まだだ……
まだ、泣いてはいけない……
ぐっと奥歯を噛み締めて泣きそうになるのを堪える
「明日だ、今じゃない」
何故か焦る様にマリス王子様が私に言った。
明日だろうと同じことだ。
婚約破棄は成されるのだろう……。
私は彼の顔を見ることなく、その場を後にした。
◇◇◇
マリス王子様はこの国の第二王子、彼が十歳になる祝いの席で私達は出会った。
たくさんの令息、令嬢が集まる中、人見知りの性格だった私は会場の隅に両親と立っていた。
マリス王子様は王妃様と共に一人一人に挨拶をされる。
ちょうど私の所に来られた時だ、王子様方の背後から何やら様子のおかしな男が手に黒い塊を持って近づいてくるのが見えた。
王妃様と両親は話しをしていて気付いていない、マリス王子様は私の方を向いていた。
その男が黒い塊をマリス王子様へと投げつけようとするのを見た私は、咄嗟に彼を庇ってそれを受けた。
「きゃあっ!」
ドンッと左肩にいままで知らなかった痛みが走る。
「あーあ、ひとつしか無かったのに…それは呪いだ」
黒い塊を投げた男が言ったその言葉に、周りはざわめき立った。
私が知るのはそこまでだ。
痛みに気を失った私の目が覚めたのは次の日だった。
「大丈夫かい?……リゾレット……痛みはないかい?」
お父様が痛々しい顔をして私の右手を握る。
その横でお母様が顔を覆って泣いていた。
私はどうかしたのかな?
あれれ? 左肩がすごく熱い。
ズキン、ズキンとそこに心臓があるみたい。
「痛いよ、肩が痛いの、お父様」
お父様は私の手を強く握り目を伏せた。
「リゾレット……お前は呪われてしまった……けれど立派だったよ。マリス王子様を守ったのだから」
ああ……そうだった……
よかった、マリス王子様は無事だったんだ……
そう思うと痛みを忘れて自然と笑みがこぼれた。
「どうして笑えるんだ……君は……女の子なのにっ」
そこには私を見ながら涙をこぼす、マリス王子が立っていた。
「責任を取らせて欲しい」
その言葉をもって、マリス王子様と私、リゾレット・ダラス伯爵令嬢との婚約となった。
マリス様は毎日見舞いに来てくれた。
肩の痛みは一週間ほど続いた。痛みが無くなるとそこの皮膚は黒く変色してしまった。
私は肌の色が白い方で余計に呪いのシミが目立ってしまっていた。私と両親は、この体では王子には相応しくない、やはり婚約は無かったことにしましょう、とマリス様に伝えたが彼は首を縦には振らなかった。
「僕はリゾレットを好きになってしまったんだ、それに呪いは必ず解くから信じて待っていて」
マリス様は私に優しい笑顔を見せた。
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