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31 国境で
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馬車は、泊まった宿に置いて行く事になった。
リフテス王国へは、持ち込めるものが限られているのだ。手に持てるだけの荷物と、移動の為に馬をもう一頭手に入れた私達は、すぐに国境門へと向かった。
国境門を通らず、あのカダル山賊へ向かった少女のように、リフテス王国へ入るだけなら出来なくはないが、それでは城へ行くことが出来ない。
メリーナは城の地下牢にいる事が分かっている。
少女の家族も同じ場所にいる可能性が高い、そうルシファ様は言われた。
それに、国境から城までは最短でも三日。幾つかの町を通らねばならない。
泊まる場所も必要で、移動には、お金も要る。
換金の為にも国境門を通る必要があった。
◇
国境門には、マフガルド王国側とリフテス王国側の二ヶ所に出入国管理人がいる。
マフガルド側の管理人に、シリル様とルシファ様が何かを渡すと、通行証が手渡され、すぐに通された。
「問題はここからだ」
ルシファ様が緊張した面持ちで言う。
「大丈夫だ、変化は完璧なんだから」とシリル様が話し、メイナード様は「あんまり気合い入れてるとバレるよ」と笑って、ルシファ様の肩を軽く叩いた。
今度は、馬を引いてリフテス王国側の管理人の下へ向かう。
管理人の太った中年男性が、私達を頭の天辺から爪先まで、食い入る様に見る。
「獣耳無し、尻尾無し、角、羽……爪も、はい問題ありません。証明書の記載も、リフテス人と書いてありますね。マフガルドに行った理由は馬の仕入れ……なるほど」
「馬と羊は許可されていましたよね?」
ルシファ様が管理人に尋ねる。
「はい、家畜としての馬、羊は許可されています。牛と豚は来月から持ち込む事が可能になります。ただ、食べ物は一切持ち込む事は出来ません。植物や種などは、今後もダメです。覚えておいてください」
「はい、もちろん分かっています」
ルシファ様はニッコリと笑って管理人に返事をした。
次に管理人は馬を見る。
茶色い大きなシリル様の愛馬ルル、同じく大きな黒馬は、ルシファ様の愛馬ビル。そして先ほど手に入れた白馬。
「この馬はマフガルド産だね、三頭か。大きくて立派だねえ。許可証明も確認……はい、その先で体の汚れを落としたら、連れて行ってもいいですよ」
管理人は証明書に何か書き入れると、ポンとハンコを押しルシファ様に手渡した。
「その先であなた方も靴裏を洗って下さい。その後、隣の部屋で次の検査を受けてください」
どうやら、リフテス王国からマフガルド王国への入国は簡単らしいが、逆はかなりしっかりした検査をするみたい。
指示された隣の部屋には、冷たい感じのする女性の管理人が待っていた。
「はい、みなさん特に外見に異常は見受けられません。病気など体に異変はありませんか?」
「はい」
管理人の言葉にシリル様が返事をすると、管理人の女性は嬉しそうに笑みを返した。
部屋に入った私達に、最初は冷たい視線を向けて来た管理人の女性だったが、シリル様を見た途端に態度を変えた。どうやら彼女の好みだったみたい。
男性達を見て、笑みを浮かべ頷いていた管理人は、次にラビー姉様と私をジロリと見た。
どうしてか、とにかく何か言いたそうにしている。
「それでは…………そこのお嬢さん」
「はいっ」
「前髪、もう少し切った方がよろしいですよ」
「はい……」
瞳の色が分かりにくい様に、前髪を長くして目を隠していた私に、管理人の女性は冷たい口調で言う。
私の瞳は、リフテス王族特有の色らしく、知っている者が見れば王女だと分かってしまう。
だから髪で隠す様にしていたけれど、それだけではなく、管理人の女性の態度はシリル様達男性に向け話す時とは明らかに違う。
ラビー姉様にも何か言おうとしていたが、何もなかったらしく睨む様な視線を送っただけで、書類に判を押した。
「それにしても、みなさん美男ばかりですね。マフガルドへ行っていた理由は……まぁ、あなた達商人なの? いつ此処を通られました? 私が休んでいた時かしら……これだけの方達なら覚えているはずなのに……」
うっとりとした顔をして詰め寄る管理人に、シリル様は少し後退りした。
獣耳と尻尾が無い彼等は、リフテス人にも好ましい容姿をしているようだ。
……あの獣耳も、モフモフの尻尾も素敵なのに。
リフテス王国へは、持ち込めるものが限られているのだ。手に持てるだけの荷物と、移動の為に馬をもう一頭手に入れた私達は、すぐに国境門へと向かった。
国境門を通らず、あのカダル山賊へ向かった少女のように、リフテス王国へ入るだけなら出来なくはないが、それでは城へ行くことが出来ない。
メリーナは城の地下牢にいる事が分かっている。
少女の家族も同じ場所にいる可能性が高い、そうルシファ様は言われた。
それに、国境から城までは最短でも三日。幾つかの町を通らねばならない。
泊まる場所も必要で、移動には、お金も要る。
換金の為にも国境門を通る必要があった。
◇
国境門には、マフガルド王国側とリフテス王国側の二ヶ所に出入国管理人がいる。
マフガルド側の管理人に、シリル様とルシファ様が何かを渡すと、通行証が手渡され、すぐに通された。
「問題はここからだ」
ルシファ様が緊張した面持ちで言う。
「大丈夫だ、変化は完璧なんだから」とシリル様が話し、メイナード様は「あんまり気合い入れてるとバレるよ」と笑って、ルシファ様の肩を軽く叩いた。
今度は、馬を引いてリフテス王国側の管理人の下へ向かう。
管理人の太った中年男性が、私達を頭の天辺から爪先まで、食い入る様に見る。
「獣耳無し、尻尾無し、角、羽……爪も、はい問題ありません。証明書の記載も、リフテス人と書いてありますね。マフガルドに行った理由は馬の仕入れ……なるほど」
「馬と羊は許可されていましたよね?」
ルシファ様が管理人に尋ねる。
「はい、家畜としての馬、羊は許可されています。牛と豚は来月から持ち込む事が可能になります。ただ、食べ物は一切持ち込む事は出来ません。植物や種などは、今後もダメです。覚えておいてください」
「はい、もちろん分かっています」
ルシファ様はニッコリと笑って管理人に返事をした。
次に管理人は馬を見る。
茶色い大きなシリル様の愛馬ルル、同じく大きな黒馬は、ルシファ様の愛馬ビル。そして先ほど手に入れた白馬。
「この馬はマフガルド産だね、三頭か。大きくて立派だねえ。許可証明も確認……はい、その先で体の汚れを落としたら、連れて行ってもいいですよ」
管理人は証明書に何か書き入れると、ポンとハンコを押しルシファ様に手渡した。
「その先であなた方も靴裏を洗って下さい。その後、隣の部屋で次の検査を受けてください」
どうやら、リフテス王国からマフガルド王国への入国は簡単らしいが、逆はかなりしっかりした検査をするみたい。
指示された隣の部屋には、冷たい感じのする女性の管理人が待っていた。
「はい、みなさん特に外見に異常は見受けられません。病気など体に異変はありませんか?」
「はい」
管理人の言葉にシリル様が返事をすると、管理人の女性は嬉しそうに笑みを返した。
部屋に入った私達に、最初は冷たい視線を向けて来た管理人の女性だったが、シリル様を見た途端に態度を変えた。どうやら彼女の好みだったみたい。
男性達を見て、笑みを浮かべ頷いていた管理人は、次にラビー姉様と私をジロリと見た。
どうしてか、とにかく何か言いたそうにしている。
「それでは…………そこのお嬢さん」
「はいっ」
「前髪、もう少し切った方がよろしいですよ」
「はい……」
瞳の色が分かりにくい様に、前髪を長くして目を隠していた私に、管理人の女性は冷たい口調で言う。
私の瞳は、リフテス王族特有の色らしく、知っている者が見れば王女だと分かってしまう。
だから髪で隠す様にしていたけれど、それだけではなく、管理人の女性の態度はシリル様達男性に向け話す時とは明らかに違う。
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うっとりとした顔をして詰め寄る管理人に、シリル様は少し後退りした。
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……あの獣耳も、モフモフの尻尾も素敵なのに。
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