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番外編
② いつのまに……
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「あ、えっと……」
レイナルド邸、オスカーの部屋の隣にある浴室で、ティナは固まっていた。
「オスカー様……」
「なに? どうしたの?」
金色に輝く瞳のオスカーがティナを甘く見つめる。
その目で見つめられると何も考えられなくなる……ティナはグッと拳を握った。
横にある大きな浴槽には乳白色のお湯が張ってあり、赤い薔薇の花びらが浮かべてあった。
……いつのまに……
二人でここにいるという事は、今から一緒に入浴する、という事なんだろう。
……えっ? それって普通なの?
ティナは十八歳、残念ながら今まで恋人と呼べる人はいた事がない。
ーーが、いろいろと話を聞く事はあった。
だから思う。
出会ってすぐにお風呂って入りますか⁈
いや、それ以上の事をすることも分かってるけど……
……心の準備が……
ーーーーーー*
代々町中で花屋を営んできたマリベル家は、国境沿いに花畑を持っている。そこでは祖父母と歳の離れた姉が住み、花の栽培を行なっていた。両親とまだ幼いティナ、一つ歳下の弟は町中の花店で暮らしていたが、ティナも12歳の頃に弟と共に祖父母の家へ移り住んだ。
姉の結婚を機に、花の栽培は祖父母と姉夫婦に任せて、弟とまた町中の花店へ戻ってくる事になった。
それはつい先日ことだったのだ。
まさか、戻って来てすぐにプロポーズされる様な事になるとは……
それも……初恋の人に……
未だに信じられない。
目の前で自分を甘く見つめる彼は、あのオスカー・レイナルド。
誰もが憧れる、竜獣人の麗しい騎士様。
*
私が初めてオスカーを見たのはまだ五歳の頃、彼らが『氷祭り』に来た時だ。
あの夜、私は町中にある花店の二階の小さなベランダから通りを歩く人を見ていた。
両親は祭りで小さなブーケを作り売っている。祭りの間は、まだ小さい私達は邪魔にならないように、二階にいた。
しばらくすると、町中が騒然となった。
王国最強騎士のヴィクトール・レイナルド公爵が、家族で来ていると皆が話している。
まるでパレードのように動く人集りの中に、取り分け輝く銀色の髪の少年がいた。
歳は少し上ぐらいだろうか?
ニコニコと笑い、握手をしたり人々と話しをしながら、楽しそうに歩いている。
私にはその少年だけがキラキラと輝いて見えた。
( カッコいい……まるで王子様みたい……)
「あの人はオスカー様よ」
夢中で少年を見ている私に、祭りの為町に来ていた姉が教えてくれた。
「オスカー様……」
ジッと見ていると、不意にオスカー様がこちらに顔を向けた。
彼が見たのは、ほんの一瞬。
ドクンッ
目が合った瞬間、私は隠れてしまった。
「ティナ、顔真っ赤よ⁈ 」
姉が微笑みながら私に言った。
オスカー様の真っ青な瞳を見た瞬間、胸が熱くなった。
ドキドキする、もう一度見たい……けど恥ずかしい。
でも……もう一度だけ、彼を見たい……
そう思い、そっと通りに目を向けたが、すでに人集りは過ぎ去った後だった。
「ティナったら、オスカー様に一目惚れしたのね……でも難しいわ。あの人は公爵なのよ、その上竜獣人なの。平民の私達はめったに見ることすら出来無いと思うわ」
姉さんが頭を撫でながらそう教えてくれた。
「ひとめぼれ?」
「そうよ、恋に落ちちゃったのよ。仕方ないわよね、カッコいいもの。歳が下じゃなかったら私も恋していたと思うわ」
そうか……この胸がドキドキするのは恋なんだ……
けれど一度、一瞬見ただけの彼の事など、すぐに忘れるだろうと思っていた。
なのに……一年が過ぎ、二年が経っても、私はあの青い目を忘れる事が出来ない。
何故かいつまでも鮮明に覚えている。
オスカー様の真っ青な瞳。
雲一つなく晴れた空を見上げる度に、彼を思い出し胸がキュンとした。
そのあとオスカー様をこの目で見ることが出来たのは、私が十一歳の頃。
公爵閣下と馬に乗り、どこかへ向かう姿を、遠目から人混みに紛れて見た。
もちろん、彼が気づく事はない。
その後、私と弟は祖父母と姉のいる国境沿いの家へと移り住んだ。人手が足りなかった事もあるが、魔獣の出る町より安全だったからだ。
町には結界が張ってあり、騎士達が見回りをしていたが、それでも年に数回魔獣が入り込む。それを騎士達が討伐する姿を見る事があった。遠目から見る魔獣の気持ち悪さに、私と弟は怖くて震えていた。
国境沿いの、花畑のある祖父母の家では、不思議な事に一度も魔獣は見た事も出た事もなかった。
ある時、魔獣術師のおじさんが花畑を訪ねて来た。どうしてこの場所に魔獣が出ないのか、どうやら花に理由があるようだから調べさせて欲しいというと、しばらく滞在した。そして、ここに魔獣が現れない理由は栽培している花の根に、魔獣が嫌う物があるからだと教えてくれた。
私が14歳の頃「竜獣人のオスカー・レイナルドは騎士になったぞ」と、花を調べた後も、よく尋ねて来る様になっていた魔獣術師のおじさんが教えてくれた。
「女の子は皆アイツが好きだからな。弟の方も人気があってよ、アイツも来年から騎士になる事に決まってるんだ。レイナルド公爵令息の事はティナちゃんも知ってるだろう? 有名だからなぁ、竜獣人ってヤツはいろいろとすげえし、強いんだぞ」と言ってガハハと笑っていた。
騎士になったんだ……騎士姿のオスカー様はどんなに素敵だろう……
見てみたい……そう思っていたけれど、一度もそれは叶わなかった。
それから数年後、オスカー様はエリーゼ王女様の婚約者となられるとの噂を聞いた。
エリーゼ王女様は大変美しい方。
公爵令息のオスカー様とはお似合いだ。
お二人が並んだ姿はさぞかし絵になるだろう……
その頃、花店の手伝いに戻って来ないか、と両親に言われていたが、私はもう少しここに居たいと断った。
町中にある花店にいけば、彼を見る機会も多くなるだろう
……けれど、私は彼が王女様といる姿を見たくなかった。
想像するだけでもこんなに胸が苦しいのに……
花畑で、腕いっぱいの花を摘みながら、空を見上げた。
陽の光がさす青い空は、彼の目の色をしている。
真っ青なその色に……ズキリと胸が痛くなった。
どうしてだろう、いつまで経っても忘れられない。
たった五歳の少女の初恋。
叶う事はないとわかっているのに、
たった二度見かけただけの人なのに……
どうしてこんなに心が囚われているのだろう……
*
この町に戻ってからは、花屋の手伝いをしていた。
「レイナルド公爵家の結婚式で使うブーケを頼まれたのよ!」
お母さんが嬉しそうに話してくれた。
「オスカー様……結婚するの?」
帰ったばかりで、彼の事をまだよく知らなかった私はそう尋ねた。婚約されると聞いてはいたけど……
「違うわよ、エスター様の方。オスカー様はまだお相手もいらっしゃらないみたいよ」
……えっ?
「エリーゼ王女様は婚約者ではなかったの?」
「違うわよ、王女様の片想いだったみたいね」
あの王女様が、片想い?
「明日、レイナルド邸へウエディングドレスを見せてもらいにいくのよ、楽しみだわ!」
楽しそうに話をしていたお母さんだったが、その日の早朝『どうしても行けなくなったから代わりに行って来て』と、頼まれた。
レイナルド公爵邸、オスカー様がいる訳ではない。
会うのはエスター様とそのお相手のシャーロット様。
そう思っていても、どこかで会えるかもしれないと期待していた。
馬車に乗り向かった公爵邸は、とても大きなお城の様な建物だった。
大きな玄関の扉に横にあるベルを鳴らすが、誰も出てこない。
……ベルは何故か音がしない。
声を掛けてみるが、誰も出てこない。
どうしよう、開いているのかな?
そっと扉に手をかけると何故か勝手に開いた。
まるで、入って下さいと言われているかのようだ。
思わず一歩足を踏み入れる。
「わあ……」
初めて見た、邸の中に庭がある。
庭の位置する天井はガラス張りになっていて、陽の光が降り注いでいた。
庭には……たくさんの花が咲いていて、そこに置いてあるベンチに人がいた。
この人は……?
銀色の髪、キレイな顔立ち。長いまつ毛が伏せられている。
おそるおそる声をかけた。
オスカー様かエスター様かよく分からない。
だから『レイナルドさん?』と尋ねた。
高鳴る鼓動を抑えるように胸に手を当て、一つ深呼吸をする。
私は仕事で来ているのだから、ちゃんとしなければ。
もう一度声をかけ、目を開けたその人はオスカー様だった。
あの時と同じ、真っ青な目で見つめられおもわず頬が熱くなる。
挨拶を交わし握手をした途端に、今度は体が熱くなった。
鼓動が高まり、彼しか見えなくなる。
……どうしよう、やっぱり好きだ。
そう思いながら彼を見つめると、オスカー様も私を見つめていた。
彼の瞳が青から金色に変わり始める。
「俺の……瞳の色……変わった?」
「はい……キレイな金色に」
そう言うと彼は甘く微笑んだ。
ゆっくりと顔が近くなり……
そこにレイナルド公爵夫妻が来られた。
ーーーーーー*
『花』だと教えられ、公爵家の豪華な馬車の中でプロポーズされた。
私の両親に挨拶をしてくれ、結婚の了承を得て……今ここにいる。
出会いからここまで、約三時間。
プロポーズもしてもらったし、結婚も決まっているけど、
手を握って、抱きしめられて……
『花』しか愛さないという竜獣人の、彼の蕩けるような金色の目は私を愛おしく見つめてる
会いたくて仕方がなかったと、君が欲しい、そう甘く告げられた。
私だって、オスカー様の事は好き。
まだ言葉に出来ていないけど…………好き。
でも…………
レイナルド邸、オスカーの部屋の隣にある浴室で、ティナは固まっていた。
「オスカー様……」
「なに? どうしたの?」
金色に輝く瞳のオスカーがティナを甘く見つめる。
その目で見つめられると何も考えられなくなる……ティナはグッと拳を握った。
横にある大きな浴槽には乳白色のお湯が張ってあり、赤い薔薇の花びらが浮かべてあった。
……いつのまに……
二人でここにいるという事は、今から一緒に入浴する、という事なんだろう。
……えっ? それって普通なの?
ティナは十八歳、残念ながら今まで恋人と呼べる人はいた事がない。
ーーが、いろいろと話を聞く事はあった。
だから思う。
出会ってすぐにお風呂って入りますか⁈
いや、それ以上の事をすることも分かってるけど……
……心の準備が……
ーーーーーー*
代々町中で花屋を営んできたマリベル家は、国境沿いに花畑を持っている。そこでは祖父母と歳の離れた姉が住み、花の栽培を行なっていた。両親とまだ幼いティナ、一つ歳下の弟は町中の花店で暮らしていたが、ティナも12歳の頃に弟と共に祖父母の家へ移り住んだ。
姉の結婚を機に、花の栽培は祖父母と姉夫婦に任せて、弟とまた町中の花店へ戻ってくる事になった。
それはつい先日ことだったのだ。
まさか、戻って来てすぐにプロポーズされる様な事になるとは……
それも……初恋の人に……
未だに信じられない。
目の前で自分を甘く見つめる彼は、あのオスカー・レイナルド。
誰もが憧れる、竜獣人の麗しい騎士様。
*
私が初めてオスカーを見たのはまだ五歳の頃、彼らが『氷祭り』に来た時だ。
あの夜、私は町中にある花店の二階の小さなベランダから通りを歩く人を見ていた。
両親は祭りで小さなブーケを作り売っている。祭りの間は、まだ小さい私達は邪魔にならないように、二階にいた。
しばらくすると、町中が騒然となった。
王国最強騎士のヴィクトール・レイナルド公爵が、家族で来ていると皆が話している。
まるでパレードのように動く人集りの中に、取り分け輝く銀色の髪の少年がいた。
歳は少し上ぐらいだろうか?
ニコニコと笑い、握手をしたり人々と話しをしながら、楽しそうに歩いている。
私にはその少年だけがキラキラと輝いて見えた。
( カッコいい……まるで王子様みたい……)
「あの人はオスカー様よ」
夢中で少年を見ている私に、祭りの為町に来ていた姉が教えてくれた。
「オスカー様……」
ジッと見ていると、不意にオスカー様がこちらに顔を向けた。
彼が見たのは、ほんの一瞬。
ドクンッ
目が合った瞬間、私は隠れてしまった。
「ティナ、顔真っ赤よ⁈ 」
姉が微笑みながら私に言った。
オスカー様の真っ青な瞳を見た瞬間、胸が熱くなった。
ドキドキする、もう一度見たい……けど恥ずかしい。
でも……もう一度だけ、彼を見たい……
そう思い、そっと通りに目を向けたが、すでに人集りは過ぎ去った後だった。
「ティナったら、オスカー様に一目惚れしたのね……でも難しいわ。あの人は公爵なのよ、その上竜獣人なの。平民の私達はめったに見ることすら出来無いと思うわ」
姉さんが頭を撫でながらそう教えてくれた。
「ひとめぼれ?」
「そうよ、恋に落ちちゃったのよ。仕方ないわよね、カッコいいもの。歳が下じゃなかったら私も恋していたと思うわ」
そうか……この胸がドキドキするのは恋なんだ……
けれど一度、一瞬見ただけの彼の事など、すぐに忘れるだろうと思っていた。
なのに……一年が過ぎ、二年が経っても、私はあの青い目を忘れる事が出来ない。
何故かいつまでも鮮明に覚えている。
オスカー様の真っ青な瞳。
雲一つなく晴れた空を見上げる度に、彼を思い出し胸がキュンとした。
そのあとオスカー様をこの目で見ることが出来たのは、私が十一歳の頃。
公爵閣下と馬に乗り、どこかへ向かう姿を、遠目から人混みに紛れて見た。
もちろん、彼が気づく事はない。
その後、私と弟は祖父母と姉のいる国境沿いの家へと移り住んだ。人手が足りなかった事もあるが、魔獣の出る町より安全だったからだ。
町には結界が張ってあり、騎士達が見回りをしていたが、それでも年に数回魔獣が入り込む。それを騎士達が討伐する姿を見る事があった。遠目から見る魔獣の気持ち悪さに、私と弟は怖くて震えていた。
国境沿いの、花畑のある祖父母の家では、不思議な事に一度も魔獣は見た事も出た事もなかった。
ある時、魔獣術師のおじさんが花畑を訪ねて来た。どうしてこの場所に魔獣が出ないのか、どうやら花に理由があるようだから調べさせて欲しいというと、しばらく滞在した。そして、ここに魔獣が現れない理由は栽培している花の根に、魔獣が嫌う物があるからだと教えてくれた。
私が14歳の頃「竜獣人のオスカー・レイナルドは騎士になったぞ」と、花を調べた後も、よく尋ねて来る様になっていた魔獣術師のおじさんが教えてくれた。
「女の子は皆アイツが好きだからな。弟の方も人気があってよ、アイツも来年から騎士になる事に決まってるんだ。レイナルド公爵令息の事はティナちゃんも知ってるだろう? 有名だからなぁ、竜獣人ってヤツはいろいろとすげえし、強いんだぞ」と言ってガハハと笑っていた。
騎士になったんだ……騎士姿のオスカー様はどんなに素敵だろう……
見てみたい……そう思っていたけれど、一度もそれは叶わなかった。
それから数年後、オスカー様はエリーゼ王女様の婚約者となられるとの噂を聞いた。
エリーゼ王女様は大変美しい方。
公爵令息のオスカー様とはお似合いだ。
お二人が並んだ姿はさぞかし絵になるだろう……
その頃、花店の手伝いに戻って来ないか、と両親に言われていたが、私はもう少しここに居たいと断った。
町中にある花店にいけば、彼を見る機会も多くなるだろう
……けれど、私は彼が王女様といる姿を見たくなかった。
想像するだけでもこんなに胸が苦しいのに……
花畑で、腕いっぱいの花を摘みながら、空を見上げた。
陽の光がさす青い空は、彼の目の色をしている。
真っ青なその色に……ズキリと胸が痛くなった。
どうしてだろう、いつまで経っても忘れられない。
たった五歳の少女の初恋。
叶う事はないとわかっているのに、
たった二度見かけただけの人なのに……
どうしてこんなに心が囚われているのだろう……
*
この町に戻ってからは、花屋の手伝いをしていた。
「レイナルド公爵家の結婚式で使うブーケを頼まれたのよ!」
お母さんが嬉しそうに話してくれた。
「オスカー様……結婚するの?」
帰ったばかりで、彼の事をまだよく知らなかった私はそう尋ねた。婚約されると聞いてはいたけど……
「違うわよ、エスター様の方。オスカー様はまだお相手もいらっしゃらないみたいよ」
……えっ?
「エリーゼ王女様は婚約者ではなかったの?」
「違うわよ、王女様の片想いだったみたいね」
あの王女様が、片想い?
「明日、レイナルド邸へウエディングドレスを見せてもらいにいくのよ、楽しみだわ!」
楽しそうに話をしていたお母さんだったが、その日の早朝『どうしても行けなくなったから代わりに行って来て』と、頼まれた。
レイナルド公爵邸、オスカー様がいる訳ではない。
会うのはエスター様とそのお相手のシャーロット様。
そう思っていても、どこかで会えるかもしれないと期待していた。
馬車に乗り向かった公爵邸は、とても大きなお城の様な建物だった。
大きな玄関の扉に横にあるベルを鳴らすが、誰も出てこない。
……ベルは何故か音がしない。
声を掛けてみるが、誰も出てこない。
どうしよう、開いているのかな?
そっと扉に手をかけると何故か勝手に開いた。
まるで、入って下さいと言われているかのようだ。
思わず一歩足を踏み入れる。
「わあ……」
初めて見た、邸の中に庭がある。
庭の位置する天井はガラス張りになっていて、陽の光が降り注いでいた。
庭には……たくさんの花が咲いていて、そこに置いてあるベンチに人がいた。
この人は……?
銀色の髪、キレイな顔立ち。長いまつ毛が伏せられている。
おそるおそる声をかけた。
オスカー様かエスター様かよく分からない。
だから『レイナルドさん?』と尋ねた。
高鳴る鼓動を抑えるように胸に手を当て、一つ深呼吸をする。
私は仕事で来ているのだから、ちゃんとしなければ。
もう一度声をかけ、目を開けたその人はオスカー様だった。
あの時と同じ、真っ青な目で見つめられおもわず頬が熱くなる。
挨拶を交わし握手をした途端に、今度は体が熱くなった。
鼓動が高まり、彼しか見えなくなる。
……どうしよう、やっぱり好きだ。
そう思いながら彼を見つめると、オスカー様も私を見つめていた。
彼の瞳が青から金色に変わり始める。
「俺の……瞳の色……変わった?」
「はい……キレイな金色に」
そう言うと彼は甘く微笑んだ。
ゆっくりと顔が近くなり……
そこにレイナルド公爵夫妻が来られた。
ーーーーーー*
『花』だと教えられ、公爵家の豪華な馬車の中でプロポーズされた。
私の両親に挨拶をしてくれ、結婚の了承を得て……今ここにいる。
出会いからここまで、約三時間。
プロポーズもしてもらったし、結婚も決まっているけど、
手を握って、抱きしめられて……
『花』しか愛さないという竜獣人の、彼の蕩けるような金色の目は私を愛おしく見つめてる
会いたくて仕方がなかったと、君が欲しい、そう甘く告げられた。
私だって、オスカー様の事は好き。
まだ言葉に出来ていないけど…………好き。
でも…………
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