異常姦見聞録

黄金稚魚

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件の怪

レポート『件』

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タイトル:件
カテゴリ:妖怪

 件という妖怪を簡単に解説しておこう。件はオーソドックスな予言獣であり「件」の字が示す通り、人と牛、牛の体に人の頭が乗った姿をしている。半人半獣というものだ。
 
 その能力は予言。母牛から生まれ落ちると人語で喋り、自らを「件」と名づけさせる。そして自分を殺さない事を約束させる代わりに予言を与える。
 内容は豊作が続く事や兵役、災害など当時の人間にとって重要な情報だ。

 件の寿命は短く予言を残して三日で死ぬ。

 発祥は江戸時代で、件の絵図を戸口に置けばその家は繁盛し、厄も避けられると教示したという。
 古くから馴染みのある妖怪というわけだ。

 「件の如し」という言葉がある。前に述べたとおり、前記記載のとおりという意味で、全文を真実であると締め括る言葉だ。

 件の予言は絶対的なものだったのだろう。言葉の由来は諸説あるが当時の人間が件という妖怪の予言を信じた事は確実だろう。
 
 そして現代にて件は一人の男の前に現れた。
 人生を件を狂わされた男の体験談。この話の中で件はさまざまな姿で現れた。

 最初に現れた「件」は幼い子供の姿をしていた。とある教団の教祖として人々に預言を下していたという。
 体験者はこの教団に誘拐され「件」の婿となることを要求した。

 私が調査を行った所、誘拐事件の記録は見つからなかったが同時期に男子高校生一名が行方不明にいる。
 彼は県外の山で目を覚まし、自力で電波の届く場所まで移動して助けを呼んだそうだ。

 教団の末路やその後のことには体験者も曖昧な様子で「まるで夢の中のような違和感」と語った。

 次の「件」は明らかに常軌を逸脱した姿で彼の前に現れた。異形の牛、それも死にかけのである。体験者はそれを「件」と呼ばずにと呼んでいた。だが、一般的にはそちらの方が「件」のイメージに近いだろう。
 「件」は凄惨な預言を残し生き絶えた。

 予言の通り、体験者の周りでは次々と不幸が起きた。
 その内容にはある種の一貫性を私は感じ取れた。

 これはある種の異種婚姻譚だったのではないのだろうか。
 それは嫉妬と言うべきか、体験者に近づく女性を次々と殺すように呪っている印象を受ける。
 人間の姿で現れた「件」は未だ体験者の事を諦めていないのだ。
 

 「件」の正体は一体なんなのだろうか。体験者は「件」の話の前に幼少期の体験を話してくれた。
 夏祭りで怪しいくじ引きをして牛と交尾をさせられた。瞳孔が二つある異形の牛だ。この特徴のある牛は後にも体験者の前に現れた。
 「件」との関わりが疑われるが、親なのかあるいは「件」そのものだったのかは判断が難しい。
 どちらにせよ「件」と体験者の間に縁が出来たのはこの時で間違い無いだろう。

 「件」が体験者に執着する理由もそこにあるのだろう。

 今後、体験者が「件」の呪いから解放されることはあるのだろうか。
 どうすれば「件」は満足するのか。


 


 
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