1 / 12
魔王討伐
1
しおりを挟む
いつも闇に包まれている魔王城。
決して光が届かないと呼ばれていたその場所に光が差した。
「ぐおおおおっ」
魔王の第三の心の臓には勇者ギルガルドの聖剣エクスカリバーが刺さっており、闇の空が割け、青空と眩しい太陽が顔をのぞかせた。魔物に居場所を奪われ、魔物の餌か痛ぶる玩具としか生きていられなかった魔王城の周りに潜む小動物たちは草むらなどから、祖先が当たり前のように見ていたであろう明るい空を興味津々に見ていた。彼らは鼻をひくひくさせて興奮する。動物の本能でわかったのだ。これから明るい未来が待っていることを―――
「お前さえ・・・・・・いなければ」
目の焦点が合わない魔王は勇者ギルガルドではなく遠くをぼんやりと見て倒れ込んだ。
「やったなっ、ギルガルド」
「ああっ、ガードナーありがとう」
勇者ギルガルドが魔王から剣を抜き、鞘に剣を収めようとしていると近くにいた防御と遠距離攻撃のスペシャリストであり、盾と弓の名手のガードナーが熱い抱擁を交わす。お互い傷つき汚れた防具を付けていたけれど、彼らの流した汗を含め、見ていて微笑ましい男たちの姿だった。
ギルガルドの攻撃が超近接型だとすれば、ガードナーは近距離から中距離を担っていて、後方支援担当を守りながらも、時に最前線のギルガルドを守る。そして、敵がギルガルドに夢中になっている時、相手の急所を射抜くのだ。彼の一矢が魔王の第二の心の臓を貫いたのだから。
「ふんっ、私の全てを見通す神の眼のおかげで心の臓の秘密を探知したおかげでしょ」
後方にいた魔法使いのマリリーンがホコリを被ったぶかぶかのローブを引きずりながら、二人に近づいていく。
「はははっ、そうだな。マリリーンの未来予知も火炎魔法や星魔法も魔王の障壁を壊すのに助かったよ」
彼女は少女にして地・水・風・火の四大魔法の全てを操ることができ、新たに未来予知や星魔法も生み出した天才魔法使い。魔王も勇者の圧倒的な物理攻撃に対抗する魔の障壁を創り出したが、彼女の繰り出した魔法攻撃及び、彼女が勇者の剣に纏わせた魔法により、簡単に壊すことができた。
「泣いてるじゃない、ギルガルド」
「お前だって、マリリーン」
「俺も目頭が熱いぜ」
三人はお互いをたたえ合いながら、勝利の喜びを分かち合う。死と隣り合う中でお互いに命を預け、困難を乗り越えた三人の絆はとても強固だった。しかし、この勇者のパーティーは三人ではない。もう一人―――
「みんな~~~っ、おめでとうっ!!」
遥か後方より三人と同じパーティーの少女のフローレンスが三人を祝福しに小走りでやって来た。汚れが一切ない純白の服を着た彼女の目は三人と同じように嬉し泣きをした笑顔だった。その姿は今まで死闘を繰り広げボロボロになった魔王城で一人不釣り合いであり、戦闘とは無関係の天使のようだった。
「んっ、どうしたの?みんな」
少女がやってくると、心の底から喜んでいた他の三人の顔が曇った。
決して光が届かないと呼ばれていたその場所に光が差した。
「ぐおおおおっ」
魔王の第三の心の臓には勇者ギルガルドの聖剣エクスカリバーが刺さっており、闇の空が割け、青空と眩しい太陽が顔をのぞかせた。魔物に居場所を奪われ、魔物の餌か痛ぶる玩具としか生きていられなかった魔王城の周りに潜む小動物たちは草むらなどから、祖先が当たり前のように見ていたであろう明るい空を興味津々に見ていた。彼らは鼻をひくひくさせて興奮する。動物の本能でわかったのだ。これから明るい未来が待っていることを―――
「お前さえ・・・・・・いなければ」
目の焦点が合わない魔王は勇者ギルガルドではなく遠くをぼんやりと見て倒れ込んだ。
「やったなっ、ギルガルド」
「ああっ、ガードナーありがとう」
勇者ギルガルドが魔王から剣を抜き、鞘に剣を収めようとしていると近くにいた防御と遠距離攻撃のスペシャリストであり、盾と弓の名手のガードナーが熱い抱擁を交わす。お互い傷つき汚れた防具を付けていたけれど、彼らの流した汗を含め、見ていて微笑ましい男たちの姿だった。
ギルガルドの攻撃が超近接型だとすれば、ガードナーは近距離から中距離を担っていて、後方支援担当を守りながらも、時に最前線のギルガルドを守る。そして、敵がギルガルドに夢中になっている時、相手の急所を射抜くのだ。彼の一矢が魔王の第二の心の臓を貫いたのだから。
「ふんっ、私の全てを見通す神の眼のおかげで心の臓の秘密を探知したおかげでしょ」
後方にいた魔法使いのマリリーンがホコリを被ったぶかぶかのローブを引きずりながら、二人に近づいていく。
「はははっ、そうだな。マリリーンの未来予知も火炎魔法や星魔法も魔王の障壁を壊すのに助かったよ」
彼女は少女にして地・水・風・火の四大魔法の全てを操ることができ、新たに未来予知や星魔法も生み出した天才魔法使い。魔王も勇者の圧倒的な物理攻撃に対抗する魔の障壁を創り出したが、彼女の繰り出した魔法攻撃及び、彼女が勇者の剣に纏わせた魔法により、簡単に壊すことができた。
「泣いてるじゃない、ギルガルド」
「お前だって、マリリーン」
「俺も目頭が熱いぜ」
三人はお互いをたたえ合いながら、勝利の喜びを分かち合う。死と隣り合う中でお互いに命を預け、困難を乗り越えた三人の絆はとても強固だった。しかし、この勇者のパーティーは三人ではない。もう一人―――
「みんな~~~っ、おめでとうっ!!」
遥か後方より三人と同じパーティーの少女のフローレンスが三人を祝福しに小走りでやって来た。汚れが一切ない純白の服を着た彼女の目は三人と同じように嬉し泣きをした笑顔だった。その姿は今まで死闘を繰り広げボロボロになった魔王城で一人不釣り合いであり、戦闘とは無関係の天使のようだった。
「んっ、どうしたの?みんな」
少女がやってくると、心の底から喜んでいた他の三人の顔が曇った。
0
お気に入りに追加
108
あなたにおすすめの小説
「はあ、何のご用ですの?」〜元溺愛婚約者は復縁を望まない〜
小砂青
恋愛
伯爵令嬢フランチェスカは美貌と教養を兼ね備えた才女でありながら、婚約者であるイシュメルを溺愛していた。
しかし彼女の誕生日、イシュメルは他に愛する人ができたからとフランチェスカとの婚約を破棄してしまう。
それから2年。イシュメルはフランチェスカとの婚約破棄を後悔し、今でも自分を待っていると信じて疑わず彼女を迎えにいくが……?
山に捨てられた令嬢! 私のスキルは結界なのに、王都がどうなっても、もう知りません!
甘い秋空
恋愛
婚約を破棄されて、山に捨てられました! 私のスキルは結界なので、私を王都の外に出せば、王都は結界が無くなりますよ? もう、どうなっても知りませんから! え? 助けに来たのは・・・
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
冷遇されている令嬢に転生したけど図太く生きていたら聖女に成り上がりました
富士山のぼり
恋愛
何処にでもいる普通のOLである私は事故にあって異世界に転生した。
転生先は入り婿の駄目な父親と後妻である母とその娘にいびられている令嬢だった。
でも現代日本育ちの図太い神経で平然と生きていたらいつの間にか聖女と呼ばれるようになっていた。
別にそんな事望んでなかったんだけど……。
「そんな口の利き方を私にしていいと思っている訳? 後悔するわよ。」
「下らない事はいい加減にしなさい。後悔する事になるのはあなたよ。」
強気で物事にあまり動じない系女子の異世界転生話。
※小説家になろうの方にも掲載しています。あちらが修正版です。
竜人さまに狂愛される悪役令嬢には王子なんか必要ありません!
深月カナメ
恋愛
ある日突然に自分は悪役令嬢シャルロットだと気がついた。
その時、目の前には憧れていた乙女ゲームの王子クレア殿下がいた。
婚約者となったのだけど、殿下は私に「お前から話しかけるな虫酸が走る」と言われた。
何だ私って殿下に嫌われているんだ。
ガッカリ……
タイトルが変わります。
《 悪役令嬢の私は婚約者の殿下に嫌われているようです。》から
『 竜人さまに狂愛される悪役令嬢には王子なんか必要ありません!』となります。
来たる、5月22日(金)に
『 竜人さまに狂愛される悪役令嬢には王子なんか必要ありません!』が
電子書籍版とレンタル版で先行配信いたします!
是非、ご覧くださいませ。
婚約破棄されたので、契約不履行により、秘密を明かします
tartan321
恋愛
婚約はある種の口止めだった。
だが、その婚約が破棄されてしまった以上、効力はない。しかも、婚約者は、悪役令嬢のスーザンだったのだ。
「へへへ、全部話しちゃいますか!!!」
悪役令嬢っぷりを発揮します!!!
学園にいる間に一人も彼氏ができなかったことを散々バカにされましたが、今ではこの国の王子と溺愛結婚しました。
朱之ユク
恋愛
ネイビー王立学園に入学して三年間の青春を勉強に捧げたスカーレットは学園にいる間に一人も彼氏ができなかった。
そして、そのことを異様にバカにしている相手と同窓会で再開してしまったスカーレットはまたもやさんざん彼氏ができなかったことをいじられてしまう。
だけど、他の生徒は知らないのだ。
スカーレットが次期国王のネイビー皇太子からの寵愛を受けており、とんでもなく溺愛されているという事実に。
真実に気づいて今更謝ってきてももう遅い。スカーレットは美しい王子様と一緒に幸せな人生を送ります。
この罰は永遠に
豆狸
恋愛
「オードリー、そなたはいつも私達を見ているが、一体なにが楽しいんだ?」
「クロード様の黄金色の髪が光を浴びて、キラキラ輝いているのを見るのが好きなのです」
「……ふうん」
その灰色の瞳には、いつもクロードが映っていた。
なろう様でも公開中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる