上 下
15 / 17
本編

14話 死角からの刺客

しおりを挟む
 夜の一人歩き。

 禁止されていたからか、月明かりとは言え、怖さと高揚感が入り混じっていた。

 カサッ

 私はびくっと、庭園の草陰を見るけれど人影はない。小動物か小鳥か、それとも風か。

「ふふっ」

 味わったことのないスリルに私はワクワクしながら歩く。
 とはいえ、私は人には出会わないように気を付けながら、いや、まったく気を付けていないけれど、会わないことを祈りながら歩いた。
 
 だって、悪い人はもちろんのこと、お父様やお母様、告げ口するような衛兵さんやメイドさんにも、リリィにも気づかれたら、怒られるに決まっているのだから。
 
 誰にも会ってはいけない・・・

「でも、シュナイデル王子なら・・・会いたいな」

 ガサガサガサッ!!

 小動物や小鳥、風ではありえない音が後ろの方から聞こえてくるのに気いた私は慌てて振りむく。
 聞かれてはいけない独り言を聞かれてしまったかもしれない焦りで、私は顔を赤らめていた。

「へっへっへっ」

 私の赤らんだ顔はすぐさま真っ青になった。
 
 

 振り返ると、全く知らない3人の男たちがいた。



 愛する国民。全員を覚えているわけではないけれど、それとなくほとんどの人は把握しているけれど、彼らの顔は全く記憶にないし、服装もボロボロでほとんど洗っていないその砂っぽい服だったけれど、見たこともない彼らは異国の人間であることは容易に想像がついた。

(なんで、こんな人たちが私の国に・・・っ)

 私の国は心は豊かだと思っているけれど、財政状況だってそんなに良くないから、私をさらう価値なんてほとんどない。

「こんばん・・・わ」

 ジリッ

 返事もせずに距離をじわじわ詰めてくる3人。
 念のため、あいさつをしてみたけれど、やっぱり交友的ではないようだ。

(彼らが私の前に現れた理由なんて考えている暇はないわっ。逃げないと)

 私は彼らの様子を見ながら、距離を確保するため足を後ろに引く。
 しかし、その行為は彼らの一歩でほぼ無意味になる。

 私は高まる心拍を整え、走り出して逃げるタイミングを探す。
 でも、怖くて怖くて呼吸も心拍もなかなか落ち着かない。

(お父様の言う通りだった・・・)

 今はお父様の言葉を思い出している場合でもないのに、この一時を争う緊張感から目を背けるように必要ないことに気持ちが持っていかれてしまう。

「くっ・・・」

 私は後ろへ走った。
 動きずらい寝間着。
 ドタドタ走ってくる3人の足音。

「ううううぅぅっ」

(いやだ、いやだ、いやだっ)

 私は王宮の方へ走る。
 夜に出かけるという、私にとって、大人へ一歩を踏み出したことを後悔しながら―――
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

今更困りますわね、廃妃の私に戻ってきて欲しいだなんて

nanahi
恋愛
陰謀により廃妃となったカーラ。最愛の王と会えないまま、ランダム転送により異世界【日本国】へ流罪となる。ところがある日、元の世界から迎えの使者がやって来た。盾の神獣の加護を受けるカーラがいなくなったことで、王国の守りの力が弱まり、凶悪モンスターが大繁殖。王国を救うため、カーラに戻ってきてほしいと言うのだ。カーラは日本の便利グッズを手にチート能力でモンスターと戦うのだが…

【完結】どうぞお気遣いなく。婚約破棄はこちらから致しますので。婚約者の従姉妹がポンコツすぎて泣けてきます

との
恋愛
「一体何があったのかしら」  あったかって? ええ、ありましたとも。 婚約者のギルバートは従姉妹のサンドラと大の仲良し。 サンドラは乙女ゲームのヒロインとして、悪役令嬢の私にせっせと罪を着せようと日夜努力を重ねてる。 (えーっ、あれが噂の階段落ち?) (マジか・・超期待してたのに) 想像以上のポンコツぶりに、なんだか気分が盛り下がってきそうですわ。 最後のお楽しみは、卒業パーティーの断罪&婚約破棄。 思いっきりやらせて頂きます。 ーーーーーー

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

私は王子の婚約者にはなりたくありません。

黒蜜きな粉
恋愛
公爵令嬢との婚約を破棄し、異世界からやってきた聖女と結ばれた王子。 愛を誓い合い仲睦まじく過ごす二人。しかし、そのままハッピーエンドとはならなかった。 いつからか二人はすれ違い、愛はすっかり冷めてしまった。 そんな中、主人公のメリッサは留学先の学校の長期休暇で帰国。 父と共に招かれた夜会に顔を出すと、そこでなぜか王子に見染められてしまった。 しかも、公衆の面前で王子にキスをされ逃げられない状況になってしまう。 なんとしてもメリッサを新たな婚約者にしたい王子。 さっさと留学先に戻りたいメリッサ。 そこへ聖女があらわれて――   婚約破棄のその後に起きる物語

婚約者をないがしろにする人はいりません

にいるず
恋愛
 公爵令嬢ナリス・レリフォルは、侯爵子息であるカリロン・サクストンと婚約している。カリロンは社交界でも有名な美男子だ。それに引き換えナリスは平凡でとりえは高い身分だけ。カリロンは、社交界で浮名を流しまくっていたものの今では、唯一の女性を見つけたらしい。子爵令嬢のライザ・フュームだ。  ナリスは今日の王家主催のパーティーで決意した。婚約破棄することを。侯爵家でもないがしろにされ婚約者からも冷たい仕打ちしか受けない。もう我慢できない。今でもカリロンとライザは誰はばかることなくいっしょにいる。そのせいで自分は周りに格好の話題を提供して、今日の陰の主役になってしまったというのに。  そう思っていると、昔からの幼馴染であるこの国の次期国王となるジョイナス王子が、ナリスのもとにやってきた。どうやらダンスを一緒に踊ってくれるようだ。この好奇の視線から助けてくれるらしい。彼には隣国に婚約者がいる。昔は彼と婚約するものだと思っていたのに。

「婚約破棄、ですね?」

だましだまし
恋愛
「君とは婚約破棄をする!」 「殿下、もう一度仰ってください」 「何度聞いても同じだ!婚約を破棄する!」 「婚約破棄、ですね?」 近頃流行りの物語にある婚約破棄騒動。 まさか私が受けるとは…。 でもしっかり聞きましたからね?

貴方の傍に幸せがないのなら

なか
恋愛
「みすぼらしいな……」  戦地に向かった騎士でもある夫––ルーベル。  彼の帰りを待ち続けた私––ナディアだが、帰還した彼が発した言葉はその一言だった。  彼を支えるために、寝る間も惜しんで働き続けた三年。  望むままに支援金を送って、自らの生活さえ切り崩してでも支えてきたのは……また彼に会うためだったのに。  なのに、なのに貴方は……私を遠ざけるだけではなく。  妻帯者でありながら、この王国の姫と逢瀬を交わし、彼女を愛していた。  そこにはもう、私の居場所はない。  なら、それならば。  貴方の傍に幸せがないのなら、私の選択はただ一つだ。        ◇◇◇◇◇◇  設定ゆるめです。  よろしければ、読んでくださると嬉しいです。

婚約破棄をされるのですね、そのお相手は誰ですの?

恋愛
フリュー王国で公爵の地位を授かるノースン家の次女であるハルメノア・ノースン公爵令嬢が開いていた茶会に乗り込み突如婚約破棄を申し出たフリュー王国第二王子エザーノ・フリューに戸惑うハルメノア公爵令嬢 この婚約破棄はどうなる? ザッ思いつき作品 恋愛要素は薄めです、ごめんなさい。

処理中です...