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本編
11話 運命は偶然?必然?
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「やぁ、奇遇だね」
朝日の向こうから彼がやってきた。
シュナイデル王子だ。
「おはようございます・・・王子」
私は眩しさから目を逸らす。そう・・・
「どうしたいんだい?」
彼が優しく私の手を取る。
私は耳に熱を帯びたのを感じた。
「いいえ、なんでもございません」
シュナイデル王子は「そう」と呟いて、私の顔を覗き込む。
「ふぅーーっ、本当に空気が美味しいね。この国は」
私の困った顔を察したのか、シュナイデル王子は私から離れて、両手を広げて深呼吸をする。
近いと恥ずかしい、でも遠いと寂しい・・・。
(って、私のバカバカバカっ!!妹の夫に何考えてるのよ!!)
さっきは見れなかったけれど、彼が離れた寂しさからか私が彼の清々しい横顔を見ていると、シュナイデル王子は目だけでこっちを見て、「やっと、目を合わせてくれた」と言って、子どもっぽい笑顔を見せてくれた。
「実はね、昨日と同じ時間、同じ場所をあるけば、君に会える気がしたんだ」
近づいてくるシュナイデル王子。
「だから、奇遇ってのは嘘なんだ」
今度はシュナイデル王子から目線を逸らせなかったびっくりした私。
目線を外さなかったことを喜ぶシュナイデル王子。
(この人、もしかして凄い女たらしいなんじゃないの!?リリィには悪いけど、この人、女の敵なんじゃ・・・)
この目の前のイケメン王子を否定したい。否定しなければならない。
―――だけど
「私も・・・そう・・・思って・・・ました」
自分でも何を言っているんだろうと思う。
けれど、熱を持った私は理性は抑え込まれ、感情のまま言葉を発していた。
「リリィは・・・ラシュタット王国で元気に暮らしていますか?」
しかし、処理速度が遅くなった理性も、あまりにも恥ずかしいことを言ってしまったということの重大さに気づき、慌てて私に相応しくないこの空気を変えたくて、後ろを振り向きながら話を逸らす。
「あぁ、もちろん。彼女は優秀だからすぐに我が国に馴染んだようだよ」
妹の夫とはいえ、天下のラシュタット王国の次期後継者のシュナイデル王子にかなり失礼な態度をとってしまった私に対しても優しい声で語りかけてくれるシュナイデル王子。
当然なことなのだけれど、シュナイデル王子が妹のリリィを褒めた言葉が私の心を背中から突き刺し、彼に背を向けていた私は目を見開いて動揺していた。
「ねぇ、笑ってよ。君の笑顔はとっても素敵なんだから」
(だめだ・・・)
私は彼に気を許して笑ってしまった。
シュナイデル王子も嬉しそうに笑った。
私たちは何に気兼ねすることなく笑いあった。
まるで気心許し合う恋人のように。
私たちは知らなかった。
王宮の中から窓越しに私たちをリリィが見ていたなんて。
朝日の向こうから彼がやってきた。
シュナイデル王子だ。
「おはようございます・・・王子」
私は眩しさから目を逸らす。そう・・・
「どうしたいんだい?」
彼が優しく私の手を取る。
私は耳に熱を帯びたのを感じた。
「いいえ、なんでもございません」
シュナイデル王子は「そう」と呟いて、私の顔を覗き込む。
「ふぅーーっ、本当に空気が美味しいね。この国は」
私の困った顔を察したのか、シュナイデル王子は私から離れて、両手を広げて深呼吸をする。
近いと恥ずかしい、でも遠いと寂しい・・・。
(って、私のバカバカバカっ!!妹の夫に何考えてるのよ!!)
さっきは見れなかったけれど、彼が離れた寂しさからか私が彼の清々しい横顔を見ていると、シュナイデル王子は目だけでこっちを見て、「やっと、目を合わせてくれた」と言って、子どもっぽい笑顔を見せてくれた。
「実はね、昨日と同じ時間、同じ場所をあるけば、君に会える気がしたんだ」
近づいてくるシュナイデル王子。
「だから、奇遇ってのは嘘なんだ」
今度はシュナイデル王子から目線を逸らせなかったびっくりした私。
目線を外さなかったことを喜ぶシュナイデル王子。
(この人、もしかして凄い女たらしいなんじゃないの!?リリィには悪いけど、この人、女の敵なんじゃ・・・)
この目の前のイケメン王子を否定したい。否定しなければならない。
―――だけど
「私も・・・そう・・・思って・・・ました」
自分でも何を言っているんだろうと思う。
けれど、熱を持った私は理性は抑え込まれ、感情のまま言葉を発していた。
「リリィは・・・ラシュタット王国で元気に暮らしていますか?」
しかし、処理速度が遅くなった理性も、あまりにも恥ずかしいことを言ってしまったということの重大さに気づき、慌てて私に相応しくないこの空気を変えたくて、後ろを振り向きながら話を逸らす。
「あぁ、もちろん。彼女は優秀だからすぐに我が国に馴染んだようだよ」
妹の夫とはいえ、天下のラシュタット王国の次期後継者のシュナイデル王子にかなり失礼な態度をとってしまった私に対しても優しい声で語りかけてくれるシュナイデル王子。
当然なことなのだけれど、シュナイデル王子が妹のリリィを褒めた言葉が私の心を背中から突き刺し、彼に背を向けていた私は目を見開いて動揺していた。
「ねぇ、笑ってよ。君の笑顔はとっても素敵なんだから」
(だめだ・・・)
私は彼に気を許して笑ってしまった。
シュナイデル王子も嬉しそうに笑った。
私たちは何に気兼ねすることなく笑いあった。
まるで気心許し合う恋人のように。
私たちは知らなかった。
王宮の中から窓越しに私たちをリリィが見ていたなんて。
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