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前編
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「決まらないと、帰れないぞ」
教師のマスダ先生は足を組みながら、自分の爪を見ながらだるそうな声を発する。
クラスの委員長を決める、決めるのはお前たちだ。
生徒の自主性なんて言葉にすれば、素晴らしく感じるけれど、こんなに話が進まないのであれば、そんな煽る言葉ではなく、何かしらのアクションをしてほしい。
(というか、トイレに行きたい・・・っ)
私もこんなことは思いたくなかったけれど、だってトイレに行きたいんだもん。
早く決めて欲しい。
「誰かいねーのっ」
ポケットに手を入れて、背もたれにだらっと腰かけた男子も先生のように気だるそうにみんなに言う。
先生とこの男子が前の委員長を困らせて、病ませた張本人だ。
前の委員長のハルナさんは責任感があって、先生がやるべきことをやらないから、クラスがまとまるために一生懸命働いて、クラスの輪を乱す彼を何度も説得していたけれど、二人とも彼女を困らせるというか、彼女に負担をかけるだけだった。
「じゃあ、あんたがやればいいじゃん」
「えー、ハヤトがやったら学級崩壊しそー」
胸元の3つ開いて、スカートが短い女子たちが無駄な発言をする。
「あっ・・・」
私がそわそわしながら、彼女達を見ていると、目が合う。
「アオイでよくない?」
みんなの目が私に向く。
「センセー、アオイが適任だと思いますっ!!」
対して仲もよくないのに、勝手に推薦する女子。
「んっ、アオイか・・・」
先生と目が合う。
彼女に反発することもできない私は首を横に振ることもできないが、必死に無理だと先生の目に訴える。
「よしっ、じゃあ・・・」
なんにもよしっ、じゃないのに先生は立ち上がろうとする。
「・・・先生、僕がやります」
ふり返ると、控えめに手を挙げたユウマくんがいた。
私と目が合うと、ニコっとする。
ドキっとした。
イナズマが走った。
「えー、じゃあ私、副委員長やろっかな」
「はっ、あんたには無理だから、私やる」
教室がざわつく。
そして、私もトイレに行きたくてざわつく。
(ほんとに・・・だれでもいいからトイレに・・・行かせて)
「じゃあ、次は副委員長を・・・」
「先生、委員長特権で副委員長決めていいですか?」
「んあっ、あぁ・・・」
しっかりとしたユウマくんの声にだらしない先生は動揺し、従う。まったくどっちが先生かわからない。
(よし、やっと終わる・・・)
「じゃあ、アオイさんで」
(・・・ん?)
私は振り返ることができなかった。
そして、いくつかの女子の嫌な視線を感じた。
「よしっ、じゃあ今日のホームルームはお終い。解散っ」
終わりだけは歯切れのいい先生がホームルームを終わらせた。
けれど、芽吹いていなかった私の青春はこの時はじまりつつあったのかもしれない。
教師のマスダ先生は足を組みながら、自分の爪を見ながらだるそうな声を発する。
クラスの委員長を決める、決めるのはお前たちだ。
生徒の自主性なんて言葉にすれば、素晴らしく感じるけれど、こんなに話が進まないのであれば、そんな煽る言葉ではなく、何かしらのアクションをしてほしい。
(というか、トイレに行きたい・・・っ)
私もこんなことは思いたくなかったけれど、だってトイレに行きたいんだもん。
早く決めて欲しい。
「誰かいねーのっ」
ポケットに手を入れて、背もたれにだらっと腰かけた男子も先生のように気だるそうにみんなに言う。
先生とこの男子が前の委員長を困らせて、病ませた張本人だ。
前の委員長のハルナさんは責任感があって、先生がやるべきことをやらないから、クラスがまとまるために一生懸命働いて、クラスの輪を乱す彼を何度も説得していたけれど、二人とも彼女を困らせるというか、彼女に負担をかけるだけだった。
「じゃあ、あんたがやればいいじゃん」
「えー、ハヤトがやったら学級崩壊しそー」
胸元の3つ開いて、スカートが短い女子たちが無駄な発言をする。
「あっ・・・」
私がそわそわしながら、彼女達を見ていると、目が合う。
「アオイでよくない?」
みんなの目が私に向く。
「センセー、アオイが適任だと思いますっ!!」
対して仲もよくないのに、勝手に推薦する女子。
「んっ、アオイか・・・」
先生と目が合う。
彼女に反発することもできない私は首を横に振ることもできないが、必死に無理だと先生の目に訴える。
「よしっ、じゃあ・・・」
なんにもよしっ、じゃないのに先生は立ち上がろうとする。
「・・・先生、僕がやります」
ふり返ると、控えめに手を挙げたユウマくんがいた。
私と目が合うと、ニコっとする。
ドキっとした。
イナズマが走った。
「えー、じゃあ私、副委員長やろっかな」
「はっ、あんたには無理だから、私やる」
教室がざわつく。
そして、私もトイレに行きたくてざわつく。
(ほんとに・・・だれでもいいからトイレに・・・行かせて)
「じゃあ、次は副委員長を・・・」
「先生、委員長特権で副委員長決めていいですか?」
「んあっ、あぁ・・・」
しっかりとしたユウマくんの声にだらしない先生は動揺し、従う。まったくどっちが先生かわからない。
(よし、やっと終わる・・・)
「じゃあ、アオイさんで」
(・・・ん?)
私は振り返ることができなかった。
そして、いくつかの女子の嫌な視線を感じた。
「よしっ、じゃあ今日のホームルームはお終い。解散っ」
終わりだけは歯切れのいい先生がホームルームを終わらせた。
けれど、芽吹いていなかった私の青春はこの時はじまりつつあったのかもしれない。
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