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「はぁ!?」
山田くんが露骨に嫌そうな顔で僕を見る。
「え・・・っ」
橘さんが眉間にしわを寄せて驚く。
まさか、僕ごときが水を差すなんて思わなかったようだ。
そういえば、彼女に僕は空気のように扱われていたか。
一言も喋っていない。
「・・・」
塩入さんは複雑な顔をしている。
先ほど笑顔だったけれど、「怖い」と言ったのはまんざら嘘ではなかったようだ。
自分も乗りたくはないけれど、ちらっと見た山田くんの顔が頭から離れないようだ。
まぁ、彼女を責めるつもりはまったくない。そんな性格だったら遊園地になんか来ていない。
「だから、僕は・・・ジェットコースターみたいなのが苦手なんだ・・・。だから、待っているよ」
「おいおい、ビビってんじゃねえよ。度胸付けて男見せようぜっ!!鈴木」
誘い笑いをする山田くんにつられて、橘さんも大笑いして、塩入さんが清楚に笑う。
山田くんがドンッ、と僕の胸をグータッチしてくる。
「げほっげほっ」
そういう体育会系のノリをしてこなかった僕にはただの暴力でしかなくて、咳込んでしまう。
「わりぃ、わりぃ。ってか、もっと胸板鍛えろよ鈴木」
山田くんはこうやって、男子から嫌われて行ったのを忘れてしまったのだろうか。
山田くんがどんな人かってことは、人間観察が趣味な僕にはよくわかっていたし、こんな山田くんでも遊園地の最初の方はある程度、僕にも気を遣っていたようだけれど、ジェットコースター乗車拒否でそれも面倒くさくなったらしい。
僕は僕なりに遊園地を楽しんでいたけれど、一気に不快な気持ちになっていた。
「まぁ、いいから・・・行きたい人で行ってきなよ」
僕はちらっと塩入さんを見てしまう。
もしかしたら、僕は塩入さんのことを・・・気になっていたのかもしれない。
けれど、彼女は目を逸らす。
「行きたい人って言うかさ・・・、パーティーじゃん俺ら。なっ?」
そう言って二人の女性の肩を抱いてにこっとする山田くん。
オスとして自分を大きく見せたい人なんだろうなと思った。
これで僕の心が動くと思ったらしい山田くんはまた怪訝な顔をする。
「どうして嫌なんだ?鈴木」
「だってさ、怖いし」
唖然とする山田くんと橘さん、そして・・・塩入さん。
「『だってさ、怖いし』だってさぁ、あはははっ」
また大笑いする山田くんと橘さん。そして、それに合わせる塩入さん。
基本的に感情的にならない僕だったけれど、少し悔しくなって言い返す。
「僕にはリスクを求める感覚が分からないんだ。そんな怖い思いをしないためにコツコツと頑張るのが・・・」
「オーケーオーケーわかった、わかった」
山田くんは僕の肩をポンっと叩いて、
「じゃあ、俺ら三人、スリルを十二分に楽しんでくるわ」
そう言って、行ってしまった。
僕は4人の笑い合う背中を見つめた。
きっと僕のことを嘲笑しているのだろう。
「あれ・・・4人?」
僕が目を擦ると3人になっていた。
(おかしいな、さっき黒いローブのコスプレをした女性が見えた気がしたんだけど・・・)
山田くんが露骨に嫌そうな顔で僕を見る。
「え・・・っ」
橘さんが眉間にしわを寄せて驚く。
まさか、僕ごときが水を差すなんて思わなかったようだ。
そういえば、彼女に僕は空気のように扱われていたか。
一言も喋っていない。
「・・・」
塩入さんは複雑な顔をしている。
先ほど笑顔だったけれど、「怖い」と言ったのはまんざら嘘ではなかったようだ。
自分も乗りたくはないけれど、ちらっと見た山田くんの顔が頭から離れないようだ。
まぁ、彼女を責めるつもりはまったくない。そんな性格だったら遊園地になんか来ていない。
「だから、僕は・・・ジェットコースターみたいなのが苦手なんだ・・・。だから、待っているよ」
「おいおい、ビビってんじゃねえよ。度胸付けて男見せようぜっ!!鈴木」
誘い笑いをする山田くんにつられて、橘さんも大笑いして、塩入さんが清楚に笑う。
山田くんがドンッ、と僕の胸をグータッチしてくる。
「げほっげほっ」
そういう体育会系のノリをしてこなかった僕にはただの暴力でしかなくて、咳込んでしまう。
「わりぃ、わりぃ。ってか、もっと胸板鍛えろよ鈴木」
山田くんはこうやって、男子から嫌われて行ったのを忘れてしまったのだろうか。
山田くんがどんな人かってことは、人間観察が趣味な僕にはよくわかっていたし、こんな山田くんでも遊園地の最初の方はある程度、僕にも気を遣っていたようだけれど、ジェットコースター乗車拒否でそれも面倒くさくなったらしい。
僕は僕なりに遊園地を楽しんでいたけれど、一気に不快な気持ちになっていた。
「まぁ、いいから・・・行きたい人で行ってきなよ」
僕はちらっと塩入さんを見てしまう。
もしかしたら、僕は塩入さんのことを・・・気になっていたのかもしれない。
けれど、彼女は目を逸らす。
「行きたい人って言うかさ・・・、パーティーじゃん俺ら。なっ?」
そう言って二人の女性の肩を抱いてにこっとする山田くん。
オスとして自分を大きく見せたい人なんだろうなと思った。
これで僕の心が動くと思ったらしい山田くんはまた怪訝な顔をする。
「どうして嫌なんだ?鈴木」
「だってさ、怖いし」
唖然とする山田くんと橘さん、そして・・・塩入さん。
「『だってさ、怖いし』だってさぁ、あはははっ」
また大笑いする山田くんと橘さん。そして、それに合わせる塩入さん。
基本的に感情的にならない僕だったけれど、少し悔しくなって言い返す。
「僕にはリスクを求める感覚が分からないんだ。そんな怖い思いをしないためにコツコツと頑張るのが・・・」
「オーケーオーケーわかった、わかった」
山田くんは僕の肩をポンっと叩いて、
「じゃあ、俺ら三人、スリルを十二分に楽しんでくるわ」
そう言って、行ってしまった。
僕は4人の笑い合う背中を見つめた。
きっと僕のことを嘲笑しているのだろう。
「あれ・・・4人?」
僕が目を擦ると3人になっていた。
(おかしいな、さっき黒いローブのコスプレをした女性が見えた気がしたんだけど・・・)
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