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(殺気!? だれっ!?)

 レオンの前では甘えていたい私だけど、普段は不正が許せず何かと反感を買いがちな私は殺気には敏感だ。とはいえ、数々の戦場で武功を上げて、私と同じように不正が許せない正義感溢れるレオンもほぼ同じタイミングで殺気に気がついたようだ。

(フィーリングだって合うし、私たちって、やっぱりいい夫婦になれるわっ)

 レオンに肩を抱かれている安心感。レオンの傍にいれば私に怖いものはないので、同じタイミングで同じことを気づいたことの感激が殺気の恐怖を上回り、私を守ろうと警戒するレオンのことがますます愛しく感じる。このまま二人三脚で二人だけの世界に行ってしまいたい・・・。

(それにしても、こんな幸せな空間に殺気を出す人なんて何者!?)

 自分も殺気を出していたのを棚に上げて周りを見渡すと、一人の男性と目が合った。

 ニコッ

 背筋がゾッとして、レオンにしがみついた。

「レオン、人の妻をそんな風に抱き締めるのは、いただけないなぁ」

 綺麗な唇であることは認めよう。でも、その唇をナルシストっぽく触りながらこの部屋で一番高いところから、優越感を持ちながら見下ろす視線も口調も不快だった。

「失礼しました」

(どの口が言ってるのよっ、ああっ!! レオンが腕を離しちゃったじゃないっ。ムキーーっ)

「私はまだ妻じゃありませんっ(チラッチラッ)」

 隙あらば、レオンへのアピールを忘れない私はレオンへの熱い視線を挟みながらマムル王子に反論する。

「あぁ、そうだね。やはり女性は結婚式が憧れだものね。それ無くして結婚なんて有り得ないのは分かっているさ。ちゃーんと、盛大な結婚式に、キミに相応しい素敵なウエディングドレスを用意するさ」

(お金を出せばそれで正解でしょ、とか思ってそーー。ほんと単純でデリカシーがないわ)

「別に必要ないです。好きな人といられればそれで・・・」

 そう、それでいいのだ。

「・・・・・・っ!!」

 だから、好きな人の顔を見たら、やっぱりその横顔もカッコよくて、私の視線に気がついたレオンがこちらを見たので、目が合ってしまい思わず赤面してしまった。

(でも、そうね。こうやって教会で二人で並んで立って、神父さんの前で愛を誓って)

 こういう時は妄想が募る募る。
 ウエディングドレスを着た私にいつもと違った正装と整髪をしているレオン。その姿も素敵。

 それで、神父は・・・ちょっと思いつかなかったから、子どもの劇みたいな白髭を付けたマムル王子。

「キミはボクに愛を誓いますか?」

「はい」

 ん?

 空気が変わったのを感じた。
 というか、神父さん。
 言い方を間違っていますよ?

「・・・嬉しいよ」

 目の前には階段から降りてきたマムル王子が、いつものふざけた適当そうな顔じゃなく、真剣な顔をしながら赤面し、目を少し潤わせながら、心底嬉しそうにしていた。よく見れば、マムル王子も意外と良い男・・・・・・

(って、私なんかやっちゃいました?)
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