上 下
13 / 15

オニのツノ

しおりを挟む
 むかし、むかし。

 オニがまだ優しかったころのお話。

「あっ、そろそろ帰らないと」

 赤オニくんはかくれんぼをしている最中に用事があったのを思い出しました。
 
 周りを見渡すけれど、みんながどこに隠れているかわかりません。

 大声を出して、帰ると宣言してももしかしたら、聞こえないオニもいるかもしれません。

「んん~~~っ」

『ボク、今日は用事があるから帰るね』

 赤オニくんが念じると、赤オニくんのツノから念じた気持ちが他のオニたちのツノに届きます。

『はいよ』

『うん、バイバイ』

『まった、ねぇ~』

 みんなに伝わったのを確認して赤オニくんは帰りました。

 そう、オニたちのツノにはテレパシーを使える重要な役割を担っていたのです。



『ん~、逆に言葉とか感じとか覚えたりするの面倒くさくない?』

『たしかに~』

『テレパシーだけでいいじゃん』

『そうだね』

『りょ』

『り』

『・・・』

『・・・』

 次第にオニたちは言葉を忘れていき、ツノのテレパシーだけで会話をするようになりました。

 そうして、オニたちが言葉をほとんど忘れた、ある日。

 ツノがないオニたちが生まれるようになってしまいました。

『なぁ、聞いているのか!!』

 ツノのないオニは答えません。

『おいっ、おいっ!!!」

「がああっ」

「うわあっ」

 次第にテレパシーが使えるオニと使えないオニが出てきました。

 ツノのないオニは、力がありません。

 ツノのないオニは、寿命が短いです。

 ツノのないオニは、自己中心的でした。

 オニたちはツノのないオニたちを追い出しました。



 ツノのないオニたちはか弱かったけれど、学習意欲がありました。

 文字を生み出し、忘れてしまいそうなことは書いて、思い返したり、人に教えたりすることができるようになりました。

 ツノのないオニたちはか弱かったけれど、手先が器用でした。

 様々な道具を作って、暮らしを豊かにしていきました。

 ツノのないオニたちはか弱かったけれど、野心がありました。

 子孫にツノのあるオニたちは怖くて、恐ろしい奴らだと伝え、鬼ヶ島には多くの財宝や、おいしい果物があることを伝えました。

 ツノのあるオニたちはそんなことも知らずに、のんきに遊んで、お酒を飲んで、ご飯を食べて楽しく暮らしていました。

 でも、追い出したオニをいじめようとは思いません。

 だって、自己中心で自分ばかりになっていても、同じオニだから。

 ときどき、届くか届かないかわからないテレパシーを毎日送ります。

『おい、みんな。元気にしているか?』

『・・・』

『・・・』

 けれど返事は来ません。

 でも、いつか―――




 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

おむつオナニーやりかた

rtokpr
エッセイ・ノンフィクション
おむつオナニーのやりかたです

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

処理中です...