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才能選び

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 むかし、むかし。
 神様が世界を造り、生物を造り始めた頃のお話です。

 神様は「光あれ」といって、何もない無の空間に光を灯しました。
 そして、生まれた空間に次々と星をばらまきました。

 神様は積み木で遊ぶように、自分のセンスで星を配置するのを楽しんでいましたが、自分だけで造っていてもつまらないと感じ始めました。

「よし、生物を造ろう。えいっ」

 神様が念じた指先の向こうに白いオモチのような生み出され、分裂し、1つが2つに、2つが4つにと増えていきました。

「うんこれでよい。彼らはそうじゃな、地球へと住まわせてみよう。いいか、お前たち。これからお前たちには『才能』を一つ与えよう。その才能を磨いて暮らすが良い」

「ボク、足が速くなりたい」

 一つの生物が神様にお願いしました。

「よかろう、えいっ」

 神様が生物に指を差すとみるみるうちに形と色が変わっていきます。

「オマエは、足が速い生物になった。名前は、チーターだ。ここのサバンナへと行くがよい」

「はーい」

 チーターはさっそうとサバンナへと向かいました。

「よし、次じゃ」

「大きくなりたい」

「ゾウと名乗るがよい」

「身長が高くなりたい」

「キリンと名乗るがよい」

「耳が良く聞こえるように」

「うさぎじゃ」

 どんどん、オモチのような生物たちは才能が与えられて、地球へと移動していきます。
 しかし、最後の生物が一言もしゃべらず、考え込んでいました。

「どうした、最後のモノよ。そちはまだ才能が決まらんのか?」

「はい・・・どれもステキで、いいなと思ったらもう取られてしまっていました」

 生物は元は一つ。
 同じようなことを考えるけれど、生まれた順番は違ったので、結果その子が残ってしまいました。

「うーん、まだ迷っているのか」

「はい」

 神様も困ってしまいました。
 なぜなら、いっぱいの生物たちにありとあらゆる才能を渡してしまって、才能のアイディアも全然浮かばなかったからです。

「あっ、そうじゃ」

 しかし、神様はひらめきました。

「悩んでいるなら、ひとまず地上におりなさい。お前にはあとから選ばせてあげよう」

「本当ですか、やったぁ。残っていて良かった」

 また、神様が考えました。
 それは不公平になってしまうかもしれない。

「こうしよう、お前は何にでもなれる。けれど、努力をしないとなれない才能じゃ」

 そうして、最後に残った生物は人間として、神と同じ姿を手に入れ、頑張り次第で何にでもなれる才能を手に入れました。人間の子孫はたくさん増え、努力家はその才能を活かし、努力できない人は動物たちや才能を手に入れた人たちを羨ましがりました。

 努力できない人たちは思います。
 才能をしっかり選んでおくべきだった。
 今からでも遅くないから早く才能を選んでしまおうと。


 そんな人間が神様は一番面白く感じて、その行方を観察しています。
 人類が選ぶ「才能」は、与えられるのでしょうか、それとも、見つけられるでしょうか。
 それは神様もわかりません。

 おしまい。


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