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23 裏切りの前夜祭

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 もちろん葬儀には出た。

 私は後ろ指を指されることも無かったと思う。
 一部の人がアドルド王子に不満を漏らしているのを耳にしたけれど、ネイアス国王の崩御と一応国から民への支援物資の提供もあったし、そんなことをすれば名君ネイアス国王が悲しむのをわかっていたのだろう、そんな不満をもらす人は本当にごくわずかだった。

 でも、アドルド王子は旅に出た。ネイアス国王は成長のためと言っていたけれど、贖罪でもあると思っている。私は贖罪をすることなく、数か月引きこもったままだ。国に返ってきた私は今まで貯蓄してきたお金で引きこもっていた。

「結婚しよう、メーテル」

「・・・」

 ようやく仕事が一段落したユリウスが私にプロポーズしてきた。

「アプローチが先じゃないの・・・?」

「メーテルも好きだって言ってくれたし・・・僕のことも十分にわかってくれたと思ったけれど、不十分だったかい?」

「それは・・・」

 もう十二分にわかっている。でも・・・

「私が奥さんになったら、ユリウスの・・・ユリウス国王の評価が下がるよ?」

「ユリウスでいいよ。というか、ユリウスって呼んで欲しいな」

 ちょっと、困りながら笑うユリウス。

「それに僕はそうは思わない」

「そんなことないわよ、私はみんなを飢饉に陥れた張本人だもの」

 自分の欲のため、言い逃れはできない。

「ねぇ、メーテル」

 ユリウスは私の手を握る。

「君は言ってくれたよ?嫌いなところがあるけど、好きだって。みんなだってそうさ、僕が大臣の頃に君と一緒に仕事をした時、君は頑張っていたし、みんながそれを口々に言っていたよ?一回の失敗くらい大丈夫さ」

「規模が違うもん。会ったことない人もいるもん」

「とりあえず、お城には来てほしいな?ダメかな?」

 ユリウスは忙しくなった。それなのに時間を作って私に会いに来ているけれど、その移動の時間さえ惜しい。本当ならば、妻としてユリウスを支えたいのに、私の中のヘタレが行動を止めている。

「・・・わかったわ」

 ユリウスはニコっと笑った。



「騙されたっ!!!!」




「はいはいっ、綺麗になりましょうねっ!!!」

 メイドさんたちがあっという間に私を最高に綺麗にしてくれる。
 純白のドレスはどう見たって、花嫁衣裳以外の何物でもない。

「うん、綺麗だ」

 嬉しそうにユリウスが喜ぶ。いつもどおりの余裕のある笑顔。いつもは安心感を与えてくれるその笑顔がムカついた。

「ムリムリムリ、なんで、今日結婚式で、先に国民にお披露目なのよ!!」

「今日しか時間がなくってさ、ごめんね」

 惚れた弱みに付け込まれてる気がするけど、これだけは無理。絶対無理。
 私が逃げようとする。
 私はスカートを捲し上げて歩いて行こうとする。

 あっ

 ただ、いつもよりも長いスカートに、高いヒールで転びそうになる。

 バサッ

「ほらっ、危ないよ」

 私はユリウスに支えられる。
 でも、お礼なんか言いたくない気分だ。
 困った顔をしながら笑っていたユリウスだったけれど、良いことを思いついた顔をする。

(嫌な予感・・・)

「よいっしょっ」

 私の足が宙に浮く。

「きゃっ」

 私はユリウスにお姫様抱っこをされてしまった。
 私は死にかけたあの日を思い出した。あの日、私は生まれ変わった。
 そして、今度は―――


 
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