23 / 25
23 裏切りの前夜祭
しおりを挟む
もちろん葬儀には出た。
私は後ろ指を指されることも無かったと思う。
一部の人がアドルド王子に不満を漏らしているのを耳にしたけれど、ネイアス国王の崩御と一応国から民への支援物資の提供もあったし、そんなことをすれば名君ネイアス国王が悲しむのをわかっていたのだろう、そんな不満をもらす人は本当にごくわずかだった。
でも、アドルド王子は旅に出た。ネイアス国王は成長のためと言っていたけれど、贖罪でもあると思っている。私は贖罪をすることなく、数か月引きこもったままだ。国に返ってきた私は今まで貯蓄してきたお金で引きこもっていた。
「結婚しよう、メーテル」
「・・・」
ようやく仕事が一段落したユリウスが私にプロポーズしてきた。
「アプローチが先じゃないの・・・?」
「メーテルも好きだって言ってくれたし・・・僕のことも十分にわかってくれたと思ったけれど、不十分だったかい?」
「それは・・・」
もう十二分にわかっている。でも・・・
「私が奥さんになったら、ユリウスの・・・ユリウス国王の評価が下がるよ?」
「ユリウスでいいよ。というか、ユリウスって呼んで欲しいな」
ちょっと、困りながら笑うユリウス。
「それに僕はそうは思わない」
「そんなことないわよ、私はみんなを飢饉に陥れた張本人だもの」
自分の欲のため、言い逃れはできない。
「ねぇ、メーテル」
ユリウスは私の手を握る。
「君は言ってくれたよ?嫌いなところがあるけど、好きだって。みんなだってそうさ、僕が大臣の頃に君と一緒に仕事をした時、君は頑張っていたし、みんながそれを口々に言っていたよ?一回の失敗くらい大丈夫さ」
「規模が違うもん。会ったことない人もいるもん」
「とりあえず、お城には来てほしいな?ダメかな?」
ユリウスは忙しくなった。それなのに時間を作って私に会いに来ているけれど、その移動の時間さえ惜しい。本当ならば、妻としてユリウスを支えたいのに、私の中のヘタレが行動を止めている。
「・・・わかったわ」
ユリウスはニコっと笑った。
「騙されたっ!!!!」
「はいはいっ、綺麗になりましょうねっ!!!」
メイドさんたちがあっという間に私を最高に綺麗にしてくれる。
純白のドレスはどう見たって、花嫁衣裳以外の何物でもない。
「うん、綺麗だ」
嬉しそうにユリウスが喜ぶ。いつもどおりの余裕のある笑顔。いつもは安心感を与えてくれるその笑顔がムカついた。
「ムリムリムリ、なんで、今日結婚式で、先に国民にお披露目なのよ!!」
「今日しか時間がなくってさ、ごめんね」
惚れた弱みに付け込まれてる気がするけど、これだけは無理。絶対無理。
私が逃げようとする。
私はスカートを捲し上げて歩いて行こうとする。
あっ
ただ、いつもよりも長いスカートに、高いヒールで転びそうになる。
バサッ
「ほらっ、危ないよ」
私はユリウスに支えられる。
でも、お礼なんか言いたくない気分だ。
困った顔をしながら笑っていたユリウスだったけれど、良いことを思いついた顔をする。
(嫌な予感・・・)
「よいっしょっ」
私の足が宙に浮く。
「きゃっ」
私はユリウスにお姫様抱っこをされてしまった。
私は死にかけたあの日を思い出した。あの日、私は生まれ変わった。
そして、今度は―――
私は後ろ指を指されることも無かったと思う。
一部の人がアドルド王子に不満を漏らしているのを耳にしたけれど、ネイアス国王の崩御と一応国から民への支援物資の提供もあったし、そんなことをすれば名君ネイアス国王が悲しむのをわかっていたのだろう、そんな不満をもらす人は本当にごくわずかだった。
でも、アドルド王子は旅に出た。ネイアス国王は成長のためと言っていたけれど、贖罪でもあると思っている。私は贖罪をすることなく、数か月引きこもったままだ。国に返ってきた私は今まで貯蓄してきたお金で引きこもっていた。
「結婚しよう、メーテル」
「・・・」
ようやく仕事が一段落したユリウスが私にプロポーズしてきた。
「アプローチが先じゃないの・・・?」
「メーテルも好きだって言ってくれたし・・・僕のことも十分にわかってくれたと思ったけれど、不十分だったかい?」
「それは・・・」
もう十二分にわかっている。でも・・・
「私が奥さんになったら、ユリウスの・・・ユリウス国王の評価が下がるよ?」
「ユリウスでいいよ。というか、ユリウスって呼んで欲しいな」
ちょっと、困りながら笑うユリウス。
「それに僕はそうは思わない」
「そんなことないわよ、私はみんなを飢饉に陥れた張本人だもの」
自分の欲のため、言い逃れはできない。
「ねぇ、メーテル」
ユリウスは私の手を握る。
「君は言ってくれたよ?嫌いなところがあるけど、好きだって。みんなだってそうさ、僕が大臣の頃に君と一緒に仕事をした時、君は頑張っていたし、みんながそれを口々に言っていたよ?一回の失敗くらい大丈夫さ」
「規模が違うもん。会ったことない人もいるもん」
「とりあえず、お城には来てほしいな?ダメかな?」
ユリウスは忙しくなった。それなのに時間を作って私に会いに来ているけれど、その移動の時間さえ惜しい。本当ならば、妻としてユリウスを支えたいのに、私の中のヘタレが行動を止めている。
「・・・わかったわ」
ユリウスはニコっと笑った。
「騙されたっ!!!!」
「はいはいっ、綺麗になりましょうねっ!!!」
メイドさんたちがあっという間に私を最高に綺麗にしてくれる。
純白のドレスはどう見たって、花嫁衣裳以外の何物でもない。
「うん、綺麗だ」
嬉しそうにユリウスが喜ぶ。いつもどおりの余裕のある笑顔。いつもは安心感を与えてくれるその笑顔がムカついた。
「ムリムリムリ、なんで、今日結婚式で、先に国民にお披露目なのよ!!」
「今日しか時間がなくってさ、ごめんね」
惚れた弱みに付け込まれてる気がするけど、これだけは無理。絶対無理。
私が逃げようとする。
私はスカートを捲し上げて歩いて行こうとする。
あっ
ただ、いつもよりも長いスカートに、高いヒールで転びそうになる。
バサッ
「ほらっ、危ないよ」
私はユリウスに支えられる。
でも、お礼なんか言いたくない気分だ。
困った顔をしながら笑っていたユリウスだったけれど、良いことを思いついた顔をする。
(嫌な予感・・・)
「よいっしょっ」
私の足が宙に浮く。
「きゃっ」
私はユリウスにお姫様抱っこをされてしまった。
私は死にかけたあの日を思い出した。あの日、私は生まれ変わった。
そして、今度は―――
0
お気に入りに追加
1,853
あなたにおすすめの小説
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
帰還した聖女と王子の婚約破棄騒動
しがついつか
恋愛
聖女は激怒した。
国中の瘴気を中和する偉業を成し遂げた聖女を労うパーティで、王子が婚約破棄をしたからだ。
「あなた、婚約者がいたの?」
「あ、あぁ。だが、婚約は破棄するし…」
「最っ低!」
大好きな第一王子様、私の正体を知りたいですか? 本当に知りたいんですか?
サイコちゃん
恋愛
第一王子クライドは聖女アレクサンドラに婚約破棄を言い渡す。すると彼女はお腹にあなたの子がいると訴えた。しかしクライドは彼女と寝た覚えはない。狂言だと断じて、妹のカサンドラとの婚約を告げた。ショックを受けたアレクサンドラは消えてしまい、そのまま行方知れずとなる。その頃、クライドは我が儘なカサンドラを重たく感じていた。やがて新しい聖女レイラと恋に落ちた彼はカサンドラと別れることにする。その時、カサンドラが言った。「私……あなたに隠していたことがあるの……! 実は私の正体は……――」
【完結】なんで、あなたが王様になろうとしているのです?そんな方とはこっちから婚約破棄です。
西東友一
恋愛
現国王である私のお父様が病に伏せられました。
「はっはっはっ。いよいよ俺の出番だな。みなさま、心配なさるなっ!! ヴィクトリアと婚約関係にある、俺に任せろっ!!」
わたくしと婚約関係にあった貴族のネロ。
「婚約破棄ですわ」
「なっ!?」
「はぁ・・・っ」
わたくしの言いたいことが全くわからないようですね。
では、順を追ってご説明致しましょうか。
★★★
1万字をわずかに切るぐらいの量です。
R3.10.9に完結予定です。
ヴィクトリア女王やエリザベス女王とか好きです。
そして、主夫が大好きです!!
婚約破棄ざまぁの発展系かもしれませんし、後退系かもしれません。
婚約破棄の王道が好きな方は「箸休め」にお読みください。
追放された令嬢は英雄となって帰還する
影茸
恋愛
代々聖女を輩出して来た家系、リースブルク家。
だがその1人娘であるラストは聖女と認められるだけの才能が無く、彼女は冤罪を被せられ、婚約者である王子にも婚約破棄されて国を追放されることになる。
ーーー そしてその時彼女はその国で唯一自分を助けようとしてくれた青年に恋をした。
そしてそれから数年後、最強と呼ばれる魔女に弟子入りして英雄と呼ばれるようになったラストは、恋心を胸に国へと帰還する……
※この作品は最初のプロローグだけを現段階だけで短編として投稿する予定です!
その婚約破棄喜んで
空月 若葉
恋愛
婚約者のエスコートなしに卒業パーティーにいる私は不思議がられていた。けれどなんとなく気がついている人もこの中に何人かは居るだろう。
そして、私も知っている。これから私がどうなるのか。私の婚約者がどこにいるのか。知っているのはそれだけじゃないわ。私、知っているの。この世界の秘密を、ね。
注意…主人公がちょっと怖いかも(笑)
4話で完結します。短いです。の割に詰め込んだので、かなりめちゃくちゃで読みにくいかもしれません。もし改善できるところを見つけてくださった方がいれば、教えていただけると嬉しいです。
完結後、番外編を付け足しました。
カクヨムにも掲載しています。
「次点の聖女」
手嶋ゆき
恋愛
何でもかんでも中途半端。万年二番手。どんなに努力しても一位には決してなれない存在。
私は「次点の聖女」と呼ばれていた。
約一万文字強で完結します。
小説家になろう様にも掲載しています。
聖水を作り続ける聖女 〜 婚約破棄しておきながら、今さら欲しいと言われても困ります!〜
手嶋ゆき
恋愛
「ユリエ!! お前との婚約は破棄だ! 今すぐこの国から出て行け!」
バッド王太子殿下に突然婚約破棄されたユリエ。
さらにユリエの妹が、追い打ちをかける。
窮地に立たされるユリエだったが、彼女を救おうと抱きかかえる者がいた——。
※一万文字以内の短編です。
※小説家になろう様など他サイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる