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15 好きなところ

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「メーテル・・・?」

「ユリウスの意気地なし!!」

 私は自分でもびっくりしたけれど、ユリウスにビンタしていた。

「会ってあげなよ、お父さんに。最期かもしれないんだよっ!?それなのに、なんなのユリウスらしくないっ!!」

「僕らしさって・・・なんだよ?なんなんだよっ!!?」

 再び叫ぶユリウス。

「それがユリウスなんだね・・・」

 私がそう言うと傷ついた顔をするユリウス。

「そうさ、僕は・・・醜くて、臆病で・・・情けない男さ・・・」

 目を背けながら、自己嫌悪に陥っているユリウス。



「でも、好き。私はユリウスが大好きっ」



(あー恥ずかしいっ)

 告白するなら、ロマンチックな雰囲気の中したかった。
 最低でも、こんな初めて会うおじさん3人の前でなんかするつもりは全くなかった。
 けれど、どうやら私の理性は感情に白旗を上げているようだ。じゃなきゃ、ビンタだってしないし、告白だってできないもん。

 でも、おじさんたちのリアクションなんて私には見れない。
 自らの意志で自分史上最も大胆?なことを言ったのもあるけれど、視界は極端に狭くなっていて、驚いて唖然としているユリウスの顔しか見れない。

(でも・・・人を好きになるっていいな)

 アドルド王子には全く感じなかった高揚感が今の私にはある。すべては目の前で苦しんでいるユリウスのおかげだ。

「さっき怒鳴られて怖かったんだから、私。私、怒鳴る人嫌い」

 ちょっと、怒った顔をするとユリウスが再び目を逸らす。
 ただ、私はすでにかなり彼に近寄っていたので彼の目線もほとんど逃げ場はなかった。

「こんな風にユリウスがうじうじするなんて私・・・思ってなかった。出会った時から誠実で、理知的で気配りが上手で、はにかんだ顔が少し可愛くて・・・。それに私がどん底にいる時にすぐに助けてくれた。まるで、童話の王子様のように」

 私は叩いてしまった頬を優しく撫でる。
 
「きっと私は今の貴方は嫌い。ううん、嫌いというかどうにかしてあげたいって気持ちなのかもしれないけれど、こんなにもやもやしていても、私はちーっとも貴方から離れたいとは思わない。ねぇ・・・ユリウス。本当にお父さんと会わなくて・・・それでいいの?」

 きっとお父さんはユリウスの心の深くて柔らかい部分を占めているのだろう。ちょっとだけ、そんなお父さん・・・いや、国王様に嫉妬してしまう。

(あっ、興奮しすぎてお父さんとか呼んでたけどっ、国王様じゃないのっ!!私のばかあ~)

 言いたいことを言い切ってすっきりしたら、自分の偉そうな態度が急に恥ずかしくなっていった。


 
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