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13 狂王子

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「王子・・・ユリウスが・・・?」

 アドルド王子に裏切られたのが私の心に根深くあるのか、私はなんだかとても裏切られた気分になった。だって、王族ばかりが私を騙してくるのだもの。

(別に・・・ユリウスが王族だっていいじゃない。何が問題あるのよ、私)

 そう理性は自分に言い聞かせるのだけれど、心が全くなっとくしないようで頭がくらくらする。
 そんな私を見て、我に返った様子のユリウスが近づいてきた。

「違うんだ・・・メーテル。聞いてくれ」

「えぇ、わかっている、わかっているわ・・・ユリウス。でも、ちょっと、うん、ごめんなさい。気持ちの整理が上手く行っていなくて・・・」

 私はユリウスを手で制した。きっとユリウスは善意で気分が悪そうな私の背中をさすってくれようとしてくれたのだろうけど、今それをやられてしまうと、あんなに好きだったユリウスを嫌いになってしまう恐れがあると思うくらい、近寄ってほしくなかった。

「・・・」

 ユリウスが悲しそうな顔をして立ちすくんでいて、私も胸が切なくなりつつも、ヒートアップしそうな頭を回転させて状況整理・・・いや、心の整理を行っていた。

「ユリウス様、ご準備を」

 ダグラスは、今私とユリウスに不協和音が流れているのも見越した上で、力強くユリウスに伝えた。

(王が危篤で・・・ユリウスが呼ばれて・・・王子で、アドルド王子と乳母兄弟ってことは・・・)

「アドルド王子と異母兄弟・・・ってこと?」

 目は口ほどにものを言う。
 ユリウスがその言葉を受け止めるように下を向いたので理解した。
 ユリウスとアドルド王子は他人などでは無く、本当の兄弟だったのだ。私が王宮に行ってもそんな素振りは3人とも見せていなかったのに・・・王族が自分の魔力目当てにぐるになってきているんじゃないかと不安になった。
 私は後ずさりをする。

「待って・・・」

 ユリウスが見捨てられそうな子どものような表情をして私を呼び止める。

「いや・・・来ないでっ!!」

 私の命を、心を救ってくれたユリウス。
 彼が困っていれば助けになろうと思っていた・・・だけど、その時の私にはその手を握ることはできなかった。


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