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「・・・でも、師匠。自分は絶対、湖の乙女ヴィヴィアンをテイムするんだって」

 サクラが意を決して質問すると、ガイはフッと笑って遠くを見る。

「あぁ・・・そんなことを言ったこともあったけな・・・」

 ガイの顔は清々しくもあり、寂しげだった。サクラはそれを痛々しく感じた。

「ねぇ、師匠。私がヴィヴィアンを使役して連れてきてあげるわ」

 ガイがびくっとして、「マジか」というような顔で口を真一文字にして、目をパッチリ見開きサクラを見る。

「ねっ、そうしましょ。だから、飛び切り成長力が高い1匹をちょうだいっ」

 老体のガイから2体もモンスターを連れていくことなんかできないと思ったサクラ。両手を合わせて、首を傾けてお願いをするサクラはいい笑顔をしていた。それを見て、ガイの寂しさもどこかへ行ってしまった。

「ふっ、交渉が上手くなったな、サクラ。昔はうじうじした泣き虫だったのになぁ~?」

「あ~ひどい、師匠」

「ふははっ」

 照れ臭さを隠すように厭味ったらしくガイはサクラに言いながら、立ち上がり裏口にあるファームの方向に杖で示す。それを見て、サクラがガイの隣へと向かって肩を貸すと、ガイは嬉しそうに弟子の好意に甘えた。



「さて、どいつがいい。好きなのを選べ」

 ガイが扉を開けると、部屋がとても暗かったがゆえに、とても眩しくてサクラは思わず険しい顔をする。けれど、
目が慣れると、懐かしい景色が広がっており、

 QUEEEEEEEE

 UGAAAAAAA

 PIEEEEEEEEE

 モンスター達が襲い掛かるんじゃないかというくらい全力で、久しぶりに会ったサクラの元へとやってくる。サクラが師匠の元から離れて大分大人っぽくなったサクラは外見も変わったし、香水をつけるようになったけれど、モンスター達はよく世話をしてくれたサクラのことを覚えていた。
 
「うわ~~、みんな元気してた?」

 サクラは朧げな記憶ながらも、会った瞬間モンスター達のことを思い出し、とても温かい気持ちになった。サクラが腰を落とすと、ボールのように丸くなったマルウサギたちが彼女の元へと集まり、一匹が彼女の太ももに乗る。サクラはモコモコのマルウサギを撫でると、

「あぁん、尊い・・・っ」

 悦の入ったサクラは、天を仰ぎながら目を閉じ、その感触を十二分に楽しむ。

「・・・尊い?」

 ガイはその言葉の使い方が意味がわからず首を傾げると、サクラは慌ててガイに愛想笑いをする。

(いけない、いけない・・・前世の癖が出てしまった)

「きゃっ」

 サクラが自制心を高めようとしていると、頬を大きな舌でベロンっと舐められる。

「もーーーっ、止めてよ・・・ペロちゃん」

 UUMEEEEEEEEEE

  見た目は毛の長い大きな白い牛。しかし、牛は牛でも雪国に時折現れる牝牛の幻獣、アウズンブラ。角はなく、舌が長くて、とっても塩水が大好きな種族であり、舐められると美肌効果があり、彼女から出るミルクは滋養供給の効果がある。特にここにいる「ペロちゃん」と呼んでいるアウズンブラはいたずらっ子で、サクラの汗が大好きなのだ。自分の口の周りをもう一度舐めながら、とても喜んで嬉しそうな顔をしていた。

(うーん・・・ちょっと汚くも感じるけれど、尊いっ)

 少し疲れてやつれていたサクラの肌はプリップリのモッチモチになっており、サクラは自分の右側の頬が綺麗になっているのを感じながら、悦に入っていた。
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