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「ハハハッ、どうだ、王妃だ。ヴィクトリア王妃。うん、懐かしい響きだろう?」

 窓を開けて新鮮な空気が入ってきたら、この嫌な気持ちもすっきりすると思いましたし、レオナード王子も頭がすっきりして自分の言っている愚かさを理解すると思ったのですが、無駄なようでした、残念です。

「なーに、最初はまぁ、大変かもしれない・・・いや、王宮での暮らしは楽しいぞ?」

 私は元大臣に頭を下げました。レオナード王子の言葉にもう二度と騙されるつもりはありませんし、みすぼらしい格好のレオナード王子を信用するはずはなかったですが、財政破綻や暴動、そして逃亡したことを知っていたおかげで、この茶番がよりわかりやすく見ることができます。

「結構です。お引き取り下さい。デイジー、衛兵をお呼びして」

「なっ」

 レオナード王子はデイジーを引き留めようとするけれど、足がもつれ、デイジーは捕まることなく、急いで衛兵を呼びに行った。

「あぁ、そういうことか。お前がヴィクトリアに告げ口を・・・っ」

 レオナード王子が元大臣の胸ぐらを掴み壁に押し付けました。
 けれど、衛兵の方々が近くにいたようで、デイジーと一緒に来た衛兵がレオナード王子を捕まえて、

「いってっ」

 床に抑えつけました。

「ありがとうございます」

 私がそう言うと、衛兵の方々はニコっと笑ってくださいました。

「貴様ら、俺を誰だと思っている。レオナード王子だぞ」

「では、母国へお帰りください」

「ぐっ、それは・・・・・・頼む、ヴィクトリア。俺を匿ってくれ」

「レオナード王子」

「なっなんだ」

 私が声を掛けると、良い答えが返ってくると思って嬉しそうな顔をする王子。ですが・・・

「入国手続きをなさいましたか?」

「ああっ?」

「どうやらされていらっしゃらないようですね。この国では入国審査がございます。どうやって入って来たか存じませんが、この国に仇なすものは出ていっていただくようになります」

「おっ、おまえっ。まさか恨んでるのか? なぁ、恨んでるなら、詫びよう」

 詫びようというのが上から・・・まぁ、仕方ありませんか。こうなってしまっても王子ですから。

「恨んではいますが、それとこれは別です。では、こう聞きましょう、レオナード王子。貴方様はこの国でどうお役に立ちますか?」

「おっ、俺には人脈が・・・・・・」

「かなり、その人脈の方々に借金があるのでは?」

「王子としての身分が・・・・・・そう、国がある」

「では、お国にお帰りなさい。きっと、貴方様は処刑されるでしょう」

 あぁ、私に政治のイロハを教えてくださった大臣達もこのお方に処刑されました。皆、正義感があり良き方々だったのに亡くなり、その張本人は生きているというのは、悔しい限りです。

「レオナード王子、いいえ。レオナードっ。この国から出ていきなさいっ!!」

 私は外を指さしました。すると、衛兵の方々がレオナード王子を連れて行きました。

「はっ、放せ、俺は、レオナード、レオナード王子だぞっ!! 俺は、偉いんだぁっ!!」

「本当に偉い人は自分のことを偉いとは言わないかと思いますよ。言うのは、子どもと・・・・・・」

 そうして、私の黒歴史は幕を閉じました。



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