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 徹夜だけはしないようにと思っておりました。けれど、レオナード王子に冷たくされた私を、朝日が優しく照らしてきました。

「さてと・・・」

 私は使用人に頼んで、大臣たちを招集しました。忙しい中でも皆の負担にならないようスケジュールを優先してきた私からの緊急招集に、皆不思議がりながらも全員集合してくださいました。

「皆様、お休みのところ申し訳ありません。急な話ですがこの度私、ヴィクトリアは昨日レオナード王子と離縁させていただくことになり、本日ここを去らなくてはなりません」

 私がそう言うと、

「そんなっ」

「この国は終わりだぁ」

 皆がざわつきました。

「本当に無責任で申し訳ないと思っております。せめてもと思いましてここに現状を書き残しました。複写できれば良かったのですが時間がなく、原本のみになります。こちらを王子に・・・」

 渡す、と言おうとすると、

「王子になんて、駄目に決まってるじゃないですか。私たちに見せてください」

 大臣たちがせがんできたので書類を渡しました。すると、皆が手分けして書類を確認し出しました。王子と違って大臣たちは仕事熱心であることにホッとした私は、

「もし、わからないことがあれば私に聞きに来てくだ・・・」

「ならぬ」

 皆が私の言葉を遮った男性を見る。レオナード王子だった。

「王家でないもの、大臣でも、名家でもないお前が国政に口を出せると思っているのか?」

 レオナード王子の目は鋭く、目の下にはクマができていて私と同じように一睡もしていない様子でした。ただ、違うところといえば、引き継ぎを急いでやらなければならないという明確な目標があった私と違って、王子の目は猜疑心に満ち溢れ澱んでいました。きっと、私が復讐するに違いないと思っているのでしょう。

 そんなこと、頑張っている大臣たちや、守るべき国民のためにするはずがありませんのに。

「こんなものっ! こうだっ!!」

 呆気に取られた大臣たちから私の引き継ぎ書を次々と奪い取り、あろうことかちぎってバラバラの粉々にレオナード王子。

「やっ、やめて。やめてくださいっ」

「ふっ。可愛げだけが取り柄だったお前が、国政にまで手を出してっ。お前など国外追放だっ!さっさと出て行け!!」

 王子の声が朝の王宮に響き渡りました。皆が黙り込む中1人の大臣が、

「・・・王子。それはあんまりでは?」

 と恐る恐る諌言するけれど、

「こいつがいると、ナターシャと今日中に式を挙げられぬではないか」

 レオナード王子は何食わぬ顔でその大臣にそう告げました。

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