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5 レオン目線

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(どこだ、ナナリー・・・・・・どこなんだ)

 婚約破棄だと言ったナナリー。
 いつも元気で天真爛漫な彼女が俺を睨んで、そして涙を流していた。そんな姿が衝撃的で、さらに「婚約破棄」なんて言葉が衝撃的過ぎて、ショックで固まってしまった俺。気持ちと情報の整理をするのに、時間がかかってしまった。

 だって、ナナリーを愛しているから。

 心の整理できたら、俺はすぐにナナリーを追うべきだったという結論に達した。でも、そんなこと今更だ。だって、過去は変えられないのだから。やり直しが効くのであれば俺はすぐさま彼女を追いかけて彼女の震えていた小さな背中を抱きしめて愛を叫んだだろう。

(いや、お前はできないだろう?)

 冷静な俺が自分に再び問いかけてきた。

(うるさい、黙れ)

(いいや、何度もチャンスがあったのに、お前はしてこなかった。だから、何度やってもお前は成長しないのさ)

(黙れっ)

(いい加減。認めよ? お前とナナリーは結ばれない運命。今日、婚約破棄されるのだって、ずーっと昔から知っていたし、これから・・・)

「どこだっ!!!」

 大声を出して嫌な自分を振り払おうとする。周りの目も集めてしまったが、これ以上嫌なことを考えたくなかったし、早くナナリーに会いたかった。

(知ってんだろ? 相棒。あの喫茶店だって・・・)

「・・・くそっ」

 俺は喫茶店を目指した。
 すでに喫茶店に足は向かっていたので、すぐに到着した。

「いらっしゃい」

 扉を開けると、マスターが挨拶してきたが、俺は返事もせずにナナリーを探した。

(いた・・・)

 一目でナナリーを見つけることができた。
 そこでは恐れていたことが起こっていた。

 ナナリーは楽しそうに商人風の男と話をしていた。

「ナナリー様のようなお美しい方に似合うと思うんですよ」

「まぁ、きれい・・・」

 男がカバンから出した布は光沢があるように見えて確かに立派な代物だった。

「おいくらですか?」

「いいえ、これはプレゼントいたします」

「そんなっ・・・こんな豪華な物。大丈夫です、適正価格を教えていただければきちんと・・・」

 テーブルに置いてあったナナリーの手に男が手を重ねていた。

「僕じゃ・・・駄目ですか。こんなに胸がときめいたのはナナリー様が初めてなんです」

「・・・ナダルさん、まずはお友達からではいかがでしょうか?」

「僕は・・・本気なんです。ちゃんとナナリー様には異性として僕を見て欲しい。必ず、僕が幸せにします」

「でも・・・お父様が・・・お許しならないと・・・」

「では、ナナリー様のお父様を説得できれば、結婚していただけますね?」

 喜んだ顔をする男。

(何も・・・知らないくせに・・・)

 俺は二人の元へ怒りを抑えながら近づいた。
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