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本編

44話 デートへの道

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 私は一歩を踏み出した。
 
「・・・んっ」

 太陽の眩しい光に私は私は目をしかめる。
 次第にその明るさに目が慣れていくと、広がった世界があった。

 いつもと変りない世界。
 だけど、自然と町、老若男女の住人たちが笑顔で暮らしている私の大好きな街並み。

「よしっ、いこうっ」

 部屋の中でうじうじしていたのが、馬鹿らしくなるくらいの天気の良さ。
 私のうじうじした気持ちなんて、汗と共に蒸発して消えて行ってしまう感じ。

「シャーロット様、こんにちは」

「こんにちは」

 子どもたちが、声をかけてくれるので、手を振る。

「あれっ、シャーロット様、今日は物凄い美人じゃないね」

「おっ、どれどれ」

「あんたは、いいんだよっ!」

 お肉屋さんのミートおばちゃんとおじちゃんが仲良さそうに今日もケンカしている。
 今日も変わりない風景なのに、こんなに心躍っているのは・・・やっぱりそういうことなのだろう。
 私はこんなにも気持ちを高揚させてくれるあの人の元へと少しずつ足を進める。

(喜んでくれるかな・・・って、喜ぶって何?何様よ、私っ)

 どうあっても私の心は来賓の町案内ではなく、『デート』の気分になっている。

(これで、クリスがゴウさんやミツルギさん。ルシウスくんを連れていたら・・・私怒っちゃうかも)

「あっ」

 サンサンと輝く太陽。
 その光を反射してキラキラ輝く噴水の水。
 その近くで、本を読み涼し気な顔を見ているクリス。

(よし・・・っ)

 私はしれっと、クリスの横に座る。
 集中しているクリスはまったく気づかない。
 その横顔が素敵だ。

 私より背の高いクリスの陰にそっと隠れる。
 風も太陽の光からも私を守ってくれている。
 そう、クリスは存在するだけで私を守ってくれるのだ。

(次のページになったら・・・)
 
 私は声をかけるタイミングを失っていた。 
 隣にいる完璧な青年。
 一片の隙もない彼に声をかけるのをためらってしまう。

(このままでもいいけど、どうしよう)

 クリスの隣にいれるだけでも幸せだけれど、今日は私がクリスを幸せにしようと計画していた日なんだから、声をかけなくてはならない。

(でも、クリスだって、楽しみにしてるって言ったのに、私よりも小説に夢中ってどういうことよっ)

 だんだん腹が立ってくる。

「クリ・・・」

「さて・・・」

 私が声を掛けようとすると、クリスはパンッと本を閉じて、私を見る。

「じゃあ、行こうかシャーロット」

「んんんんっ?」

 立ち上がるクリス。
 私は意味が分からなくて、座りながら固まってしまった・・・が、理解した。クリスは私が隣に座っているのに気づきながら、わざと気づかない振りをして座っていたのだ。

「はいっ、シャーロット」

 文句の一つ・・・いいや、文句を言いまくってやろうと思ったけれど、何も言わずにクリスの手を取った。

「ん、どうかしたかい?」

「ううん、なんでもないわ」

 私は余裕の笑みで返事をした。
 だって、平然を装っているクリスだって、耳は真っ赤になっているのを私は見つけたから。

 キキョウさんもこっそり教えてくれた。
 クリスは女性とデートすらしたことがない、ってことを。
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