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本編
34話 主客未分の感覚
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「やぁ、シャーロット。挨拶が遅れて申し訳ない」
近づいてきたクリスは手を軽く振って、私に合図する。
いつもならクリス王子の優しい声は私の心に安らぎをもたらしてくれたけれど、今はドキドキさせる。
(お酒のせい・・・じゃない。いいかげん、目を逸らすな!私っ!!)
私は自分の高鳴る気持ちと恥じらいを持った少女の心を自分で叱って、気持ちを整える。
「いいえ、クリス王子。本来であれば私の方から出向かわなければならないのに、こうして、足を運んでありがとうございます」
「君は本当に優しいね、シャーロット」
「滅相もございません」
「とりあえず、乾杯しようか」
私が頭を下げようとすると、優しくクリス王子が声をかけて止めさせる。
「・・・えぇ、では」
私はクリス王子の品がありながらも、相手に気を遣わせない振る舞いに、なんとも言えない気持ちになりながら、グラスを目の前に掲げる。
チンッ
クリス王子のグラスと私のグラスは綺麗なガラスの音を奏で、自然と彼と私は笑顔がこぼれた。
「怪我は大丈夫ですか?」
「大丈夫さ。それよりもここは良いところだね」
私が謝ろうとしたのに気づいたのだろうか。クリス王子はさらっと回答して周りを見渡した。
「そう言っていただいてなにより・・・」
「うぅっ」
クリスが急に苦しそうな顔をして、身体を丸める。
「大丈夫ですかっ!?やっぱり、傷がまだっ!?」
「・・・痛いっ」
「えっ、えっ、背中ですか?」
「・・・が」
「どこっ?」
「心が・・・痛い」
私の思考と気遣いの気持ちがピタっと停止する。
「・・んんっ?」
「シャーロットに壁を作られて心が痛いんだっ」
いたづらに笑うクリス王子。
「もうっ!!」
私は思わず、背中を叩いてしまう。
「あああっ!!」
今度は本当にクリス王子が痛そうにする。
「あぁ、ごめんなさいっ!!傷口を!!」
「・・・大丈夫だよ。でも、やっぱり君はそれがいい」
まだ痛そうだったけれど、嬉しそうに笑うクリス王子。
(お父様、お母様・・・不躾な娘でごめんなさい)
「もう、そうやってからかって・・・っ」
私は照れながら、そして、少し悪いことをしている罪悪感というか、スリルというかでドキドキしながら、敬語を止めてみる。
「本当さ。君の無邪気さは人を癒す」
私を見て、もっと嬉しそうにするクリス王子。
その顔を見ると私も嬉しいんだけれど、恥ずかしいし、なんだかこそばゆい。
「それって、私が子どもっぽいってこと?・・・失礼しちゃうわ」
私は怒っているわけじゃないけれど、頬を膨らませてそっぽを向いてみる。
「そうじゃないさ、君はこんなに大人っぽい魅力を兼ね備えた女性なのだから」
ふり返ると、私の瞳を愛でるように覗き込むクリス・・・。
私の胸は高鳴り、思考は停止して、私の隠したい気持ちまでその瞳に覗き込まれて、感情はこのまま彼の瞳に吸い込まれてしまいそうな気がしてくる。
自分が自分だけの存在じゃなくなる感覚。
人に自分を委ねるなんて、恥ずかしいし、怖くてしかたない。
けれど、クリスなら・・・私は
近づいてきたクリスは手を軽く振って、私に合図する。
いつもならクリス王子の優しい声は私の心に安らぎをもたらしてくれたけれど、今はドキドキさせる。
(お酒のせい・・・じゃない。いいかげん、目を逸らすな!私っ!!)
私は自分の高鳴る気持ちと恥じらいを持った少女の心を自分で叱って、気持ちを整える。
「いいえ、クリス王子。本来であれば私の方から出向かわなければならないのに、こうして、足を運んでありがとうございます」
「君は本当に優しいね、シャーロット」
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「とりあえず、乾杯しようか」
私が頭を下げようとすると、優しくクリス王子が声をかけて止めさせる。
「・・・えぇ、では」
私はクリス王子の品がありながらも、相手に気を遣わせない振る舞いに、なんとも言えない気持ちになりながら、グラスを目の前に掲げる。
チンッ
クリス王子のグラスと私のグラスは綺麗なガラスの音を奏で、自然と彼と私は笑顔がこぼれた。
「怪我は大丈夫ですか?」
「大丈夫さ。それよりもここは良いところだね」
私が謝ろうとしたのに気づいたのだろうか。クリス王子はさらっと回答して周りを見渡した。
「そう言っていただいてなにより・・・」
「うぅっ」
クリスが急に苦しそうな顔をして、身体を丸める。
「大丈夫ですかっ!?やっぱり、傷がまだっ!?」
「・・・痛いっ」
「えっ、えっ、背中ですか?」
「・・・が」
「どこっ?」
「心が・・・痛い」
私の思考と気遣いの気持ちがピタっと停止する。
「・・んんっ?」
「シャーロットに壁を作られて心が痛いんだっ」
いたづらに笑うクリス王子。
「もうっ!!」
私は思わず、背中を叩いてしまう。
「あああっ!!」
今度は本当にクリス王子が痛そうにする。
「あぁ、ごめんなさいっ!!傷口を!!」
「・・・大丈夫だよ。でも、やっぱり君はそれがいい」
まだ痛そうだったけれど、嬉しそうに笑うクリス王子。
(お父様、お母様・・・不躾な娘でごめんなさい)
「もう、そうやってからかって・・・っ」
私は照れながら、そして、少し悪いことをしている罪悪感というか、スリルというかでドキドキしながら、敬語を止めてみる。
「本当さ。君の無邪気さは人を癒す」
私を見て、もっと嬉しそうにするクリス王子。
その顔を見ると私も嬉しいんだけれど、恥ずかしいし、なんだかこそばゆい。
「それって、私が子どもっぽいってこと?・・・失礼しちゃうわ」
私は怒っているわけじゃないけれど、頬を膨らませてそっぽを向いてみる。
「そうじゃないさ、君はこんなに大人っぽい魅力を兼ね備えた女性なのだから」
ふり返ると、私の瞳を愛でるように覗き込むクリス・・・。
私の胸は高鳴り、思考は停止して、私の隠したい気持ちまでその瞳に覗き込まれて、感情はこのまま彼の瞳に吸い込まれてしまいそうな気がしてくる。
自分が自分だけの存在じゃなくなる感覚。
人に自分を委ねるなんて、恥ずかしいし、怖くてしかたない。
けれど、クリスなら・・・私は
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