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本編
32話 優しいおじいちゃん
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「ふ・・・、ふんっ」
ルシウスくんの声に、私は恐る恐る顔をあげる。
ルシウスくんはさっきのような殺気のこもった目ではなく、少し動揺しながら、バツの悪そうな顔をしていた。
そんな姿を見て、私も困惑してしまった。
「言葉は時に真剣よりも鋭く、人を傷つけるんじゃよ、ルシウス」
そんな気まずい雰囲気の中、優しいおじいちゃんの声が聞こえたので、私とルシウスくんが声の方向を見る。そこにはシルヴァさんが頬を赤らめお酒を美味しそうに飲みながらやってきた。
ルシウスくんはシルヴァさんの言葉に、さらにバツの悪そうな顔をして、シルヴァさんのいない方を向く。
「ふん・・・っ」
僕は悪くない、ルシウスくんはそんな顔をしていた。
「ふぉっふぉっふぉっ、申し訳ないですわい。シャーロット様」
優しい顔でシルヴァさんが私の顔色を伺ってくれる。
「ルシウスは経験が浅いがゆえに、人との距離感も未熟でのう。自分が理解し始めた感情を人にぶつけた時に、相手がどう感じるか、まだわからないんじゃ」
「・・・うっせっ」
優しくシルヴァさんがルシウスくんのサラサラした銀髪を撫でる。
「ふぉっふぉっふぉ。シャーロット様」
「はい」
一貫して優しい顔、優しい声のシルヴァさん。
「きっと、気にせんでもええ、と言っても、心お優しいシャーロット様は責任を感じてしまうじゃろうて、わしも本音を申し上げますれば・・・ここへ来るのにはちぃーっと疑義があり申した」
「・・・はい」
シルヴァさんのおかげで場は和やかになっていたし、私も大分落ち着いてきたけれど、心臓は速い鼓動を打っている。でも、私はすべての結果を受け入れたい。受け入れるんだ。
「でも、ここの酒は・・・本当に美味い」
シルヴァさんはお酒を見る。
「ありがとうございます」
私はまだ何か言われると思っていたので、少し肩透かしに合った気分だったけれど、お礼を伝える。
「それにの、ここの人たちは本当にいい人ばかりじゃ。それは・・・貴女様も含めてじゃ」
しわしわの温かい手が私の両手を優しく包み込む。
「貴女様に会えて・・・本当に、良かったぁ・・・」
シルヴァさんの言葉に思わずうるっと来てしまった。
「そんな・・・私なんて・・・」
「ふぉっふぉっふぉっふぉ。それでいい。そのままの貴女様でいらしてくだされ」
シルヴァさんの言葉の意味なんてよくわからなかった。
でも、なんだろう、この認められた安心感は。
自分を苦しめるとげとげしい罪悪感が温められて、蒸発して消えていく感じがした。
「さてさて、まだまだわしは美酒を楽しむとするかのう。今後ともよろしく頼みますぞ、シャーロット様」
そう言って、シルヴァさんは会釈をして、後ろを向く。
「それ、いくぞ、ルシウス」
ルシウスくんも口惜しそうな顔をしながら、後ろを向こうとして、
「こ・・・っ」
「こ?」
「今度からは気を付けろよな!!」
照れ臭そうにシルヴァさんと歩いて行くルシウスくん。
シルヴァさんはルシウスくんの不器用ながらも私を気遣った言葉を聞いて、嬉しそうにルシウスくんの頭を撫でた。少し嫌そうな顔をしていたルシウスくんだったけれど、まんざらじゃなさそうにシルヴァさんと一緒に歩いて行った。
ルシウスくんの声に、私は恐る恐る顔をあげる。
ルシウスくんはさっきのような殺気のこもった目ではなく、少し動揺しながら、バツの悪そうな顔をしていた。
そんな姿を見て、私も困惑してしまった。
「言葉は時に真剣よりも鋭く、人を傷つけるんじゃよ、ルシウス」
そんな気まずい雰囲気の中、優しいおじいちゃんの声が聞こえたので、私とルシウスくんが声の方向を見る。そこにはシルヴァさんが頬を赤らめお酒を美味しそうに飲みながらやってきた。
ルシウスくんはシルヴァさんの言葉に、さらにバツの悪そうな顔をして、シルヴァさんのいない方を向く。
「ふん・・・っ」
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「ふぉっふぉっふぉっ、申し訳ないですわい。シャーロット様」
優しい顔でシルヴァさんが私の顔色を伺ってくれる。
「ルシウスは経験が浅いがゆえに、人との距離感も未熟でのう。自分が理解し始めた感情を人にぶつけた時に、相手がどう感じるか、まだわからないんじゃ」
「・・・うっせっ」
優しくシルヴァさんがルシウスくんのサラサラした銀髪を撫でる。
「ふぉっふぉっふぉ。シャーロット様」
「はい」
一貫して優しい顔、優しい声のシルヴァさん。
「きっと、気にせんでもええ、と言っても、心お優しいシャーロット様は責任を感じてしまうじゃろうて、わしも本音を申し上げますれば・・・ここへ来るのにはちぃーっと疑義があり申した」
「・・・はい」
シルヴァさんのおかげで場は和やかになっていたし、私も大分落ち着いてきたけれど、心臓は速い鼓動を打っている。でも、私はすべての結果を受け入れたい。受け入れるんだ。
「でも、ここの酒は・・・本当に美味い」
シルヴァさんはお酒を見る。
「ありがとうございます」
私はまだ何か言われると思っていたので、少し肩透かしに合った気分だったけれど、お礼を伝える。
「それにの、ここの人たちは本当にいい人ばかりじゃ。それは・・・貴女様も含めてじゃ」
しわしわの温かい手が私の両手を優しく包み込む。
「貴女様に会えて・・・本当に、良かったぁ・・・」
シルヴァさんの言葉に思わずうるっと来てしまった。
「そんな・・・私なんて・・・」
「ふぉっふぉっふぉっふぉ。それでいい。そのままの貴女様でいらしてくだされ」
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