31 / 59
本編
30話 3人の幼馴染
しおりを挟む
「ねぇ、知っているかしら?」
まだ、私の耳に馴染んでいないキレイな女性の声が、ミツルギさんとゴウさんの険悪な空気を一瞬で払う。
「人様に迷惑かけちゃいけないって」
2人とも眉毛をしかめたままだったけれど、焦りのせいか口元は苦笑いというか、変な筋肉の入り方をしていた。
「キキョウさんっ」
私は思わず、大声を出してしまう。
その私の声に、キキョウさんは会釈をしてくれた。
「それとも、二人はそんなこともわからないのかしら?あれれっ、七聖剣と言う名に聖が入っている意味がわかっているのかしら?私はーーーっ、許さないなぁーーーっ」
私はほっとしながら、キキョウさんに再びお礼を言おうと声をかけようとしたけれど、笑顔なのに目が笑っていないキキョウさんのオーラに次の言葉が出てこなかった。
「ごめんなさいね、シャーロット様」
「いててててっ」
「キキョウ、なんで僕までっ」
「失礼しますね」
キキョウさんはゴウさんとミツルギさんの耳を摘まむ。
「喧嘩両成敗です」
「ケンカなら買うぞ!?キキョウ」
「喧嘩で大事なことって知っている、ゴウ?」
キキョウさんは母親が子どもを諭すような言い方でゴウさんに尋ねる。
「そんなの強さに決まっているんだろうが。だからそれを今から、いてててっ」
キキョウさんは「はぁーっ」とため息をつきながら、ゴウさんの耳を引っ張る。
「もう・・・ゴウったら。喧嘩で一番大事なのは『落としどころ』よ」
「んなのっ、女の考え方だろうがっ、俺が知ったこっちゃあーーーっ」
キキョウさんがさらにゴウさんの耳をさらに引っ張る。
整った笑顔でゴウさんの耳を引っ張っているのが、怖い。
私は、今後キキョウさんを怒らせないように気を付けようと思った。
「鞘の仕舞い方を忘れてしまったら、それはもう騎士じゃないわよ?」
「はん・・・っ、俺は俺だ・・・っ」
「・・・はいはい、じゃあ行くわよ」
キキョウさんとゴウさんは共通する苦い記憶を思い返したような顔をしていた。
「だ~か~ら、耳を引っ張んじゃねぇ、てめぇこそ、ちゃんと教育を受けてこいやっ」
「はいはい、だからあっちで一緒に勉強しましょうね~」
三人は歩き出す。
「って、キキョウっ。僕は耳を引っ張らなくてもついていくから」
困った顔をしていたミツルギさんもキキョウさんに耳を引っ張られている。
「え~、なんか両手のバランスが悪いと気持ち悪いじゃない?」
苦笑いをするミツルギさん。
「じゃあ、耳放すね」
「えっ」
耳を離されて、寂しそうなミツルギさん。
それを笑顔で見るキキョウさんと、耳を摘ままれて呆然と見るゴウさん。
「やっぱり・・・お願いしようかな」
「うんっ、そうでしょ?」
(ええええええええっ)
私は心の中で叫んでしまう。
私がおかしいのか、それとも・・・。
ミツルギさんは頭を掻きながら、ちょっと頬を赤らめて笑顔をこぼす。
キキョウさんはそんなミツルギさんの頭を撫でて、再び耳を摘まむ。
「それじゃあ、シャーロット様失礼いたします」
「えっ、あーーーー」
あっけにとられて、何と言っていいのかわからずにいた私。
「なぁ、嬢ちゃん」
私がキキョウさんに返事をしようとすると、ゴウさんが真面目な顔で私に話しかけてくる。
「なんでしょうか?ゴウさん」
さっきの自由奔放なところ見ていた私は恐る恐る返事をする。
「こいつらの方が俺よりヤバイ奴らだからな、わかったか!?あーーーっ」
ゴウさんがキキョウさんに連行されて行った。
「ふっ」
私は思わず、3人の後ろ姿を見て笑ってしまった。
ゴウさんは最初怖い人かと思ったけれど、歯に衣を着せない人で、根は案外いい人なんじゃないかと思った。
(なんだか、羨ましいな)
かくんっ
「あれ・・・っ」
ほっとした私は急に膝に力が入らなくなって、前に倒れそうになった。
まだ、私の耳に馴染んでいないキレイな女性の声が、ミツルギさんとゴウさんの険悪な空気を一瞬で払う。
「人様に迷惑かけちゃいけないって」
2人とも眉毛をしかめたままだったけれど、焦りのせいか口元は苦笑いというか、変な筋肉の入り方をしていた。
「キキョウさんっ」
私は思わず、大声を出してしまう。
その私の声に、キキョウさんは会釈をしてくれた。
「それとも、二人はそんなこともわからないのかしら?あれれっ、七聖剣と言う名に聖が入っている意味がわかっているのかしら?私はーーーっ、許さないなぁーーーっ」
私はほっとしながら、キキョウさんに再びお礼を言おうと声をかけようとしたけれど、笑顔なのに目が笑っていないキキョウさんのオーラに次の言葉が出てこなかった。
「ごめんなさいね、シャーロット様」
「いててててっ」
「キキョウ、なんで僕までっ」
「失礼しますね」
キキョウさんはゴウさんとミツルギさんの耳を摘まむ。
「喧嘩両成敗です」
「ケンカなら買うぞ!?キキョウ」
「喧嘩で大事なことって知っている、ゴウ?」
キキョウさんは母親が子どもを諭すような言い方でゴウさんに尋ねる。
「そんなの強さに決まっているんだろうが。だからそれを今から、いてててっ」
キキョウさんは「はぁーっ」とため息をつきながら、ゴウさんの耳を引っ張る。
「もう・・・ゴウったら。喧嘩で一番大事なのは『落としどころ』よ」
「んなのっ、女の考え方だろうがっ、俺が知ったこっちゃあーーーっ」
キキョウさんがさらにゴウさんの耳をさらに引っ張る。
整った笑顔でゴウさんの耳を引っ張っているのが、怖い。
私は、今後キキョウさんを怒らせないように気を付けようと思った。
「鞘の仕舞い方を忘れてしまったら、それはもう騎士じゃないわよ?」
「はん・・・っ、俺は俺だ・・・っ」
「・・・はいはい、じゃあ行くわよ」
キキョウさんとゴウさんは共通する苦い記憶を思い返したような顔をしていた。
「だ~か~ら、耳を引っ張んじゃねぇ、てめぇこそ、ちゃんと教育を受けてこいやっ」
「はいはい、だからあっちで一緒に勉強しましょうね~」
三人は歩き出す。
「って、キキョウっ。僕は耳を引っ張らなくてもついていくから」
困った顔をしていたミツルギさんもキキョウさんに耳を引っ張られている。
「え~、なんか両手のバランスが悪いと気持ち悪いじゃない?」
苦笑いをするミツルギさん。
「じゃあ、耳放すね」
「えっ」
耳を離されて、寂しそうなミツルギさん。
それを笑顔で見るキキョウさんと、耳を摘ままれて呆然と見るゴウさん。
「やっぱり・・・お願いしようかな」
「うんっ、そうでしょ?」
(ええええええええっ)
私は心の中で叫んでしまう。
私がおかしいのか、それとも・・・。
ミツルギさんは頭を掻きながら、ちょっと頬を赤らめて笑顔をこぼす。
キキョウさんはそんなミツルギさんの頭を撫でて、再び耳を摘まむ。
「それじゃあ、シャーロット様失礼いたします」
「えっ、あーーーー」
あっけにとられて、何と言っていいのかわからずにいた私。
「なぁ、嬢ちゃん」
私がキキョウさんに返事をしようとすると、ゴウさんが真面目な顔で私に話しかけてくる。
「なんでしょうか?ゴウさん」
さっきの自由奔放なところ見ていた私は恐る恐る返事をする。
「こいつらの方が俺よりヤバイ奴らだからな、わかったか!?あーーーっ」
ゴウさんがキキョウさんに連行されて行った。
「ふっ」
私は思わず、3人の後ろ姿を見て笑ってしまった。
ゴウさんは最初怖い人かと思ったけれど、歯に衣を着せない人で、根は案外いい人なんじゃないかと思った。
(なんだか、羨ましいな)
かくんっ
「あれ・・・っ」
ほっとした私は急に膝に力が入らなくなって、前に倒れそうになった。
0
お気に入りに追加
216
あなたにおすすめの小説
国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。
ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。
即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。
そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。
国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。
⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎
※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!
身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
運命の番なのに、炎帝陛下に全力で避けられています
四馬㋟
恋愛
美麗(みれい)は疲れていた。貧乏子沢山、六人姉弟の長女として生まれた美麗は、飲んだくれの父親に代わって必死に働き、五人の弟達を立派に育て上げたものの、気づけば29歳。結婚適齢期を過ぎたおばさんになっていた。長年片思いをしていた幼馴染の結婚を機に、田舎に引っ込もうとしたところ、宮城から迎えが来る。貴女は桃源国を治める朱雀―ー炎帝陛下の番(つがい)だと言われ、のこのこ使者について行った美麗だったが、炎帝陛下本人は「番なんて必要ない」と全力で拒否。その上、「痩せっぽっちで色気がない」「チビで子どもみたい」と美麗の外見を酷評する始末。それでも長女気質で頑張り屋の美麗は、彼の理想の女――番になるため、懸命に努力するのだが、「化粧濃すぎ」「太り過ぎ」と尽く失敗してしまい……
いじめられて、婚約者には見捨てられました。
りつ
恋愛
ドーラはクラスメイトからいじめられていた。それでも誰にも助けてもらえず、ただ必死に我慢して毎日を過ごしていた。それもすべて婚約者と良好な関係を保つためだったが──
※いじめ描写など気分の悪くなる表現や展開があります。ご注意下さい。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
心の声が聞こえる私は、婚約者から嫌われていることを知っている。
木山楽斗
恋愛
人の心の声が聞こえるカルミアは、婚約者が自分のことを嫌っていることを知っていた。
そんな婚約者といつまでも一緒にいるつもりはない。そう思っていたカルミアは、彼といつか婚約破棄すると決めていた。
ある時、カルミアは婚約者が浮気していることを心の声によって知った。
そこで、カルミアは、友人のロウィードに協力してもらい、浮気の証拠を集めて、婚約者に突きつけたのである。
こうして、カルミアは婚約破棄して、自分を嫌っている婚約者から解放されるのだった。
ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~
柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。
その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!
この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!?
※シリアス展開もわりとあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる