14 / 59
本編
13話 宣戦布告
しおりを挟む
「敵の数はおよそ3千ですっ」
「3千!?」
お父様がびっくりするのも無理はない。
なぜなら、私たちの領地の人数のおよそ半分。
そんな人数が武装してくれば勝ち目なんて0に等しい。
「王子からはシャーロット様の謝罪と領地の8割を渡せ、と書かれておりますっ」
「・・・」
駆け付けた私たちの領地の兵は書状を読み上げると、父は険しい顔をして何も言うことができなかった。
これはダイダム・ボッド王子の歯向かった私たちに対しての明らかな見せしめだ。
私たちの領地の生産物の流入を止めたことは、ダイダム王家にとって、それほど大きなダメージを与えていたのであろう。
(そこは誇るべき・・・で間違いはないと思うけど・・・)
お父様は窓際まで歩いて行き、外を見る。
その横顔は私が見た中で、一番寂しい顔をしていた。
私はそれを見て、ようやく自分の行動の責任の大きさを知った。
「おっ、お父様・・・私、謝ってくるわ。私がしっかりと謝って、領地は許してもらうようにボッド王子を説得・・・っ」
「お前が悪いわけではない。シャーロット。全ては俺が原因だ」
私のところに歩み寄ったお父様は優しく私の頭を撫でてくれた。
「娘のお前を不幸にすることは、俺が一番辛いことだ。だから、俺はこの首を差し出して、ボッド王子に許しを請おうと思う」
お父様は自分の首を右手の親指で指さす。
「なっ、なりません!!」
私はお父様の服を握り締め訴える。
けれど、お父様は悲しさを含んだ優しい顔で私を見る。
(そんな目で、私を見ないで。まるで、本当に・・・)
その顔は、子どもを残して去る親の顔そのものだった。
◇◇
「さぁ、いそげっ!!」
「おう!!」
木材を持った男性たちがバリケードを作るために、急いで町のはずれへ向かう。
けれど、うちの領地に鎧なんてものはほとんどない。
「まさか、私たちを守ってくれるはずの王国兵に攻められるなんて・・・」
一緒に見ていたお母様がぽつりと思っていたことを漏らした。
「きっと、私たちの家も差し押さえられているかもしれないわね」
「そうですね・・・」
領地の管理と、王家との会議を行うために私たちの家は王家の近くと領地の両方にある。
ただ、王家とこんな関係になってしまえば、お母様の言うように王家近くの家は諦めるしかないかもしれない。
(でも・・・あそこは・・・)
私はクリスの顔が浮かぶ。
彼との思い出は今敵対している王家の近くにしかないけれど、そんな彼との思い出の地に行けなくなるかもしれない。
(バカバカ、今そんなことを考えるなんて・・・っ。今は戦争のために何かできることを考えないとっ)
私は準備している女性たちに加わり、戦用のご飯を作りに参加した。
無駄かもしれない。
そう感じていたのは私だけではないけれど、誰もそんなことは言わずにできることを精いっぱい行動した。
この領地を、そして・・・私を守るために。
「3千!?」
お父様がびっくりするのも無理はない。
なぜなら、私たちの領地の人数のおよそ半分。
そんな人数が武装してくれば勝ち目なんて0に等しい。
「王子からはシャーロット様の謝罪と領地の8割を渡せ、と書かれておりますっ」
「・・・」
駆け付けた私たちの領地の兵は書状を読み上げると、父は険しい顔をして何も言うことができなかった。
これはダイダム・ボッド王子の歯向かった私たちに対しての明らかな見せしめだ。
私たちの領地の生産物の流入を止めたことは、ダイダム王家にとって、それほど大きなダメージを与えていたのであろう。
(そこは誇るべき・・・で間違いはないと思うけど・・・)
お父様は窓際まで歩いて行き、外を見る。
その横顔は私が見た中で、一番寂しい顔をしていた。
私はそれを見て、ようやく自分の行動の責任の大きさを知った。
「おっ、お父様・・・私、謝ってくるわ。私がしっかりと謝って、領地は許してもらうようにボッド王子を説得・・・っ」
「お前が悪いわけではない。シャーロット。全ては俺が原因だ」
私のところに歩み寄ったお父様は優しく私の頭を撫でてくれた。
「娘のお前を不幸にすることは、俺が一番辛いことだ。だから、俺はこの首を差し出して、ボッド王子に許しを請おうと思う」
お父様は自分の首を右手の親指で指さす。
「なっ、なりません!!」
私はお父様の服を握り締め訴える。
けれど、お父様は悲しさを含んだ優しい顔で私を見る。
(そんな目で、私を見ないで。まるで、本当に・・・)
その顔は、子どもを残して去る親の顔そのものだった。
◇◇
「さぁ、いそげっ!!」
「おう!!」
木材を持った男性たちがバリケードを作るために、急いで町のはずれへ向かう。
けれど、うちの領地に鎧なんてものはほとんどない。
「まさか、私たちを守ってくれるはずの王国兵に攻められるなんて・・・」
一緒に見ていたお母様がぽつりと思っていたことを漏らした。
「きっと、私たちの家も差し押さえられているかもしれないわね」
「そうですね・・・」
領地の管理と、王家との会議を行うために私たちの家は王家の近くと領地の両方にある。
ただ、王家とこんな関係になってしまえば、お母様の言うように王家近くの家は諦めるしかないかもしれない。
(でも・・・あそこは・・・)
私はクリスの顔が浮かぶ。
彼との思い出は今敵対している王家の近くにしかないけれど、そんな彼との思い出の地に行けなくなるかもしれない。
(バカバカ、今そんなことを考えるなんて・・・っ。今は戦争のために何かできることを考えないとっ)
私は準備している女性たちに加わり、戦用のご飯を作りに参加した。
無駄かもしれない。
そう感じていたのは私だけではないけれど、誰もそんなことは言わずにできることを精いっぱい行動した。
この領地を、そして・・・私を守るために。
0
お気に入りに追加
216
あなたにおすすめの小説
国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。
ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。
即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。
そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。
国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。
⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎
※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!
身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
運命の番なのに、炎帝陛下に全力で避けられています
四馬㋟
恋愛
美麗(みれい)は疲れていた。貧乏子沢山、六人姉弟の長女として生まれた美麗は、飲んだくれの父親に代わって必死に働き、五人の弟達を立派に育て上げたものの、気づけば29歳。結婚適齢期を過ぎたおばさんになっていた。長年片思いをしていた幼馴染の結婚を機に、田舎に引っ込もうとしたところ、宮城から迎えが来る。貴女は桃源国を治める朱雀―ー炎帝陛下の番(つがい)だと言われ、のこのこ使者について行った美麗だったが、炎帝陛下本人は「番なんて必要ない」と全力で拒否。その上、「痩せっぽっちで色気がない」「チビで子どもみたい」と美麗の外見を酷評する始末。それでも長女気質で頑張り屋の美麗は、彼の理想の女――番になるため、懸命に努力するのだが、「化粧濃すぎ」「太り過ぎ」と尽く失敗してしまい……
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~
柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。
その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!
この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!?
※シリアス展開もわりとあります。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
無理やり『陰険侯爵』に嫁がされた私は、侯爵家で幸せな日々を送っています
朝露ココア
恋愛
「私は妹の幸福を願っているの。あなたには侯爵夫人になって幸せに生きてほしい。侯爵様の婚姻相手には、すごくお似合いだと思うわ」
わがままな姉のドリカに命じられ、侯爵家に嫁がされることになったディアナ。
派手で綺麗な姉とは異なり、ディアナは園芸と読書が趣味の陰気な子爵令嬢。
そんな彼女は傲慢な母と姉に逆らえず言いなりになっていた。
縁談の相手は『陰険侯爵』とも言われる悪評高い侯爵。
ディアナの意思はまったく尊重されずに嫁がされた侯爵家。
最初は挙動不審で自信のない『陰険侯爵』も、ディアナと接するうちに変化が現れて……次第に成長していく。
「ディアナ。君は俺が守る」
内気な夫婦が支え合い、そして心を育む物語。
いじめられて、婚約者には見捨てられました。
りつ
恋愛
ドーラはクラスメイトからいじめられていた。それでも誰にも助けてもらえず、ただ必死に我慢して毎日を過ごしていた。それもすべて婚約者と良好な関係を保つためだったが──
※いじめ描写など気分の悪くなる表現や展開があります。ご注意下さい。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる