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本編
10話 愛と覚悟
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「だっ、旦那様っ、たっ、大変です」
1人の執事が息を切らしながら私たち家族が集まっているところにやってきた。
「どうしたんです?そんな、血相を変えて」
お母様が心配そうに、その執事の顔色を伺う。
「民が急に商売や移動が制限されて、どうなっているんだと、押しかけて来ています」
「なんだと!?」
執事の言葉にお父様がびっくりする。
「今は門番がなだめていますが、いつ流れ込んでもおかしくありません」
私たちはは目を合わせて、門へと急ぐ。
◇◇
「おいどうなってるんだ!」
「説明しろ!!」
「領地から出れないんですけれど~~~」
老若男女、多くの領民たちが門の前で不満の声を叫んでいる。
数の暴力とは言わないが、多勢に無勢で門番は腰が引けている。
「よくやった。皆を中に入れてくれ」
お父様は後ろから門番の肩を叩くと、門番はほっとして涙目になる。
ギイイイィッ
門を開けると、領民たちがぞろぞろと入ってくる。
お父様の誠意ある対応のおかげか騒ぐのは止めて、ゆっくりと入ってくる領民たち。
しかし、不満の渦は声になっていなくても、いつも優しく笑顔があふれる領民のみんなの熱気のようなオーラは異様だった。それほど、うちの領地は交易が盛んで依存しており、みんなの不安の表れなのだろう。
庭に集めた領民を前へ父が立つ。
「みんな、どうした」
「どうしたじゃないですよ、ゼロス様。これはどういうことなんですかっ!?どこも俺たちの毛織物も工芸品も買い取るには、馬鹿みてえな賃金しか渡せねぇって言ってきた」
「そうよ、一生懸命作ったキレイなこのドレスにだって、ほんのわずかなお金しかならないって言われたのよ?」
先頭の方にいた女性はシルクの煌びやかなドレスを見せてくる。
「これは見事だ。過去一番のできなんじゃないか?」
「・・・そうよ」
父上がドレスを触って「うん、素晴らしい」と肌触りを確かめる。
「いったい何があったんですか?ゼロス様。そこにおられるシャーロット様とボッド王子の婚約が決まって、この領地はいっそう栄えるとおっしゃっていたじゃないですか・・・」
私は青年と目が合って、思わず下を向く。
ボッド王子が正妻と意地悪な目で見てきたことを思い出してしまった。
そんな私を見て、お父様が労わるような優しい目をして、私の肩に手を置く。
そして、決意をしたお父様は一息つき、キリっとした領主の顔になる。
「みんな・・・聞いてくれ。実は、今回ボッド王子との婚約を破棄してきた」
ざわつく領民のみんな。
視線が・・・痛い。
私の心臓はきゅーーーっと締め付けられるように小さくなる気がした。
「みんな!!!」
そんな領民のみんなの動揺に対して、お父様は大声で再びみんなの視線を集める。
「ボッドは俺の娘のシャーロットを侮辱した・・・っ。約束を捻じ曲げた・・・っ。シャーロットを蔑ろにしたということはこの領地の全てを侮辱したに等しい!!!奴らとこのままの関係を続けることは、搾取される道しかない。だから、こっちから断絶を申し入れたっ!!!」
力強いお父様の声。
驚く領民たち。
私は・・・
1人の執事が息を切らしながら私たち家族が集まっているところにやってきた。
「どうしたんです?そんな、血相を変えて」
お母様が心配そうに、その執事の顔色を伺う。
「民が急に商売や移動が制限されて、どうなっているんだと、押しかけて来ています」
「なんだと!?」
執事の言葉にお父様がびっくりする。
「今は門番がなだめていますが、いつ流れ込んでもおかしくありません」
私たちはは目を合わせて、門へと急ぐ。
◇◇
「おいどうなってるんだ!」
「説明しろ!!」
「領地から出れないんですけれど~~~」
老若男女、多くの領民たちが門の前で不満の声を叫んでいる。
数の暴力とは言わないが、多勢に無勢で門番は腰が引けている。
「よくやった。皆を中に入れてくれ」
お父様は後ろから門番の肩を叩くと、門番はほっとして涙目になる。
ギイイイィッ
門を開けると、領民たちがぞろぞろと入ってくる。
お父様の誠意ある対応のおかげか騒ぐのは止めて、ゆっくりと入ってくる領民たち。
しかし、不満の渦は声になっていなくても、いつも優しく笑顔があふれる領民のみんなの熱気のようなオーラは異様だった。それほど、うちの領地は交易が盛んで依存しており、みんなの不安の表れなのだろう。
庭に集めた領民を前へ父が立つ。
「みんな、どうした」
「どうしたじゃないですよ、ゼロス様。これはどういうことなんですかっ!?どこも俺たちの毛織物も工芸品も買い取るには、馬鹿みてえな賃金しか渡せねぇって言ってきた」
「そうよ、一生懸命作ったキレイなこのドレスにだって、ほんのわずかなお金しかならないって言われたのよ?」
先頭の方にいた女性はシルクの煌びやかなドレスを見せてくる。
「これは見事だ。過去一番のできなんじゃないか?」
「・・・そうよ」
父上がドレスを触って「うん、素晴らしい」と肌触りを確かめる。
「いったい何があったんですか?ゼロス様。そこにおられるシャーロット様とボッド王子の婚約が決まって、この領地はいっそう栄えるとおっしゃっていたじゃないですか・・・」
私は青年と目が合って、思わず下を向く。
ボッド王子が正妻と意地悪な目で見てきたことを思い出してしまった。
そんな私を見て、お父様が労わるような優しい目をして、私の肩に手を置く。
そして、決意をしたお父様は一息つき、キリっとした領主の顔になる。
「みんな・・・聞いてくれ。実は、今回ボッド王子との婚約を破棄してきた」
ざわつく領民のみんな。
視線が・・・痛い。
私の心臓はきゅーーーっと締め付けられるように小さくなる気がした。
「みんな!!!」
そんな領民のみんなの動揺に対して、お父様は大声で再びみんなの視線を集める。
「ボッドは俺の娘のシャーロットを侮辱した・・・っ。約束を捻じ曲げた・・・っ。シャーロットを蔑ろにしたということはこの領地の全てを侮辱したに等しい!!!奴らとこのままの関係を続けることは、搾取される道しかない。だから、こっちから断絶を申し入れたっ!!!」
力強いお父様の声。
驚く領民たち。
私は・・・
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