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19.最後の雨乞いの巫女その名は・・・(ジェイド)

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「ふはーーーっ帰んな」

 貴族は元雨乞いの巫女のところに着くと、元雨乞いの巫女はキセルを吹かしていた。彼女はジェイドに負けず劣らず、高齢にも関わらずふくよかな身体をしていた。

「きっきっきっ。それにわたしゃ、全ての力をあの子に託したと言っただろう」

「うるさいっ、従わなければ死だ。さっ、連れて行けっ」

「なっなんなんだい、やっやめ―――」

 貴族が連れてきた兵士たちは強引に元雨乞いの巫女を両方から抑えつけて、馬車へと乗せた。

「はっ放せっ」

「うるさい、金はいくらでも出す。大人しくついてこい」

「金なんかごまんとあるわい。それよりも食料をよこしな」

「・・・おいっ、黙らせろっ」

 兵士たちは元雨乞いの巫女にさるぐつわをはめて黙らせた。
 貴族は何度も何度も丁寧に首の汗を拭いた。

(これで、なんとか―――)

 しかし、貴族の願いはかなわなかった。

「なんだとっ!?」

 老婆である元雨乞いの巫女の胸ぐらを掴んだジェイドは思いっきり、元雨乞いの巫女を揺らす。

「でっ、ですから・・・私には・・・無理です」

「なぜだ、貴様は稀代の雨乞いの巫女だろうがっ!? さんざん、お前には王家が散々礼を尽くしたのに、貴様はこの窮地に礼を尽くさんのか!?」

「私の力は・・・ミシェルに」

「若いからといって、俺を舐めるなっ!! 雨乞いの巫女が継承するのは知識のみだ。いいから、さっさとやれ。やらねば、その首を切り、お前を家畜の餌にするぞっ!!?」

「ひっ、命・・・命だけは・・・」

「なら、早くっ」

「じっ、実は―――」

 元雨乞いの巫女は洗いざらい話をした。自分には才能が無かったこと。ミシェルの才能に目を付けて、ミシェルを泣かせて、雨を降らせていたことを。それを聞いて、嫌な予感がして青ざめる貴族と、怒りで真っ赤になるジェイド。

「ふざけるなああああっ!! おい、こいつらを処刑しろっ!!」

「こっ、こいつら?」

 貴族の予感は的中し、兵士たちが二人を連れて行った。この時から元雨乞いの巫女は「私腹を肥やした最悪で最後の巫女」という二つ名になり、そして、この世に残ったのは記録に残されるその名だけになった。

「見つかりましたっ!!」

 ボロボロになったマヌケそうな兵士が入れ替わるように王座の間へ入って来た。

「何が見つかったのだ?」

「ミッミシェル様です」

 そのマヌケな兵士は王子や大臣が捜索の範囲を国内にしたことも、捜索を中断したことも知らずに、国外を探していた。それが今回に関しては功を奏した。

「よし、すぐに行くぞっ!!」

 ジェイドはミシェルを取り戻すために、ガラハラ王国を目指した。
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