【26話完結】日照りだから帰ってこい?泣きつかれても、貴方のために流す涙はございません。婚約破棄された私は砂漠の王と結婚します。

西東友一

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13.誰がための修行

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「ミシェル様のおかげです」

「えっ?」

 恥ずかしがって固まってしまったミシェルを見た侍女はマハラジャに自分に任せるように告げて、マハラジャ苦笑いしながらも、別のところに行くと、侍女がミシェルに話しかけた。

「マハラジャ様は民のことを何よりも大事に考えるお方です。ですので貴女様が来るまで、日照りのことで苦悩していらっしゃり、見ているこちらも心が痛くなるようなお姿でした。私のような無知な者には詳しくわかりませんが、きっと、今も今で日照りのために画策されているに違いはないのでしょうが、それでもああやって笑えるようになりました」

「そっ、そんな・・・私なんてただ飯喰らいで・・・」

 ただ飯喰らいなんて言葉がミシェルから出ると思わなかった侍女は少し驚いて、

「そんなことはありませんよ。貴方様はマハラジャ様の心のオアシスに違いありませんわ」

 と言って微笑んだ。

 落ち着いたミシェルは侍女と別れ、自室へと戻った。

(なんとかしたい・・・)

 しなければならない、という受動的な感情でいつも過ごしてきたミシェル。でも、ガラハラ王国に来てから、人のために自分から何かしたい、恋も・・・してみたいと自発的な気持ちが生み出されるようになった。

(自分の力で雨を降らせる)

 ミシェルは過去に教わった厳しい修行を思い出す。一つも身に付かなかったという意味では彼女は無能だろう。しかし、そもそも当時は彼女にとってその修行は無意味だった。
 
 なぜなら、本来雨乞いの巫女は、雨を降らせるために厳しい修行を積み、何日もの祈祷によって雨雲を呼び込む。

 けれど、ミシェルの場合は泣けば必ず雨が降る。教えていた巫女もミシェルに嫉妬した。どんなに優れた雨乞いの巫女でも祈祷を行い雨雲を呼べるのは例外を除いて5回に1回くらい。必ず呼べる巫女は巫女のみに伝わる伝説と言われた初代の雨乞いの巫女だけ。

 教えていた巫女は本来であれば、それが伝授する内容でないにしても巫女を育てる立場としてミシェルに感情の制御を教えていくべきだった。だか、それをしなかった。彼女は天才の雨乞いの巫女の教育者という立場よりも自身の活躍の場を奪われるのを危惧した。そして、あろうことが自分が王家などから雨乞いを依頼された時、ミシェルのことは秘密にして雨を降らせたい時は修行だとミシェルに偽って虐待し、雨を降らせた。

 教えていた巫女はミシェルのおかげで皆から信頼された。そうであるが故に、皮肉にもミシェルは自分の力によって次の雨乞いの巫女となった際は高い要求を求められていたのだ。

 意味のない修行だった。
 けれど、今。
 その修行が意味を持つ時ーーー
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