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6.逃がした雨脚は遠い(ジェイド)

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「すぐに、ミシェルを連れてこい」

 ジェイドはマハラジャからの儲け話を聞いて、部下にミシェルを呼び戻すように命令すると、数十名の兵士たちが外へと捜索に出かけた。

「帰ってきますかね・・・彼女は」

 先ほどの仕打ちを心配した大臣がポツリと呟くと、

「はーーーっはっはっはっ。当然だ。あんな、優柔不断な陰気臭い女がいく場所なんてないだろう。それに俺は王子だ。俺の命令に逆らう勇気があるわけなかろうが」

「そうで・・・ございますかねぇ」

 命令に逆らう勇気が無ければ、この国から出ていかなければならないのでは・・・。そう思いながらも大臣はジェイドの言葉を否定しなかった。

「無論だ」

 大臣は外の天気を見る。天気は晴れているけれど、雨雲が先ほど来たガラハラ国の方へと向かっている気がした。もちろん天気がいいに越したことはないし、暗雲はない方が縁起が良いとされている。けれど、大臣の胸の内はざわめいていた。

「そう言えば、この国も昔は砂漠の国だったそうですね」

「ふん、今じゃ泣き虫の雨乞い巫女のせいで雨ばかり降るがな」

「ですが、伝説をご存じですか?」

「なんだ、伝説とは?」

「この国が豊かな国になった時、心が躍る様な幸せの雨が降り、皆は喜んでその雨に打たれ、雨が上がると幸せな虹がこの国を覆ったと言います」

「なんだそれは・・・・・・くだらない。衣服が濡れて喜ぶと言うのは子どもだけだろ。伝説ではなく童話の間違いだろ?」

「そうかもしれませんね・・・」

「それよりも、ガラハラだ。あそこは宝石も沢山出ると言うのだから、取れるだけ搾り取ってやろう。くっくっくっ。難儀だなぁ、宝石では腹は膨れぬのだから」

(雲がかかってばかりなのは、彼女のせいなのか、それとも・・・)

 大臣はそれ以上考えるのを止めた。なぜなら、その考えの先は止まない雨かもしれないと思ったからだ。

「陛下っ!!」

 帰って来た兵士の声が聞こえて、大臣とジェイドは兵士を見る。

「巫女の住まいに、雨乞いの巫女はおりませんでした」

「なんだとっ!? あいつめ、まっすぐ帰らないとは・・・くそっ、道草なんぞいっちょ前に食いやがって・・・。おいっ、お前。見つけてないなら、帰ってくるなっ。いいか、帰ってくるときはミシェルを連れてきた時だっ。わかったかっ!?」

「はっ」

 そう言って、兵士は慌てて捜索に再度出かけた。けれど、ミシェルは夕方になっても見つけることができず、夜に帰って来た兵士の報告を聞いて、ジェイドは怒って、もう一度探しに行けと、兵士の数を増やして捜索したが、ミシェルは見つかることも無かった。

 なぜなら、ミシェルはすでに王子の言いつけの通りエバーガーデニア王国から出て行っていたのである。
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