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「なぁ、えいちゃん」

「お?」

 バイクの風を切る音で良く聞こえないが、ミッキーから話しかけられたので俺は返事をする。

「やっぱさ、ヤンキーたるものマフラー改造して音鳴らそうぜ」

「ばーか。近所迷惑だろ」

 ミッキーに連れられてミッキーの師匠という人に会ったことがある。昔の俺だったら、自分のヒーローの師匠だと思って、その人にも憧れたかもしれないが、その時の俺はミッキーが他の人に媚びている姿みたいなのを見せつけられてモヤモヤしたのを覚えている。そして、その人のバイクはマフラーを改造してあり、試しにということで載せて貰ったのだが、自分がエンジンをふかせば、音が鳴ると言うのは少しテンションが上がった。でも、そんなことをすれば、近所迷惑だし、流石に親も俺からバイクを没収するに違いない。

「おっ、やってるやってる」

 ミッキーに指さされた方向を見ると、河川敷でヤンキーたちが殴り合いをしていた。

「ドクロマークの刺繍をした学ランがスカルス。コウモリマークの刺繍をした学ランがデビルクライな」

 別に覚える気はないけれど、ミッキーは俺に情報を与えてくる。ドクロマークの刺繍の学ランのスカルスの方が若干押しているように見える。

「よし、加勢に入るか」

 やっぱり。
 聞かなかったけれど、やっぱり混ざりたいようだ。

「やめようぜ。野良の奴らが水を差したらよ・・・・・・」

「やっぱり、デビュー戦は華々しく登場してぇよな。デビルクライの味方すっかな」

 聞いていない。
 その上、劣勢の方に加勢しようとしているらしい。

「よし、そろそろいくぜ、えいちゃん」

「待っ・・・」

「背中は預けたぜ、相棒」

 そう言って、俺の胸にグータッチするミッキー。その屈託のない笑顔。
 俺はそれをずるいと思った。

(ミッキーはやっぱり・・・・・・)

「おうおうおうっ!!」

 ミッキーと俺は土手を滑っていく。ミッキーの大声に気が付いた両軍は喧嘩を止めて俺たちを見る。その状況に興奮して感極まって武者震いするミッキー。

「誰だ、てめぇ」

「俺か? 俺はな・・・・・・タチバナ高校2年のミッキー」

 ミッキーは自分のことを親指で差し、

「そして、こいつは相棒のえいちゃん」

 今度は俺の肩に寄りかかり、

「デビルクライの助太刀に参上したぜいっ!!!」

 と言いながら、歌舞伎の見栄のようなポーズを決める。

「ふっ」

 スカルスのリーダーっぽい奴が鼻で笑ってデビルクライのリーダーっぽい奴を憐れんだ目で見る。

「いらねぇわっ、ボケっ」

 デビルクライのリーダーっぽい奴はスカルスのリーダーっぽい奴にアイコンタクトを送り、二人は頷く。

「俺らのシマ荒らしやがって、まずはお前らからだっ!!!」

「やっちまえっ」

 両軍のリーダーの号令で全員が俺たちのところにやって来た。

 やばいっ。

 そう思った俺はミッキーの腕を引っ張り退散しようとしたけれど、ミッキーは動かない。小さくて弱っちいのに、こういう時だけびくともしない。

「えいちゃん、伝説を作ろうぜ!!!」

 そう言って、立ち向かおうとするミッキー。無鉄砲にはほどがあるけれど、ミッキーを一人にはできない。仕方ないから、俺も彼らに立ち向かうことにした。





 
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