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「チッチッチースぅ。えいちゃん、暇?」

 寝ようかと思ったら、着信が来た。
 画面表示は「ミッキー」。本名、三木翔太。
 俺のマブダチからだ。

 ミッキーも声変わりはしたはずだ。けど、その明るくて高い声はまだまだ夢を追う少年のような声で、声変わりの時期の期間限定だけ気になったけれど、昔から変わらない、俺の幼馴染で・・・・・・憧れのヒーローの声だ。

「暇って言うか・・・・・・寝る時間」

「うっし。なら、出てこい。今日はスカルスとデビルクライの闘争があるらしい」

「興味ない」

「ばかばかばか。俺らデスティーの名を売るチャンスだろっ。もうお前んちの外にいっから。10秒な」

 俺は慌てて窓から下を見ると、天真爛漫なミッキーがいた。俺と目が合うと、手を振っている。これから、怖いものを見に行くと言うのに全く恐怖のない、満面の笑顔。それが、カッコよくて・・・・・・あのキラキラ目が本当に好きだ。

「ちょっと待ってろ」

 俺はスマホをスピーカーにして、上着を脱ぐと、

「おっ、流石えいちゃん。胸筋やばっ」

 ミッキーから茶々入れが入る。そうだった、下にはミッキーが居てこちらを見ているのを忘れていた。

「ばっ、馬鹿。見てんじゃねーよ」

 俺はスマホ越しにミッキーに文句を言いながらカーテンを閉める。

『堂々としてりゃーいいんだよ』

 昔は色白でがりがりだった俺はプールが嫌だった。そして、ミッキーの言葉で平気になったわけでもない。ただ、ミッキーの生き方を見ていたら、俺はミッキーに憧れて、コンプレックスも気にならなくなっていった。いや、違う。ミッキーがいるから、俺を必要としてくれるミッキーがいるから俺が俺でいられるんだ。

「お待たせ」

「うっし。行くか」

 俺のバイクの後ろに乗って待っているミッキー。
 昔はカッコイイだけの存在だったけれど、中学ぐらいから俺が身長を越して、小柄なミッキーは時々可愛く感じる。そのせいか、ミッキーがボコられている時、俺が守ってやんなきゃなんねーって言う父性本能が働く時もある。

 俺はヘルメットをミッキーに投げて、自分もヘルメットを着けてバイクにまたがる。キーを回して、エンジンをふかす。すると、後ろにいるミッキーがキャッキャッキャはしゃぐ。ハンドルを回して、俺たちは夜の道を走らせる。
男同士と言うこともあって・・・・・・というより、ミッキーはカッコつけたいのだろう。俺の腰に手を回さない。

「スピード出すぞ、捕まれ」

「おっ。おうっ!!」

 ミッキーは俺もテンションが上がって来たと思って嬉しくなったのか、俺の腰にしがみつく。ただそれは間違いだ。というより、原因と結果が逆転している。別に俺は闘争を見に行くなんてちっともテンションは上がらない。ミッキーにしがみつかれたから少しテンションが上がったのだ。

 だから、俺はバイクのエンジンをふかした。
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