【4話完結】好きなだけ愛しているとは言わないで

西東友一

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「ねえ、タツヤ」

「ん?」

「ちょっと、放課後体育館裏に来てくれない?」

「ああ」

 小学生の放課後なんて身体を動かして遊びたいに決まっているのにそんなことを言われてしまった。俺は嫌で断ろうとしたけれど、幼馴染の桜井さんが睨まれれば、俺は了承するしかできない。仕方なく、放課後体育館裏に向かった。

(なんでっ!?)

 体育館裏には桜井さんだけではなく、神崎さんがいた。
 俺が密かに想いを寄せている相手だ。

「よっ」

「おっ、おう」

 桜井さんは俺が着いたのを気づいて、神崎さんの肩を叩き、二人も俺の方に歩いて来た。

「えーっと・・・」

 神崎さんが手ぶりで話をして、桜井さんがそれを確認する。

「うーん、よくわかんない。ごめんね、神崎。タツヤ、神崎があんたのこと好きだって」

(・・・・・・・・・ん?)

「今、なんて言った?」

「だから、神崎がタツヤのこと好きだって」

「・・・・・・」

 こいつ、さらっとすげえことを言いやがった。
 俺のびっくりした顔を見て、神崎さんが桜井さんの袖を引っ張り再び手ぶりをする。

「ごめんって、私も手話習ったばっかりだから、そんなに分かんないんだって」

 桜井さんが手ぶりで神崎さんに伝えると、神崎さんはとても悲しい顔をして、俺を見た。

「・・・っ」

「えっ、あっちょっと、神崎さん!!」

 うるうるした瞳で不安そうな顔を見せた神崎さんは俺の声に反応することなく、背を向けて走って行ってしまった。

「ドンマイ」

「いや、ドンマイじゃねーよ」

 桜井さんに慰められた俺。
 俺の初恋も、初めて告白されたことも・・・・・・

「私のせいで失敗したと思っているでしょ」

「・・・・・・っ」

 そうだ。

「最っ低----っ」

 はぁ? 何を言っているんだこの女は。

「そんな風に思う暇があったら、手話でも学びなさいよ。バーカッ」

 そう言って、桜井さんも俺に背を向けて走って行った。

「バーーーカッ」

 何も言っていないのに桜井さんは振り返って、再び文句を言って走っていった。

「・・・・・・っ」

 竜崎さんは耳が聞こえない。
 そして、話もできない。

 俺は手話を理解できない。
 そして、手話で話もできない。

 好きって気持ちは一緒だったかもしれないけれど、その気持ちは残念ながら繋がらなかった。
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