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 ずーっと、ロイドとキスをしていたい。

 ・・・そう思ったけれど、私はそこまで体調を崩していたし、息を長く止めることができなかった。

「んんっ」

 嫌がったわけではないのだけれど、私は目をぎゅっとさせながら、そっぽを向く。

「ごほっごほっごほっごほっ・・・」

 彼と唇を通じて触れ合っていた時が天国ならば、離れた今は地獄だろうか。
 胸のあたりが痛くて、とても苦しかった。
 何も言わずにロイドは再び背中を擦った。

「ごめんなさい。本当に・・・」

 咳が辛くて涙目になりながらも、ロイドに誤解されたくなくて謝る。

「僕の方こそ・・・キミにはいつも甘えて・・・申し訳ない」

 ロイドが悩んだ顔をする。
 なんとなく、彼が思い浮かべていたのが、エリスなのがわかった。

「よしよしっ」

 私が彼の頭を撫でると、彼がびっくりした顔をする。

「甘えたっていいんですよ? だって、妻になるんですもの」

 笑顔でそう伝えると、

「ふっ」

 ロイドも笑ってくれた。
 私たちは嫌なことを忘れて、愛する相手で心がいっぱいになりながら、笑い合った。

「でも、結婚式前にごめんね」

「そうよ、ファーストキスだったんだから・・・」

 先ほどのキスを思い出す。嬉しかったけれど、けど!
 婚約中とはいえ、キスするのはあまり褒められたものではない。
 とはいえ、私はちらっとロイドの顔を見ると、どうしても想像を超えた快感があった唇に目がいってしまい、もう一度キスしたいなぁと思ってしまう。

「どこ見ているのかな?」

「もう、いじわる」

「ごめん、ごめん」

「ふん、もう知らない」

 私がそっぽを向くと、

「ごめんごめん。実は・・・僕も初めてだったんだ」

 とロイドが言った。

「へっ、へぇーーーっ」

 私はそれが嬉しくて、でも素直になれなかったけれど、ロイドがどんな顔をしているか気になったので、澄ました顔をしながら、横目で見て見ると、ロイドの頬は赤くなっていた。

「それで・・・結婚式だけど」

 延期された結婚式に私は過敏に反応してしまう。
 すると、ロイドはベッドに横に座り、肩を寄せる。

「素敵な結婚式にするから・・・もう少し待って欲しい」

 重責を背負っているようなロイドの真剣な顔。
 もしかしたら、私たちの結婚を阻んでいるのは、エリスのワガママだけじゃないのかもしれない。

「うん、私待っている」

 私は彼の手を添える。
 私たちは力強く握手を交わしたわけではない。

 けれど、お互いのことを思いやりながら優しく手を取り合った。

(優しい未来が待っていればいいな)

 私は切に願った。


 
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