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 それからエリスはロイドに対して、あることないことではなく、ないことないことロイドに報告しました。
 あまりにも突拍子無かったので、私はなから呆れながら聞いておりました。

「本当かい・・・ニーナ?」

 ロイドが私に尋ねる。

「まったく、事実無根です」

 私はちょっと呆れながらも、ロイドにお伝えした。あまりにもなさすぎることを伝えたので、さすがのロイドもわかってくれると信じていました。

「信じて・・・ロイド」

 エリスはロイドの袖を握り締め、目には涙を浮かべながら、再び幼い声でロイドに懇願する。

(え・・・悩むの? ロイド)

 私はびっくりした。
 いつも理知的で推察力も優れているロイドがこんな茶番に翻弄されるなんて、信じられなかった。

「大丈夫だ。エリス」

 そう言って、エリスの頭を撫でるロイド。
 エリスはロイドの胸に顔を埋める。

「ニーナ。とりあえず、今日のところは帰ってくれるかい?」

 ロイドの困ったような悲しい顔。

(信じて・・・いいのよね?)

 ロイドは私の言い分を聞かなかった。ただ、エリスの言ったことに対して、本当かどうか、ただだけ。
 
 こんなことは初めてだ。
 
 私が言わなくてもわかってくれていると信じたい。けれど、ロイドの表情を見て確信できなかった。

「送るよ」

 そう言って、ロイドが立ち上がろうとするけれど、

「・・・」

 エリスは黙ってロイドを離さない。

「すぐに戻るから・・・」

 ロイドがエリスの肩に手を置くが、俯いたエリスは首を左右に振って、離さない。
 すると、ロイドはいつもの困ったような顔で私を見る。

(やめてよ・・・)

 今はその顔を見たくはなかった。
 私は小さく息を意識的に吐く。

「私は大丈夫よ、ロイド。エリス様、お身体を大事にしてくださいね」

 私がエリスに様付けするのを不思議がるロイド。私は一礼して、部屋を出ていった。

「キーーっ、なんなの、今の見たっ!? エリス「様」っだって来たでしょっ!!?」

 扉の向こう側から、エリスの声が聞こえた。

(あなたがそうしろって言ったんじゃない・・・)

 怒りは無かった。
 私は扉を見返したけれど、これ以上この場所にいても嫌な気持ちになるだけだと思って、その場から離れていった。
 外に出ると、先ほどまで晴れていた天気が、今は曇り空になっていた。
 

 それから数日後、ロイドから手紙が届いた。
 私はアンからその手紙を貰って、自分の部屋で封を開けて、読んでみた。 

『親愛なるニーナ。結婚式なんだが、延期をさせて欲しい』

「ふーーーーっ」

 私は机に顔を伏せた。
 一人でいたとはいえ、少しはしたないとは思いつつも、身体が重くてそれどころじゃなかった。
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