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 新しい使用人が増えて、一気に忙しくなった。それはもう、王家で一緒の他人たちが元気でいるかとか、とっても嫌なことも忘れるくらいにーーー。

 王家で新しい使用人を雇う時は、誰かが引退したり、亡くなったりした時に補充と言う形で入ることが多い。だから、1人の新人さんに教育係がつくし、他のメイドも手厚くフォローする。私も教育係をしたこともあったけれど、流石に4人の個性豊かな新人メイドを教育するのは予想より大変だった。

「ふぅ」

 時々、王家の時はあまり出なかったため息もでた。でも、みんな頑張ってくれるからやりがいがあった。

 1番一生懸命に頑張っているのは、チェルシー。学習意欲があって言ったことを1つ1つ吸収している。ただ、お皿や花瓶などを割ってしまうようなミスや、物忘れもあって、

「メリッサさま・・・ほんとーーーにっ、すいません!!」

 とよく謝りにくる。従者の長としてキリル様の貴重な財産を失うことを避けたい私はなるべくチェルシーに寄り添って、仕事のやり方を一つずつ小分けにして教える。

「うわぁ、流石メリッサさまっ。凄いです、凄いです!」

 チェルシーは目を輝かせて褒めてくれるのは・・・・・・

(悪くないわね)

 私の癒しでもある。

 1番私が求め、キリル様のメイドとして相応しい仕事をしてくれるのは、スノウだ。ミリ単位の仕事も完璧にこなす。

「これって意味あります?」

「えーっと、これはね・・・」

「あっ、言い方がすいません。文句を言っているわけではないのですが・・・真剣になるとチェルシーから言い方が怖いって怒られるんです。続きを」

「あっ、はい・・・」

 本人はそう言うけれど、怖い。
 年下だけど、怖すぎる。
 時々敬語を忘れて上からなのが怖い。

(いや、別に偉そうにしたいとかじゃないの、ただただ、怖いの!)

「メイド長・・・メイド長!」

「あっ、はいっ!」

 執事でありながらも、メイドのみんなからはメイド長と呼ばれるようになったのだけれど、まだ実感が湧かない。

「これで、いいんですか?」

 キリル様の着られる服の襟のラインが左右で僅かにズレていた。チェルシーが隣でアイロンしているのを確認してOKを出したものだ。

「あっ、良くないです。すいません直します」

「あっ、いえ・・・私ったらまた高圧的な・・・」

「ううん・・・これは助かる指摘。ああ、いつも助かっているわ、ありがとうね」

「はい・・・」

 キリル様にも誰にも言えないけれど、やっぱり、まだ私がメイド長、さらには執事なんて自分に相応しいと思えないのだ。

(逆に私は後退しているよね・・・)

 王家でメイドの期待の新星と言われ、次期メイド長と名高くなった頃には無かったミスも忙し過ぎるせいか増えてきた。
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