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17.5 キリル視点
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ボクは馬車から空を見た。
ボクはバレバレな嘘をついた。
幼稚な嘘。
その場しのぎの嘘―――
メリッサは魅力的な女性だ。
彼女の笑顔は心がポカポカ温かい気持ちになるし、色んな話をしても、色んな知識や教養があり、知らないことでも興味を持ってくれるからに話が尽きない。時には考えごとを整理したい時に彼女に話すけれど、察しの良い彼女は我を出さず話を丁寧に聞いてくれる。
彼女は一流のメイドであり、仕事中は我を出さない。
けれど、彼女自身は少し天然で、時々垣間見えるその彼女らしさが愛おしい。
もっと、彼女の傍に居たい。
もっと、彼女と話をしたい。
もっと、彼女を知りたい。
彼女にはは幸せになって欲しい。
そして、ボクが幸せにしたい―――
ボクは彼女がメイド長を目指しているのも分かっていた。
彼女の意志を尊重し、今のままの関係でも十分幸せだったけれど、溢れる想いは日に日に強くなり、彼女を見ていると、胸が騒いだ。
でも、それはボクだけじゃなかった。
血は争えないようだ。
アーノルド兄さんも彼女の魅力に魅かれているのをボクは気づいたし、兄さんもボクの想いに気づいた。
色んな話をメリッサとしたけれど、彼女の好みの男性はボクは知らない。
だから、もしかしたらアーノルド兄さんを選んでしまうんじゃないかと思うと、ボクは怖くてたまらなくて、メリッサを失いたくないと思った。だから、ボクは彼女へ想いを伝えることを決めた。
入念に、準備し、彼女を呼び、そして、想いを伝えた。
答えはノーだった。
地獄に落ちたと思った。
今まで、善く生きるように心がけてきたけれど、初めて世界を、神を呪ってしまいたい、とさえ思った。
けれど、メリッサがそこにいた。
醜い悪魔にならずにいられるのもメリッサのおかげだった。
彼女はやはりボクの天使だ。
彼女は申し訳なさそうな顔をしていたけれど、一緒に紅茶を飲んでくれた。
悲しい事実を紅茶と飲み込みこんでしまえと思って口にした紅茶は、彼女に紅茶の淹れ方を教わった優しい思い出で混ざり合り、どちらも大切な思い出へと変わっていった。
『おい、キリル・・・聞けっ』
それから、アーノルド兄さんからメリッサとの婚約の話を聞いた。
とても、優越感を含め嬉しそうな兄さん。
『ボクも、メリッサのことが好きだった』
そう伝えると、なおさら優越感に浸る兄さん。
けれど、恋愛は勝ち負けじゃない。
『でも、メリッサが選んだのは兄さんだ。お願いだ・・・・・・兄さん。ボクの分まで彼女を幸せにして欲しい』
そう伝えると、兄さんはびっくりした顔をした。そして、ボクの顔をじーっと見て、
『任せろ』
とはっきりカッコよく言ってくれた。
それなのに―――
ボクはバレバレな嘘をついた。
幼稚な嘘。
その場しのぎの嘘―――
メリッサは魅力的な女性だ。
彼女の笑顔は心がポカポカ温かい気持ちになるし、色んな話をしても、色んな知識や教養があり、知らないことでも興味を持ってくれるからに話が尽きない。時には考えごとを整理したい時に彼女に話すけれど、察しの良い彼女は我を出さず話を丁寧に聞いてくれる。
彼女は一流のメイドであり、仕事中は我を出さない。
けれど、彼女自身は少し天然で、時々垣間見えるその彼女らしさが愛おしい。
もっと、彼女の傍に居たい。
もっと、彼女と話をしたい。
もっと、彼女を知りたい。
彼女にはは幸せになって欲しい。
そして、ボクが幸せにしたい―――
ボクは彼女がメイド長を目指しているのも分かっていた。
彼女の意志を尊重し、今のままの関係でも十分幸せだったけれど、溢れる想いは日に日に強くなり、彼女を見ていると、胸が騒いだ。
でも、それはボクだけじゃなかった。
血は争えないようだ。
アーノルド兄さんも彼女の魅力に魅かれているのをボクは気づいたし、兄さんもボクの想いに気づいた。
色んな話をメリッサとしたけれど、彼女の好みの男性はボクは知らない。
だから、もしかしたらアーノルド兄さんを選んでしまうんじゃないかと思うと、ボクは怖くてたまらなくて、メリッサを失いたくないと思った。だから、ボクは彼女へ想いを伝えることを決めた。
入念に、準備し、彼女を呼び、そして、想いを伝えた。
答えはノーだった。
地獄に落ちたと思った。
今まで、善く生きるように心がけてきたけれど、初めて世界を、神を呪ってしまいたい、とさえ思った。
けれど、メリッサがそこにいた。
醜い悪魔にならずにいられるのもメリッサのおかげだった。
彼女はやはりボクの天使だ。
彼女は申し訳なさそうな顔をしていたけれど、一緒に紅茶を飲んでくれた。
悲しい事実を紅茶と飲み込みこんでしまえと思って口にした紅茶は、彼女に紅茶の淹れ方を教わった優しい思い出で混ざり合り、どちらも大切な思い出へと変わっていった。
『おい、キリル・・・聞けっ』
それから、アーノルド兄さんからメリッサとの婚約の話を聞いた。
とても、優越感を含め嬉しそうな兄さん。
『ボクも、メリッサのことが好きだった』
そう伝えると、なおさら優越感に浸る兄さん。
けれど、恋愛は勝ち負けじゃない。
『でも、メリッサが選んだのは兄さんだ。お願いだ・・・・・・兄さん。ボクの分まで彼女を幸せにして欲しい』
そう伝えると、兄さんはびっくりした顔をした。そして、ボクの顔をじーっと見て、
『任せろ』
とはっきりカッコよく言ってくれた。
それなのに―――
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