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 メイドの仕事。
 それは、掃除、洗濯、料理等々の単純作業に思われるかもしれないが、王家のメイドは違う。
 イレギュラーこそレギュラー。
 些細なスケジュール変更なんて想定の範囲内だ。

―――だから、今日もそんな一日だと思っていた。

「えっ、お部屋にですか?」

 私が廊下の掃除をしていると、第二王子のキリル様にお声がけされて大事な話があるから部屋に来てほしいと言われた。

「うん、午後のティータイムに。ダメかな?」

「申し訳ございませんでした」

 私は深々と頭を下げて、キリル様にお詫びする。

「朝の会議の時間にお掃除させていただきましたが、抜かりがあったのは、メイド失格でございます。差し支えなければ、今から掃除をさせていただきます」

 そう言うと、キリル様はクスっとお笑いになって、

「キミの掃除はいつも完璧で感謝しているよ、メリッサ。それに、料理も洗濯も。キミの整えてくれたベッドはふかふかで最高さ」

「そう言っていただけると感謝痛み入ります」

 では、何のようだろう。

(あっ、なるほど)

「今日のお客様はどのような方ですか? その方にぴったりなお菓子と紅茶を用意させていただきます」

「えーっと・・・」

 困ったようなキリル様の顔。

「あぁ、安心してください、キリル様。もちろん。キリル様が好きなクッキーと紅茶も用意しますし、紅茶に入れる砂糖も用意しておきます」

 私は胸を叩いて、ニコッと笑うと、キリル様もニコッと笑った。
 17歳で私より1つ年上で大人っぽいキリル様の笑った時に少年っぽくなる顔は本当に可愛らしい。メイドとして、どんな仕事も手を抜くこともしないし、お仕えする王族や来客者様に隔たりなく接遇をするけれど、やっぱりこの笑顔を見ると、元気になるし、もっと頑張りたいと思いたくなるのは、内緒の話だ。

「ふふっ、そうだね。いつも、ありがとうメリッサ。そうだなぁ・・・・・・相手は、綺麗な黒髪を結っている女性で、パッチリした可愛らしい瞳、ピンクの薄い唇にそれと・・・・・・」

「あの、話を遮ってしまってすいません。見た目ではなく性格や好みを教えていただきたいと思います」

 私は脱線した話を元に戻そうとする。失礼なのは重々承知だし、他の王族の方であれば、話を遮るとむすっとする。けれど、私は王族の方に無駄な時間を過ごしてほしくないので、失礼を承知の上で話を遮る。私が疎まれようと、相手にとってベストなことを実行する、これが私のメイド道だ。

「性格は生真面目で時間厳守。いつも相手のことを想う思いやりのある子なんだけれど、ちょっとズレてて、そこが可愛らしい」

「可愛らしい・・・・・・というキリル様の主観はいら・・・・・・あっ、キリル様にとって大事な女性ということでよろしですか?」

「あぁ、とっても大事な人で、もっと大事にしたいその人と大事な話があるんだ」
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