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 私はバイデルを見つめる。
 すると、私の目を見て考えこむバイデル。

「3日だ」

 婚約者が無実を晴らすと言うのに期間を短縮する意味があるのだろうか。1週間というのは決して長い期間ではないと思うのだけれど。けれど、バイデルの冷めた目を見たら、感情に訴えても仕方ないと思った。

「わかりました、3日いただきます」

 こんな猜疑心のあるバイデルとの結婚生活などやってはいけないだろう。
 けれど、私にはこの家に用がある。そのためには、3日であっても必要だったので、深々と頭を下げた。

「よし、では行け」

「いいえ、お待ちください」

 私がバイデルの顔を見ると、「まだ用があるのか」といった顔した。

「誰がそのように言ったのか、御教えできますか」

 私がそう言うと、バイデルは急によそよそしくなる。

「それは・・・だな、その・・・・・・、守秘義務が・・・・・・そうだ、言うことを条件に誰から聞いたかは言わない約束をしているのだ」

「婚約者にも話せないのですね」

 結婚すれば、生涯のパートナー。
 もちろん、仕事上でどうしても相手に話せないこともあるでしょう。けれど・・・

「わかりました。自分でなんとかやってみますわ」

 私は笑顔を作って、その部屋を後にした。

「ふぅっ」

 扉を閉じて、自分だけになったら思わずため息をついてしまった。でも、いいか。もしかしたら、この3日間はため息をつく暇もないかもしれないのだから。

「まずは、エディに相談しないと・・・・・・」

 私が決心を固めて歩き出そうとすると、

「あらあら、お姉様じゃありませんの」

「クリスティーヌ・・・」

 ずいぶんとお値段が張りそうな宝石や、胸元が開いたドレスで優雅に妹のクリスティーヌが歩いて来た。

「お姉様、どうしたんですか? 浮かない顔をして、それに・・・・・・ふふっ」

 私はやらなければならないことがあるから、浮かない顔なんてしていない。だからクリスティーヌの言葉は矛盾を孕んでいる。つまりは、クリスティーヌはバイデルが私に何を話したか知っているのだろう。

「あらあら、婚約者にお会いするにはちょっと・・・・・・みすぼらしいお姿ではありませんか? これでは、百年の恋も一瞬で冷めてしまいますわよ? ほほほほほっ」

 まるで、扉の向こうのバイデルにも聞こえるようになのか、大きな声で私に話してくるクリスティーヌ。

「私があなたにあげた服や、おばあ様からもらったブローチはどうしたの?」

 私がいい服を着ていると、大体クリスティーヌが欲しがる。特にクリスティーヌよりもいい服ならなおさらだ。帽子も傘も服も靴もアクセサリーもほとんど全てクリスティーヌにせがまれてあげている。

「あーーーっ、どうしたかしらねぇ? クローゼットの隅にあるかも」

 悪びれも無くニコっと笑うクリスティーヌ。
 純粋悪が人の形をしていたら、それは妹のクリスティーヌなのかもしれない。
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