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竜司と子猫の長い一日
僕が竜司さんにいかがわしいお店に連れて行かれた件
しおりを挟む二人で朝食を食べた。
竜司さんはすごく喜んでくれて、美味しいって何回も言ってくれて、僕は嬉しくなって頬がぴくぴくした。
食べ終わって、食洗機に食器を入れて、竜司さんに促されてお風呂に入った。昨日の夜は空っぽだったのに、浴槽にはお湯が張られてて、モワモワの湯けむりが気持ちよかった。
お風呂でも一度された。
お風呂だから、って、たっぷり中出しされて、熱さにくらくらしてしまった。
でも竜司さんのリュウジさんは全然萎えなくて、口でもシた。……んで、口にもいっぱい出されたわけだけど、竜司さんってどんだけ回復が早いのか……。僕なんてもう全然出ないのに……。
「竜司さん、ずるい」
「ん?」
二人で湯船に浸かる。僕は、竜司さんの脚の上だ。
「……体力もあるし、いっぱいでるし……。手、大きいし、背も高いし……」
僕が脚の上に座っても、頭の先が顎に触るくらいの高さしかない。ほんと、羨ましい。
僕の腰に回ってた竜司さんの手を取って、ニギニギと触る。ついでに手のひらをくっつけて大きさを比べてみたけれど、すごいね。完全に大人と子供の手だ。
体の厚みだってぜんぜん違うし……。
「のぞみ…」
「なに?」
「可愛すぎる、いや、ほんと勘弁……」
握ってた手を外されて、後ろからぎゅぎゅっと抱きしめられた。なんでだ。
よくよく考えれば、朝食前からされて、お風呂でもされて、僕に体力なんて残るはずがなかった。
お風呂上がりは竜司さんが全部してくれた。髪をよく乾かしてくれて、体は丁寧に拭いてくれて。
いつの間にやら僕が昨日着てた服は洗われていて乾いてた。ズボン…、穿かされたけど、下着はやっぱりなくて、……違和感が酷くて泣きそうになった。
シャツも、着せられた。ボタンも、一個一個、全部竜司さんが止めてくれた。
竜司さんは自分の準備はとてもあっさりとしていく。
脱衣所の棚の中から下着を出すと、それを一枚穿いただけの格好で、ほぼ支度の終わった僕をひょいっと抱き上げた。
「なんでっ」
「歩けないだろ」
「もう歩けるしっ」
「駄目」
竜司さんは楽しそうに笑って、僕を運んだ。
……そういえば、僕、笑ってる竜司さんしか見たことない。
寝室に入ると僕はベッドに降ろされた。
竜司さんはカーテンを開けてからクローゼットを開いた。
「……これだな。のぞみ」
「なに?」
「これ着て」
って、背中にかけられたのは、大きな、竜司さんサイズと思われるグレーのカーディガン。
僕は自分の上着あるのに…って思いつつ、袖を通した。
指先、うん、出ない。すぐ肩が落ちる。
「大きすぎるけど」
「それでいいんだよ」
なんでさ……と思ったけど、袖から竜司さんの匂いがして、思わず顔にあててた。
……いいな、これ。竜司さんの匂いがいっぱいする。
「…えへ」
竜司さんの、匂い好き。
竜司さんは何も言わず、僕の頭を撫でた。
支度が終わって竜司さんの家を出たとき、もう十三時を過ぎてた。
竜司さんの私服もシュッとしてて格好いい。黒と白なのに。モノトーンだからいいのかな。
執事みたいな人に見送られて、マンションを出た。
竜司さんは家を出てからずっと僕と手を繋いでる。
「行きたいところある?」
「え……、えと……、とりあえず下着……」
って言ったら、盛大に笑われた。くそぅ。
「じゃあ、俺のおすすめの店に行こう」
車に乗り込んでも笑いっぱなしの竜司さん。しかも、左手は僕の右手を握ったまま。……車、苦手なのに、なんか平気。
片手でハンドルを握る竜司さん。
横顔もやっぱり格好いい。
竜司さんの横顔に見惚れてたら、車は目的地についてたらしい。
竜司さんは「のぞみ、お前な…」って、くっくっ、って笑う。なんだよ。僕がなんだって言うの。
駐車場はどこかの建物の地下っぽい。
そんなにたくさんの車は停まってない。
「あー……、可愛すぎるなお前」
車を降りてもまだ笑う。
ほんと、何がなんだかわからないけれど、車を降りてすぐ、竜司さんの方に歩いてすすんで、その大きな手をぎゅっと握った。
そしたら、竜司さんは少し変な、驚いたような顔をしてから、すぐに破顔した。……竜司さん、表情がころころして忙しそうだ。
僕の手を握り返して、竜司さんが「こっちだ」って歩き出した。
向かった先はエレベーター。
地上に出るのか、この建物の上に行くのかはわからなかったけれど、特に不安は感じない。竜司さんが大人な人だろうか。
エレベーターのなかでも手は繋いだまま。でも少し変わった。指と指を絡めるような繋ぎ方になった。
五階って表示になってエレベーターを降りる。そしたら、飾り気のない黒ガラスのドアが一つだけある廊下に出た。
なんだここ。
竜司さんのおすすめの店、て。
竜司さんは躊躇いなくその黒ガラスのドアを開けた。
「いらっしゃい」
と、中からは声。
「久しぶり」
「あれ、獅戸サン。久しぶりっすね。店長呼びます?」
「ああ、いいよ。大丈夫」
……なんか、会話が行きつけの店でするような感じ。
レジなのか?なところにいたのは、ピアス何個あります?って思わず数えそうになるくらい、たくさんのピアスを付けた男の人だった。その人は僕と目が合うと、ニカっと笑う。
「獅戸サン、駄目っすよ。こんなとこに子供連れてきちゃ」
「僕っ」
「のぞみはもう成人してるから問題ない」
「へ……成人してるっすか?まさかぁ……」
僕をジロジロ見てくる目。なんかやだ。
「奥に入るからな」
「あ、はいっす」
でもピアスの人は、それ以上何も言わなかった。
竜司さんは手繋ぎから、僕の腰を抱く方に手をシフトさせた。……いいの?お店でこんなにくっついて。
竜司さんがすることならいいか……って、促されるままに奥のドアをくぐった。
そこは陳列棚とかマネキンとかが置かれている場所だったけど――――
「竜司さんっ」
「ん?こういうとこ来るの初めてか」
「き、来たことない…っ」
……陳列棚には、所謂オトナの玩具と呼ばれる道具がたくさん並んでた。
僕の部屋にもあるようなやつから用途がよくわからないものまで。本当に、そればっかり。
「のぞみ用のローションと…、洗浄道具だろ、ディルドも必要だし、ブジーも使ってみる?試着もできるからサイズは確認できるし問題ないだろう。ああ、ほら。とりあえずこの紐のやつどうだ?可愛いだろ」
広くはなく、かと言って狭すぎるわけでもない店内を、竜司さんに連れられてぐるぐる回り、足を止めた竜司さんが、マネキンがつけてたレースたっぷりのすけすけ紐のやつを指さして言った。
「のぞみの太腿も白いからな。ガーターリングはとりあえず黒だな」
……格好いい、できる男だと思ってた竜司さん。
でもやっぱり変態さんだった……。
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