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本編

友兄の家のお引越し作業

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「友兄、こっちの荷物ってどこにしまえばいい?」
「ああ、それはそこの白い箱に」

 夏休み初日の土曜日。
 友兄は木曜日の宣言通り、あっさりとマンションの解約をしてしまった。
 それから荷造りの手伝いをしているわけだけど、不思議に思えるほど荷物が少なく感じる。
 実家では母さんが荷造りの最中だろう。
 九月の異動辞令を待たずに北海道へお引越しだ。家は会社の方で押さえてくれるらしい。

「大きい家具とかどうするの?」
「実はほとんど備え付けのものばかりなんだ」
「え」
「自分のものと言えば、テレビとソファとベッドくらいかな。テレビとソファは父さんたちがむこうに持って行くって言っていたから、ここから配送の手配をしてしまえばいいし」
「ベッドは?」
「今父さんたちが使ってる部屋にいれるつもり」

 ああ、そっか。
 父さんたちもベッドは持って行くって言ってたし、俺たちが使っていた部屋より広いから少し大きい友兄のベッドを入れるならあの部屋が丁度いいんだ。

「理玖」

 友兄に呼ばれて手招きされて、なんだろう…と思いつつ傍に寄った。

「それとも、もう少し大きなの買おうか?」
「なんで?」

 埃っぽいのも気にせず友兄が俺の腰を抱いてきた。
 ベッドを買うとか買わないとか…どうして俺に聞く必要があるんだろう…とか、色々考えてみたけれどこれと言った答えは見つからない。
 友兄の腕の中で真剣に考え込んでしまった。友兄はそんな俺を見てくすくす笑ってる。
 それから、啄ばむような触れるだけのキスを何度も唇に降らせてから、耳元に唇を寄せてきた。

「二人で眠るには広い方がいいよね?」

 ……って、低い声で言われたけれど、二人?二人って……、あ、そうか、二人、かっ

「――――っ!!」

 意味を理解するまで遅すぎやしないか、俺。

「わかった?」

 相変わらずくすくす笑ったまま、友兄はぺろりと耳朶を舐めるもんだから、突然背中にびくびくする震えが走って、体を友兄に押し付けるような格好になってしまった。

「わ……わかった、から、やだ、そこ……っ」

 友兄は悪戯をやめる気がないらしく、腰を抱いていた手が服の下に入り込んできてただでさえびくついてる背筋をなでてくるもんだから、余計に体が震えてしまう。

「や……やだ……っ」
「理玖は大きな方がいい?それとも今のままでいい?」
「そんなのどっちでも……」

 両腕を伸ばして逃れようとしても、全然ぴくりともしない。
 友兄は俺を離すつもりはないらしくて、肌蹴た背中から手が滑り落ちて、今度はズボンの中に忍んで来るもんだから……もう色々限界で。

「あ…っ」
「ね、理玖。どっちがいい?」
「だから…どっちでも……っ」
「答えて?」

 意地悪く耳元で言いながら舌で弄ってくるものだから、友兄の体にしがみついてしまった。
 腰が少し浮いたすきに、今度はズボンを引き下げられて、空気が直に触れて恥ずかしさが倍増する。

「……っ、今の、ままで、いいっ、から、だから…っ」
「今のベッドがいいのはどうして?」

 答えたのに、質問を重ねてくるのか…!
 直接的な刺激はまだないのに、体がもうやばいことになってきてること、わかってるくせに。

「ねぇ…理玖?」
「っ、友兄が……、近く、なるから…っ」

 荒くなった息に途切れてしまう言葉。
 友兄はものすごく満足そうに笑うと、俺を抱きあげて開けっぱなしの寝室に入って話題になっていたベッドの上に俺を下ろした。



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