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本編

友兄と二人だけのお休みだった

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「今日は部活休んだ方がいいよ」
「うん……」

 火曜日。
 友兄の家からの登校。
 車が楽。
 体が、やたらと、重くて。
 原因は………わかっているんだけど。
 何度もため息が出てくる。
 いい加減しゃんとしろ、俺っ




 連休の間、ずっと友兄にくっついていた。
 お茶を淹れる友兄の傍にくっついて、クッキーを作る友兄にくっついて、食事するときも友兄にくっついて。
 ずっと離れたくなかった。
 家の中どこでもキスをしたし、ベッドじゃないとこでも抱かれた。
 ……ほんと。
 俺たち二人だけのお休みだった。




「理玖」
「なに?」
「…やっぱり今日は休んだ方がよかったかな」
「部活?部活なら休むけど…」
「いや、そうじゃなくて」

 友兄は苦笑交じりに俺の脚に手を伸ばしてきた。

「っ」

 その手が強く軟く内股をなでてきた途端、背中がびくりと震えた。

「ひぅ…っ」

 簡単にあがってしまう声に、慌てて口元を押えた。
 体中が敏感になってる。そんなこと、わかってる。

「ほら…ね?」

 脚を触った手が、俺の頭をなでてからハンドルに戻った。

「友兄…意地悪だ…っ」
「そんなんじゃないけど…。ただ……、今日の理玖はどこか甘い香りがする。それが余計に理性を失わせる」
「匂いって……俺、何もつけてないけど」
「うん。むしろ、香水をつければよかったかもしれない。甘い香りは理玖自身の匂いだと思う」

 そう言われると妙に気になって、手とか袖とか匂いを嗅いでみたけど、そんな甘い匂いはしない。

「気のせいじゃないの?」
「そんなことないよ。隣に座っているだけで煽られるっていうのに」
「なんで?」

 よくわからない。
 友兄はまた苦笑した。

「またそうやって笑うっ」
「理玖が可愛いから」
「むぅ。可愛い可愛い連呼するなっ」

 口が尖ってしまったと思う。
 信号で車を止めると、友兄は俺の顔を見ながら何度も頭をなでてきた。

「そんな顔して…。車の中じゃなかったら、もう押し倒してるところだよ」

 目を細めて言われて、不覚にも心臓がドキリと鳴った。

「…理玖が今日いつもと違う理由はね、俺が抱いたからなんだけど」

 離れていく手に寂しさを感じる。
 それから、また、心臓の高鳴りが強くなる。

「流石にちょっと反省している。休みの間、ほぼベッドで過ごしていたようなものだし」

 あからさまな言い方に、顔が熱くなるのがわかって、俯いてしまった。
 どうしよう。心臓が、落ち着かない。

「心配しているんだけどね。こんな状態の理玖を一人にしたら、何が起きても不思議じゃない。女も、男でも、理玖に振り向かない人はいないと思うから」
「……そんなことないし……」

 言いすぎだし、心配しすぎじゃない…?




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