上 下
27 / 89
本編

友兄の全部は俺のものなんだからね!

しおりを挟む



 もうすぐ逢える、もうすぐ逢える……と思っていたら、校門のところになんだか数人の女子生徒が群がっている。

「……まさか」

 スピードをあげて近づくと、その女子生徒の中心にいるのが友兄だってわかった。

「…………ムカツク」

 わきに停めているらしい車に寄りかかっている友兄に、群がる女子生徒たち。
 群がってる方にもムカツクけど、笑顔を振りまいて話しをしているらしい友兄にもムカツク。

「――――友兄!!」

 十分近寄ってから、声を荒げてしまっていた。
 途端、なんだ?って顔で振り向く女子生徒たち。

「理玖、お帰り」

 …って満面笑顔を見せるから、群がっていた女子生徒たちの間から芸能人でも見たかのような黄色い悲鳴があがる。
 その気持ちはわからなくもないけど、俺だけの友兄だから凄くいや。

「自転車乗せるよ」
「うん」

 友兄はもう俺しか見ていない。
 そんなの、よくわかる。
 群れからは「矢坂くんの知り合いなの?」やら「どんな関係?」やら、小さなざわめきが聞こえてくるけど、一切無視。答える義理はないはずだ。
 友兄は俺の自転車を車に乗せて、荷物を後ろの座席に置くと、助手席のドアを開けてくれた。

「理玖、乗って」
「うん」

 そのまま車の中に落ち着くと、友兄はゆっくりとドアを閉める。
 集まる視線。
 でも、関係ない。友兄は、俺だけのものだから。誰にも、譲るつもりはないから。

「行こうか」

 運転席に乗り込んだ友兄は周囲を確認すると、また満面の笑顔で俺を見た。
 だから、俺も友兄に笑顔をむける。

「うん」

 車は緩やかに走り始めた。
 友兄の車、初めて乗った。

「あ、行くって、どこ?」
「家、だね」
「友兄の?」
「残念ながら、今日は実家」

 友兄がくすっと笑う。

「どうして?」
「…この間も母さんの夕飯食べなかったしね?…理玖も俺も不在がちじゃ、母さん寂しがるから」
「あー……そっか」

 妙に納得してしまった。
 確かに、父さんはともかく、母さんは寂しがるかもしれない。

「そういえば……女子たちに囲まれて、友兄でれっとしてた」
「してた?」
「してたっ」
「理玖のことを考えていたんだけどね?」

 視線を流されて不覚にも胸がドキリとなる。
 友兄はズルイ。そんな風に言われたら、もう文句が言えない。

「……ムカツイたんだからな」
「嫉妬してくれたんだね」

 くすくす笑う友兄。
 ずっとずっと、嬉しそうで楽しそう。

「っとにもー……」

 嫉妬して、何が悪いんだよっ。

「……友兄は俺のなのに」

 友兄が見るのは俺だけでいいし、笑いかけるのも俺だけでいいんだよ。……他の人に優しくとかしないでよ。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした

なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。 「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」 高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。 そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに… その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。 ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。 かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで… ハッピーエンドです。 R18の場面には※をつけます。

【完結】虐げられオメガ聖女なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました(異世界恋愛オメガバース)

美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

攻略対象5の俺が攻略対象1の婚約者になってました

白兪
BL
前世で妹がプレイしていた乙女ゲーム「君とユニバース」に転生してしまったアース。 攻略対象者ってことはイケメンだし将来も安泰じゃん!と喜ぶが、アースは人気最下位キャラ。あんまりパッとするところがないアースだが、気がついたら王太子の婚約者になっていた…。 なんとか友達に戻ろうとする主人公と離そうとしない激甘王太子の攻防はいかに!? ゆっくり書き進めていこうと思います。拙い文章ですが最後まで読んでいただけると嬉しいです。

嫌われ者の僕はひっそりと暮らしたい

りまり
BL
 僕のいる世界は男性でも妊娠することのできる世界で、僕の婚約者は公爵家の嫡男です。  この世界は魔法の使えるファンタジーのようなところでもちろん魔物もいれば妖精や精霊もいるんだ。  僕の婚約者はそれはそれは見目麗しい青年、それだけじゃなくすごく頭も良いし剣術に魔法になんでもそつなくこなせる凄い人でだからと言って平民を見下すことなくわからないところは教えてあげられる優しさを持っている。  本当に僕にはもったいない人なんだ。  どんなに努力しても成果が伴わない僕に呆れてしまったのか、最近は平民の中でも特に優秀な人と一緒にいる所を見るようになって、周りからもお似合いの夫婦だと言われるようになっていった。その一方で僕の評価はかなり厳しく彼が可哀そうだと言う声が聞こえてくるようにもなった。  彼から言われたわけでもないが、あの二人を見ていれば恋愛関係にあるのぐらいわかる。彼に迷惑をかけたくないので、卒業したら結婚する予定だったけど両親に今の状況を話て婚約を白紙にしてもらえるように頼んだ。  答えは聞かなくてもわかる婚約が解消され、僕は学校を卒業したら辺境伯にいる叔父の元に旅立つことになっている。  後少しだけあなたを……あなたの姿を目に焼き付けて辺境伯領に行きたい。

処理中です...