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本編
友兄の全部は俺のものなんだからね!
しおりを挟むもうすぐ逢える、もうすぐ逢える……と思っていたら、校門のところになんだか数人の女子生徒が群がっている。
「……まさか」
スピードをあげて近づくと、その女子生徒の中心にいるのが友兄だってわかった。
「…………ムカツク」
わきに停めているらしい車に寄りかかっている友兄に、群がる女子生徒たち。
群がってる方にもムカツクけど、笑顔を振りまいて話しをしているらしい友兄にもムカツク。
「――――友兄!!」
十分近寄ってから、声を荒げてしまっていた。
途端、なんだ?って顔で振り向く女子生徒たち。
「理玖、お帰り」
…って満面笑顔を見せるから、群がっていた女子生徒たちの間から芸能人でも見たかのような黄色い悲鳴があがる。
その気持ちはわからなくもないけど、俺だけの友兄だから凄くいや。
「自転車乗せるよ」
「うん」
友兄はもう俺しか見ていない。
そんなの、よくわかる。
群れからは「矢坂くんの知り合いなの?」やら「どんな関係?」やら、小さなざわめきが聞こえてくるけど、一切無視。答える義理はないはずだ。
友兄は俺の自転車を車に乗せて、荷物を後ろの座席に置くと、助手席のドアを開けてくれた。
「理玖、乗って」
「うん」
そのまま車の中に落ち着くと、友兄はゆっくりとドアを閉める。
集まる視線。
でも、関係ない。友兄は、俺だけのものだから。誰にも、譲るつもりはないから。
「行こうか」
運転席に乗り込んだ友兄は周囲を確認すると、また満面の笑顔で俺を見た。
だから、俺も友兄に笑顔をむける。
「うん」
車は緩やかに走り始めた。
友兄の車、初めて乗った。
「あ、行くって、どこ?」
「家、だね」
「友兄の?」
「残念ながら、今日は実家」
友兄がくすっと笑う。
「どうして?」
「…この間も母さんの夕飯食べなかったしね?…理玖も俺も不在がちじゃ、母さん寂しがるから」
「あー……そっか」
妙に納得してしまった。
確かに、父さんはともかく、母さんは寂しがるかもしれない。
「そういえば……女子たちに囲まれて、友兄でれっとしてた」
「してた?」
「してたっ」
「理玖のことを考えていたんだけどね?」
視線を流されて不覚にも胸がドキリとなる。
友兄はズルイ。そんな風に言われたら、もう文句が言えない。
「……ムカツイたんだからな」
「嫉妬してくれたんだね」
くすくす笑う友兄。
ずっとずっと、嬉しそうで楽しそう。
「っとにもー……」
嫉妬して、何が悪いんだよっ。
「……友兄は俺のなのに」
友兄が見るのは俺だけでいいし、笑いかけるのも俺だけでいいんだよ。……他の人に優しくとかしないでよ。
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